ブックキュレーター哲学読書室
労働のいまと〈戦闘美少女〉の現在
いまや当たり前のものとなった、ポピュラーカルチャーにおける戦う女性の表象。それは、私たちの生きる現代社会のいかなる側面を、そしていかなる願望を反映したものでしょうか。この疑問を探究するための五冊です。【選者:河野真太郎(こうの・しんたろう:1974-:一橋大学准教授)】
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戦闘美少女の精神分析
斎藤 環(著)
マンガやアニメにおける戦う美少女の存在を、精神分析の観点から説明した絶対的古典。美少女表象がいかにして(虚構の)日本的空間にリアリティをもたらすための欲望の結節点となっているかを、「ファリック・ガール」を鍵語に示した。欲望と表象とリアリティについて原理的に考えるためには、何度立ち返ってもよい本。
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紅一点論 アニメ・特撮・伝記のヒロイン像
斎藤 美奈子(著)
ポピュラーカルチャーが、戦隊ものと魔法少女ものに代表されるようなかたちで、いかにジェンダー化(男の子の世界と女の子の世界への切り分け)をされているかを、ユーモアあふれる筆致で論じた名著。論じられるジェンダー区分体制も終わりに近づいているかもしれないという意識が垣間見られて、そこが重要かもしれない。
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ディズニーやジブリ作品での戦う女性たちの表象は、現代における労働の質の変化の、そして労働者の変化の帰結である。本書はそれを、新自由主義/グローバリゼーションの現在をポストフェミニズム状況として定義することによって論じる。ポストフェミニズム状況とは、そこでの労働の変質とは何かについては次の二冊を参照。
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魂の労働 ネオリベラリズムの権力論
渋谷 望(著)
ポストフォーディズム的な現在における私たちの労働と生を、思想の水準で論じた名著。日本語では(それ以外でも)これを超えるものは出てきていない。新自由主義的な体制下では、私たちの生そのものが労働として収奪される。そのような体制から生じてくるのが、感情労働やケア労働の重要性である。
ブックキュレーター
哲学読書室知の更新へと向かう終わりなき対話のための、人文書編集者と若手研究者の連携による開放アカウント。コーディネーターは小林浩(月曜社取締役)が務めます。アイコンはエティエンヌ・ルイ・ブレ(1728-1799)による有名な「ニュートン記念堂」より。
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