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  5. 一筋縄ではいかない、だからこそ、代わりのきかない関係、夫婦の肖像。

港の人 編集者 井上有紀ブックキュレーター港の人 編集者 井上有紀

一筋縄ではいかない、だからこそ、代わりのきかない関係、夫婦の肖像。

夫婦は難しい。恋愛も難しいけれど、結婚はさらに難しい。自分をさらして生きる芸術家、感情を大切に生きる芸術家どうしであれば、なおさらのことかもしれません。対立とか共犯といった単純な言葉では表せない複雑な男女の関係からあふれ出てくる、激しすぎる感情の渦。でも、全部まるごとひっくるめて、やはりそれは「愛」なのかもしれません。

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  • 荒木陽子全愛情集

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    荒木陽子全愛情集

    荒木 陽子(著)

    天才写真家・アラーキーは「私を写真家にしてくれたのはヨーコだった」と言います。42歳で亡くなった奥さんの陽子さんは、荒木作品の被写体であり、そしてエッセイストでもありました。写真や人間の本質をビシッと捉え、それを自分だけの言葉で表現する陽子さんは、やはり特別な女性だったのだと思います。

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    『死の棘』は、夫の浮気を知って妻が錯乱し、夫婦が極限まで追いつめられていく様子を夫視点で綴った私小説。本当は何が起こったのか、妻・ミホさんが遺した膨大な日記や手紙をひもといていく過程がスリリング。作家とその妻、ではなく、作家どうしとして島尾夫妻を捉え直す、重厚なドキュメンタリーです。

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    ギャンブル漬け、浮気、3億もの借金・・・メチャクチャな生活をしていた末井昭さんが、写真家の神藏美子さんと出会い、夫婦としてふたりで歩んでいく過程を、ものすごく正直な文章で書いています。高橋源一郎さん、植本一子さんとの対談も収録されていて、きれいごとでない夫婦の機微が語られていて、心にしみます。

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    「家に虎が2匹いるようなもの」と周囲に心配されながら始まった48歳の小説家と49歳の詩人の結婚。夫の獰猛な虎ぶりは生半可ではありません。世間との軋轢は絶えず、さらに精神を病んで、年がら年中が修羅場。でも思い出を語る妻の文章は、澄んでいるのです。それは、ふたりの間に「文学」があったからかもしれません。

  • K

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    三木 卓(著)

    詩、小説、児童文学、翻訳などで活躍する三木さんが、妻を癌で亡くした後に書かれたものです。妻は詩人、50年におよぶ結婚生活の半分以上は別居していました。いわゆる愛妻ものでもなく、夫婦バトルでもなく、複雑なことを複雑なままに書き、そして奥の方に何かが光っている。ひとつの文学の境地が、ここにあります。

港の人 編集者 井上有紀

ブックキュレーター

港の人 編集者 井上有紀

鎌倉の由比ガ浜にある出版社「港の人」勤務の編集者。手がけた本は、『目であるく、かたちをきく、さわってみる。』(マーシャ・ブラウン)、『きのこ文学名作選』(飯沢耕太郎編)、『胞子文学名作選』(田中美穂編)、『世界 ポエマ・ナイヴネ』(チェスワフ・ミウォシュ)、『90度のまなざし』(合田佐和子)など。海を見ながら自転車で通勤する時間が、毎日のいちばんの贅沢です。本棚の隅っこにあるような本もふくめて、一冊一冊大切に紹介します。ホームページhttps://www.minatonohito.jp

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