ブックキュレーター作家 梨木香歩
森に生まれ育った子どもたち
森と一口で言っても、世界には様々な森があります。ヨーロッパの森が、アジアや南半球の国々のそれと違うのは容易に想像がつきますが、その中でも、北海やバルト海に近い国の森林と地中海に近い国の山野では気候も植生も違う。何よりもまず、気配が違う。子どもの視点で紡ぎ出される言葉は、森の持つ気配の本質をまっすぐ捉えます。
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古森のひみつ
ディーノ・ブッツァーティ(作) , 川端 則子(訳)
ブッツァーティの圧倒的なストーリーテリングで、北イタリアの森の「ひみつ」が語られていく。一筋縄ではいかない登場人物たち(すべて魅力的!)が、骨太で繊細で意地悪で寛容、複雑な森そのものを表している。著者は『シチリアを征服したクマ王国の物語』の作者でもある。それぞれ時代を超越した「凄い」物語。
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やかまし村はいつもにぎやか
アストリッド・リンドグレーン(作) , 大塚 勇三(訳)
スウェーデンの小さな村に住む子どもたちの話「やかまし村シリーズ」では最も好きな一冊。森は深いけれども明るく、透き通る空気感で溢れている。ザリガニ祭りの夜、子どもたちは家族で森の奥深くの湖のそばでキャンプを張る。その夜更けの荘厳さと、森の静寂の描写には、宗教性の高みまでも感じさせる。北欧の森が体感できる一冊。
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なかないで、毒きのこちゃん 森のむすめカテジナのはなし
デイジー・ムラースコヴァー(作) , 関沢 明子(訳)
少女カテジナは、「生まれながらの森のあるじ」、猟師の娘だ。トカゲやクマ、ウサギやヒキガエルたち、森の生きものすべてと通じ合い、それぞれのコンテキストで付き合っている。その当意即妙の言葉運びの素晴らしさ!森の息吹はそのままカテジナの呼吸であり、彼らは一体化している。魅力溢れるチェコの森の親しさと奥深さ。
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ビキン川のほとりで 沿海州ウデヘ人の少年時代 増補改訳
アレクサンドル・カンチュガ(著) , 津曲 敏郎(訳)
ビキン川はアムール川の数ある支流の一つだ。沿海州の広葉樹と針葉樹が混生する豊かなウスリー・タイガで、『デルス・ウザーラ』にも登場するウデヘ人として生まれた著者は、父や兄弟たちと猟をしながら自然との付き合い方を学ぶ。時代は第二次世界大戦前後。父親も徴兵される。激動の時代にあっても森の生活は揺らがない。
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岸辺のヤービ
梨木 香歩(著) , 小沢 さかえ(画)
この物語の森や沼地は、現実の地名に依拠していない。国を超えた、普遍性に通じる小道のように自然を描きたかった。それで、舞台は北海道の沼沢地のようにも、信州の高原のようにも、英国の湖沼地帯のようにもなった。そこに生きる自然の精のようなヤービたちの日常が、個々を包括した、地球全体の生命力への祈りとなるように。
ブックキュレーター
作家 梨木香歩1959年生まれ。作家。小説に『西の魔女が死んだ 梨木香歩作品集』『丹生都比売 梨木香歩作品集』『裏庭』『家守奇譚』『沼地のある森を抜けて』『冬虫夏草』『村田エフェンディ滞土録』『雪と珊瑚と』『海うそ』『僕は、そして僕たちはどう生きるか』『f植物園の巣穴』『椿宿の辺りに』、エッセイに『春になったら莓を摘みに』『渡りの足跡』『鳥と雲と薬草袋』『水辺にて』『やがて満ちてくる光の』などがある。
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