ブックキュレーター『中央公論』編集長 齋藤孝光
混迷する世界を生き抜くための5冊
戦後の国際秩序が流動化する中で、国家も、企業も、社会も、個人も、羅針盤を見失いかけているのではないか。そんなときに頼りになるのは、情報の洪水に追加の一滴をもたらす本ではなく、ものの見方に補助線を与えてくれるような本だと考える。
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虫づくし
別役 実(著)
「フェイクニュース」という言葉の欠片もなかった40年前に、その本質を体現した本である。読者はそのレトリックに取り込まれ、現実と虚構の合間を心地よく彷徨うことになる。この後、「鳥」「道具」など一連の「づくし」シリーズが刊行された。フェイクのロジック自体に抗しがたい魅力があることが実感できる。
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通貨烈烈
船橋 洋一(著訳)
世界の主要国が足並みを揃えて異例の金融緩和や低金利政策を続けてきたが、その原点は1985年のプラザ合意にある。各国の通貨マフィアたちが、国際協調と国益との狭間でぎりぎりの交渉を行った。リーマンショック以降、通貨政策も先進国の協調だけでは持たなくなっている。ではどうするべきか。本書を軸に考えたい。
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複雑な世の中を、快刀乱麻を断つが如く理解するためのメソッドとして、川喜田二郎氏が開発したKJ法を本人が解説した本。名著であり、ロングセラーであり、現代にも通用する実用性を持つ。まずは自分を取り巻く環境の分析から適用してみて欲しい。通勤・通学の風景が変わってくること請け合いである。
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死刑になるために無差別殺人を起こした犯人から、一言でも改悛の言葉を聴きたいと、粘り強く面会を続けた新聞記者のルポ。読売新聞編だが、実質的には一人の記者が書き上げている。家族が壊れ、個人が壊れ、最後に社会が壊れる。事実の重みに打ちひしがれそうになるが、これが日本の一断面であることも確かなのだ。
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中公DD 憲法の将来
保岡興治 , 斉藤鉄夫 , 枝野幸男 , 小沢鋭仁 , 田原総一朗 , 細野豪志 , ケネス盛マッケルウェイン , 笠井亮
日本国憲法の最大の特徴を「短いこと」と喝破し、その構造的危険性を指摘したケネス・盛・マッケルウェイン氏の論文など、最新の憲法議論をまとめた。『中央公論』2017年5月号の特集を電子化したものだ。枝野幸男氏の改憲論や細野豪志氏の憲法改正私案も収録している。現実的な改憲議論を理解するための一冊。
ブックキュレーター
『中央公論』編集長 齋藤孝光1986年早稲田大学政治経済学部政治学科卒業、読売新聞社東京本社入社。経済部員、ロンドン特派員、広告局部長、経済部長、編集局次長を経て2016年4月中央公論新社出向。同年6月より『中央公論』編集長。今年10月より、教養講座「大手町アカデミア」学長。「大手町アカデミア」公式ホームページ:http://bit.ly/2yHjiDV 公式ツイッター:http://bit.ly/2yPpN75 公式FB:http://bit.ly/2yLg0gp
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