ブックキュレーター哲学読書室
反時代的〈人文学〉のススメ
「21世紀」はテロと分断の時代をひたすらこじらせていくのか。それに対抗する知的資源はあえて反時代的な人文学のなかに見つけ出すしかないだろう。分断と越境のはざまに置かれた知識人が紡ぎ出した稀有な批評的書物を紹介する。【選者:早尾貴紀(はやお・たかのり:1973-:社会思想史)、洪貴義(ほん・きうい:1965-:政治学・思想史)】
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ポスト・オリエンタリズム テロの時代における知と権力
ハミッド・ダバシ(著) , 早尾 貴紀(訳) , 本橋 哲也(訳) , 洪 貴義(訳) , 本山 謙二(訳)
オリエンタリズムは、西洋が東洋を表象し支配するための学問かつイデオロギーであったが、それは21世紀「対テロ戦争」下のアメリカ合衆国の中東認識にまで浸透している。ダバシは、サイードとスピヴァクを基軸としながら、従来の反植民地主義と現代のポスト植民地主義の思想運動の限界を指摘しつつ、「その後」を見据えた人文学を示唆する。(早尾・洪)
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人文学と批評の使命 デモクラシーのために
エドワード・W.サイード(著) , 村山 敏勝(訳) , 三宅 敦子(訳)
パレスチナ独立を目指す闘士サイードはこの遺著では一転して人文学の残滓を蘇生しようとしている。しかし人文学の実践は実はデビュー作の『始まりの現象』以来一貫していた。文献学へ回帰することも厭わずサイードは学識と共感を結合させて読むことを求める。読者は間違いなくヴィーコとアウエルバッハの読解へと促されるだろう。(洪)
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〈新訳・評注〉歴史の概念について
ヴァルター・ベンヤミン(原著) , 鹿島 徹(訳・評注)
歴史を不可逆的な一方向への直線でなく、可逆的で組み換え可能な星座の配列として捉えること。それは過去からの断絶と未来への飛躍を含んだユートピアとして、わたしたちに託されているかすかな革命的チャンスである。終末と新しい始まりとしての復活を予感しながら、ベンヤミンの歴史像はわたしたちの歴史的現在を照射し続けている。(洪)
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パレスチナの民族浄化 イスラエル建国の暴力
イラン・パペ(著) , 田浪 亜央江(訳) , 早尾 貴紀(訳)
これは1948年に「ユダヤ人国家」イスラエルが建国された際に行使された暴力の徹底した実証史研究である。この堅実な歴史書はしかし、イスラエル国家の現在の正統性を根底的に突き崩しているからこそ、最も論争的かつ実践的な書物となる。さらに民族浄化という比較可能な概念を導入したことで、現代世界史へも扉を開いている。(早尾)
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思想体験の交錯 日本・韓国・在日1945年以後
尹 健次(著)
二次大戦末1944年の日本に生まれた在日朝鮮人二世の著者が、異郷たる日本と分断国家の一方となった韓国を中心に、その戦後思想の歩みを総括する大著。終戦、冷戦、脱冷戦といった変転する局面で「在日」はいかに分断世界を生き抜いてきたのか。数多くの「詩」を引用しながら、詩に表現された時代と思想を繊細かつ大胆に見つめる。(早尾)
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哲学読書室知の更新へと向かう終わりなき対話のための、人文書編集者と若手研究者の連携による開放アカウント。コーディネーターは小林浩(月曜社取締役)が務めます。アイコンはエティエンヌ・ルイ・ブレ(1728-1799)による有名な「ニュートン記念堂」より。
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