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目の前の現実が違って見えてくる!不思議に輝くカポーティの小説
ドロドロした関係や醜い企みも、鼻持ちならない憎たらしい人物も、この人の手にかかれば颯爽として、キラキラと美しく見えてしまいます。かと思えば素敵なエピソードが不気味で不吉なものに通じていたり、トルーマン・カポーティはなかなか手ごわい小説家といえるでしょう。彼の小説を読んでいると、現実が歪んでくるような不思議な感覚に襲われるはずです。
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『朝食用のシリアルを思わせるような健康的な雰囲気があり、石鹸やレモンの清潔さがあった』。表題作に登場するホリー・ゴライトリーのヒロイン像は、そう簡単に色あせることはありません。突出しているというよりつねに予想を覆し、純粋で無垢な人のようでありながらいかがわしいという厄介な魅力に、誰もが惹きつけられるでしょう。
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草の竪琴
カポーティ(著) , 大沢 薫(訳)
親と死に別れた少年と、樹の上で暮らす素敵な仲間たち。世間一般とは折り合いをつけられなくても、樹の上ではみんな心を解き放ち、ハラハラドキドキしつつも自然と慈しみ合って、実に幸せそうです。その光景は一種のユートピアのように美しいけれど、永遠ではないという儚さが切なく、その輝きを際立たせています。
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誕生日の子どもたち
トルーマン・カポーティ(著) , 村上 春樹(訳)
少年少女版『ティファニーで朝食を』とでも言いたくなるような、宝石みたいに小粒で光るお話です。その気になれば悲劇的にも悪趣味にもなりそうな女主人公ミス・ボビットを、これほどまでに爽やかかつ瑞々しく魅力的に描いているところがまず見事で、構成も驚きの達人技。表題作以外も秀作だらけの短編集です。
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遠い声遠い部屋 改版
カポーティ(著) , 河野 一郎(訳)
ドロドロと不気味なものを爽やかに描くかと思えば、希望にあふれていたはずの日常を不吉な予感を漂わせながらおどろおどろしく描くのもカポーティの本領です。親しい人たちに襲いかかる不安の影、一見清潔な関係が徐々に悲しみを帯びていく様子を読み進めるうち、思春期のように切なく胸が痛みます。
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冷血
カポーティ(著) , 佐々田 雅子(訳)
膨大な取材を得て、被害者や加害者だけでなく捜査官やその周りにいた人物に至るまで、人物の内部にまで分け入って丹念に描いています。事件の表面だけを切り取れば同情する余地のない加害者に、親身に寄り添って克明に考え抜いた姿勢に呆然となる、渾身の一作です。
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