ブックキュレーター小説家 西村賢太
社会の底辺で蠢く者から、社会の底辺にいるのではないかと怯えている人へ
個人の生活も社会の動きも、えらく息苦しく感じられます。SNSの普及によって、無責任な発言がヘンに幅を利かすようにもなっている。その種に重きを置く人間が多過ぎる。苛烈な生と死にふれることは、他人の思惑を気にするばかりの価値観を一新してくれるかもしれない。そんなのは、不動である必要はないはずです。
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オリンピック出場、戦地出征、朝鮮赴任、共産運動の従事と脱落、薬物中毒、愛人刺傷、精神病院入院、そして師、太宰治の墓前での自裁と、その三十六年の生涯で目まぐるしい変遷を見せた無頼派私小説作家。繊細とデスペレートが同居する圧倒的迫力の作品群は、人の心のデリケートな部分に沁み入る魔力を秘めている。絶望に嘆く人が泣き笑いすること必定。
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楽天家は運を呼ぶ
高橋三千綱
著者は糖尿病、肝硬変、食道ガン、胃ガンとまさに満身創痍で仕事を続けている。その“書く”ことに対する作家としての執念――しかし不思議なくらいに気負いはない。至って楽天的な日々を悠々と綴っている。かような病に対する謙虚な不敵さは、現代の長寿人生においては必須となるはず。
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自殺直前日記改
山田 花子(著)
一九九二年、満二十四歳時に自裁した漫画家。頭の中だけで、観念だけでいじめやメンヘラをこねくり廻した読み物は多いが、この人の作はそれらと一線を画している。しかしそれ故に自身がボロボロにならざるを得なかった。安易に理解者ヅラをするよりも、一度きりの限りある“生”について顧みたい。
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“師”と仰ぐ大正期の私小説家、藤澤清造との対話を主題とした四篇を収録。生者から死者への、無意味で滑稽な一方通行の問いかけだ。だが人それぞれに心の支えがあるように、私もまたそれによって書き続ける意志を、より強固なものにするのである。
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生まれてから半世紀を超えたが、どの年代でも愚行は止まぬ。誇っているわけではない。また書くことで自身が救われることもない。が、こんなみっともない人間の冴えぬ道行きに比べたら、自分の人生ははるかにマシだなと思って頂ければ、書いた意義も少しはあるかもしれません。
ブックキュレーター
小説家 西村賢太一九六七年七月、東京都江戸川区生まれ。中卒。二〇〇四年に同人誌発表の作が「文學界」に転載されてデビュー。以降、独自の私小説を精力的に発表する傍ら、新潮文庫版『根津権現裏』(藤澤清造著)『藤澤清造短篇集』、角川文庫版『田中英光傑作選 オリンポスの果実/さようなら 他』を編集、校訂、解題する。著書に『どうで死ぬ身の一踊り』『小銭をかぞえる』『東京者がたり』『芝公園六角堂跡』『夜更けの川に落葉は流れて』等多数がある。
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