ブックキュレーター本のフェス実行委員 長谷川潤
狩猟と生きる人間たちの情念にゆさぶられる物語
長らく獲物と格闘し、食いつないできた人類。身体の中に組み込まれた、その野性を呼び覚ますような物語を選んだ。近代という時代のうねりの中で衰退に追い込まれた狩猟を通して、人間の情愛や葛藤を濃厚に描いた力作。アイヌもマタギも捕鯨も、今の時代が失ってしまった何かを教えてくれる。命と向き合い、熱く生きるたくましさ、やさしさ。
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山にこもり、ケモノと対峙するマタギに骨太なかっこよさを感じるようになったのは、この物語の影響だろう。時は、明治末期から大正。秋田の阿仁を拠点に狩猟しながら旅をするマタギ・富治の生々しい人生に「男の覚悟」をみた。掟の厳しいマタギの世襲が縦糸なら、村の男と女の艶かしくも泥くさい物語の横糸が秀逸である。
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現代の狩猟には、どんな意味があるのだろう?“生きるか死ぬか”の犯罪物語のスリリングな展開の背景には、そんな一貫した問いがある。そして、自らが生きのびるために殺生するのは、人間の宿命であることに気づかされていく。山に分け入り、細胞に刻まれた記憶をたぐり寄せながら息子は狩猟を受け継いでゆくのだろう。
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ブックキュレーター
本のフェス実行委員 長谷川潤広告会社で出版プロモーションの仕事をしている。「本のフェス2019」では、全体をまとめるプロデューサー。祭りの渦が年々大きくなっていることを実感し、10年後は世界に誇れる日本のイベントになることを夢みる。プライベートでは、地元鎌倉、葉山で里山の雑木林の手入れがライフワーク。炭焼きにも挑戦しており、四季折々の自然の素晴らしさを『炭やきじいさん』(冨山房インターナショナル)として物語にした。NPO法人イクメンクラブ代表として「わんぱく子育て」を推進。https://honnofes.com/
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