ブックキュレーター写真評論家 飯沢耕太郎
書を捨てて町に出たくなる写真集
寺山修司が唱えた「書を捨てよ町へ出よう」という言葉は、まさに写真家たちの営みをそのまま言い当てている。何をどう撮るか考えるより先に、カメラを抱えて街頭に飛び出し、目の前にあらわれてくる場面に素早く反応してシャッターを切っていく。そんな「路上スナップ」の魅力が詰まった写真集を見て、あなたも街歩きの歓びを味わい尽くしてほしい。
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犬と網タイツ
森山 大道(著)
「路上スナップ」の第一人者といえば、なんといっても森山大道。1960年代から、「野良犬の目」で膨大な量の写真を撮り続けてきた。8ヶ月間集中して撮影したというモノクロ、縦位置の写真がおさめられた『犬と網タイツ』からは、2010年代の東京の「人々と事物とが交錯し氾濫する俗世界」の感触が浮かび上がってくる。
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DRAGONFLY ONAKA Koji=2002−2007
尾仲 浩二(著)
尾仲浩二は写真学校で森山大道の教えを受けた。だが1980年代後半以降、森山よりもやや遠い距離感で被写体を捉えていくスタイルを確立する。2002〜07年に日本各地で撮影されたカラー写真を集成した『DRAGON FLY』には、旅の途上で彼の前にふっとあらわれた、どこか懐かしい眺めがつかみ取られている。
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ON THE CORNER 街と人々のスナップ
ハービー・山口(写真) , 中藤 毅彦(写真) , 大西 みつぐ(写真) , 池谷 修一(編集)
3人とも長いキャリアを持つ「路上スナップ」の写真家だが、作風は微妙に違う。穏やかで優しい眼差しのハービー、グラフィック的な処理が巧い中藤、中間距離の人物や風景が得意な大西──だが、「街」「人間」「モノクローム」というキーワードで3人が共作したこの写真集では、それぞれの違いが融けあって見えてくるのが面白い。
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Los Angeles/San Francisco
YOSHIYUKI OKUYAMA(撮影)
若い世代の写真家の代表格といえる奥山由之が、アメリカ西海岸で撮影した「路上スナップ」の写真集を刊行した。あくまでも軽やかに、弾むように撮影された写真群だが、そこに漂っている空気感は意外にソリッドでハードだ。彼の視線の動きをそのまま定着したシークエンス(連続写真)が効果的に使われている。
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ソール・ライターのすべて
ソール・ライター(著)
ファッション写真家として成功しながら、1980年代に隠遁生活に入ったソール・ライターの、ニューヨークの路上を撮影し続けた写真群は、2000年代になってようやく再評価されるようになる。8万人以上の観客を動員した回顧展のカタログを兼ねたこの写真集から、彼の写真哲学のエッセンスを読み取ることができるだろう。
ブックキュレーター
写真評論家 飯沢耕太郎1954年、宮城県生まれ。写真評論家。きのこ文学研究家。1984年、筑波大学大学院芸術学研究科博士課程修了後、写真史、写真論を中心に執筆活動に入る。近年はきのこをテーマした文学作品を渉猟、研究する仕事にも力を入れている。読書の傾向は幅広く、とめどがない。むろん専門分野の写真や菌類学の本が中心になるが、デイバックにはたいてい文庫本が入っている。たまたま、今読んでいるのは奥泉光『石の来歴/浪漫的な行軍の記録』(講談社文芸文庫)。電子書籍にはほとんど縁がなかったが、都築響一編集のUSBメモリ版の電子書籍写真集『ベラミ』には可能性を感じた。
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