ブックキュレーター哲学読書室
新たなる思考のためのメタファーはどこにあるのか?
ジョージ・レイコフとマーク・ジョンソンは『レトリックと人生』(原著1980年、訳書1986年)で、この地球上の人間にとっての意味の源泉としてのメタファーを、さまざまな日常言語と、その中に含まれた身体から抽出しました。さて、ポスト・インターネット時代の日常において、そんな考えるためのメタファーを、一体どこに求めればいいのでしょうか。【選者:久保田晃弘 (くぼた・あきひろ:1960-:多摩美術大学教授)】
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ニュー・ダーク・エイジ テクノロジーと未来についての10の考察
ジェームズ・ブライドル(著) , 久保田晃弘(訳)
僕らのものの考え方や行動は、いつの間にかテクノロジーによって強く規定されるようになりました。美学が世界を見るためのフィルターであるとすれば、テクノロジーに規定されたものごとの見方こそに、新しい美学があるはずです。テクノロジーのスペクタクルに惑わされず、そこと距離を取ることを勧める現代の叙事演劇です。
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コンピュータという計算機械、前衛と呼ばれた音楽や芸術、モダニズムこそが脱人間を希求するポストヒューマン思想でした。そこと軌を一にする資本主義を加速させることで、それ自体を内破させようとする加速主義が、左派でもなく、右派でもなく、今やマイルドな中道路線の形をとって、社会の分断を加速しています。
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解放された観客 新装版
ジャック・ランシエール(著) , 梶田 裕(訳)
わかりやすさという知性の不平等を是とする今日の教育において、批評性を生み出す距離が、逆にテクノロジーのスペクタクル化を助長しています。自分にとって都合の良い未来を、あたかもそれが必然であるかのように語ることの危険性。GAFAが大きな力を持つ今日の社会で、エージェンシーはどこに存在し得るのでしょうか。
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犬と人が出会うとき 異種協働のポリティクス
ダナ・ハラウェイ(著) , 高橋 さきの(訳)
2019年の恵比寿映像祭で上映されたドキュメンタリー『ダナ・ハラウェイ──生き延びるための物語り』の最後に朗読された「kin(親縁)」という異種協同概念は、そうしたエージェンシーの問題に対する、新しいメタファーとなり得るかもしれません。必要なのは、多様な種が存在することではなく、それらが交雑することです。
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ポストヒューマン 新しい人文学に向けて
ロージ・ブライドッティ(著) , 門林 岳史(監訳) , 大貫 菜穂(共訳) , 篠木 涼(共訳) , 唄 邦弘(共訳) , 福田 安佐子(共訳) , 増田 展大(共訳) , 松谷 容作(共訳)
ポストヒューマン理論が「人新世」において人間を再考するための、生産性に富んだ道具だとすれば、技術によって人間となった生物の人文学は、一体何を前提とすればいいのでしょうか。ロボットではなく人間3原則が問われている今、物質的でも心的でもない、中間的なグレーマターに根ざした、新たなる人文学が必要です。
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哲学読書室知の更新へと向かう終わりなき対話のための、人文書編集者と若手研究者の連携による開放アカウント。コーディネーターは小林浩(月曜社取締役)が務めます。アイコンはエティエンヌ・ルイ・ブレ(1728-1799)による有名な「ニュートン記念堂」より。
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