ブックキュレーター哲学読書室
マルクスと環境危機とエコ社会主義
気候変動が深刻化するなかで、環境危機を資本主義批判とつなげることの重要性はもはや疑いえなくなっている。だからこそ、マルクスの知的遺産も、新しい文脈において読み返され、「大洪水の前に」すべてを変えるにはアップデートされなくてはならない。新しい社会の展望を切り開くために。【選者:斎藤幸平 (さいとう・こうへい:1987-:大阪市立大学准教授)】
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マルクスのエコロジー
ジョン・ベラミー・フォスター(著) , 渡辺 景子(訳)
マルクスは生産力至上主義であり、環境思想とは相容れないという批判が支配的であったが、そうした批判を徹底して退け、マルクスの環境思想を現代に活かすための足掛かりを英米圏で確立した作品。フォスターが提示した「物質代謝の亀裂」は、世界中でエコ社会主義者たちのインスピレーションの源泉になっている。
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マルクスの物象化論 資本主義批判としての素材の思想 増補改訂版
佐々木 隆治(著)
緻密なテクスト解釈を通じて、「素材の思想」としてマルクスを読み、「物質代謝」という概念に着目することの意義を示してくれた本。安易な批判を向けるのではなく、マルクスを丁寧に読み、困難に寄り添うことこそが、その現代的意義を明らかにするのである。
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周縁のマルクス ナショナリズム、エスニシティおよび非西洋社会について
ケヴィン・B.アンダーソン(著) , 平子 友長(監訳) , 明石 英人(訳) , 佐々木 隆治(訳) , 斎藤 幸平(訳) , 隅田 聡一郎(訳)
晩年のマルクスがエコロジーと並んで大きな関心を寄せたのが、非西欧における共同体社会の生命力であった。抜粋ノート研究の手本となる作品であるだけなく、現代資本主義において、マルクスの理論をグローバルサウスとの連帯に向けた国際主義にアップデートするために必読の書。
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これがすべてを変える 資本主義vs.気候変動 上
ナオミ・クライン(著) , 幾島幸子(訳) , 荒井雅子(訳)
本人はけっして公言しないが、クラインは「マルクス主義者」であり、本書も資本主義変革の書である。クラインが海外と比較していまいち流行っていないのは、日本の左派がマルクスを理解しておらず、それゆえクラインの主張を捉え損ねているからではないか。そろそろ左派は「自然」を語るべきなのである。
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マルクスのノートにはこれまで明かされることのなかったエコロジー思想が存在している。それが『資本論』で展開された物質代謝論と結びつくことで、マルクスの経済学批判がもつ真の射程が明らかになる。「素材の思想」はエコ社会主義につながっているのである。
ブックキュレーター
哲学読書室知の更新へと向かう終わりなき対話のための、人文書編集者と若手研究者の連携による開放アカウント。コーディネーターは小林浩(月曜社取締役)が務めます。アイコンはエティエンヌ・ルイ・ブレ(1728-1799)による有名な「ニュートン記念堂」より。
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