ブックキュレーター文筆家 千野帽子
生きづらい「ストーリー」に流されないための本
人間は生きていると二酸化炭素を作ってしまうのと同じように、勝手なストーリーを作って世界を「わかったつもり」になってしまいます。ストーリーにいつの間にか思考をハックされて苦しい状態を「生きづらい」と呼びます。やられっぱなしじゃあんまりだから、そのストーリー、たまには逆ハックしてやりませんか?
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人間とはなにか 脳が明かす「人間らしさ」の起源 上
マイケル・S・ガザニガ(著) , 柴田裕之(訳)
人間はストーリー形式で世界を認識します。その行動には進化のバグのような不合理があちこちに見られます。そしていつも自己欺瞞と不安に苛まれています。自分という人間を「そんな動物なんだよ」というふうに理解しなおすことで、目の前の悩みがふっと軽くなったりするから、脳や進化に関する本には癒しがあります。
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SNSでわざわざ怒りのネタを探してきて、怒りを証明してみせる人たち。当人のストーリーでは「毀損された正義を取り戻そうとする正義の人」ですが、じっさいには怒り依存症のジャンキーなのです。本書では哲学者、アダルトビデオ監督、美術家の3人が政治と性をめぐる「怒り消費」の状況を交通整理してくれます。
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アウシュヴィッツで死と隣合わせという状況は、どんな人でも、人生になにかを期待できるような状態ではありません。著者は逆に「人生が自分になにを期待しているだろうか?」と考えました。ピンチのときに「おもしろくなってきやがった」とつぶやく次元大介イズムのエッセンスが、ここにあります。
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生ける屍の結末 「黒子のバスケ」脅迫事件の全真相
渡邊 博史(著)
《週刊少年ジャンプ》に連載されアニメ化した『黒子のバスケ』の周辺で起きた連続脅迫事件の実行犯による実録本を読んで、カミュの殺人小説『異邦人』を読み直したくなりました。本書はライフストーリーという「物語」をめぐる、切れば血の出るような考察を含んでいます。
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夏休み
千野 帽子(編) , 秋元 康(ほか著)
大人になると、夏休みを自分のために使い切ることは難しい──これが日本を覆うストーリーです。大人だって夏休みを自分のために使ったほうがいいんだ、と自分に言いたくて、このアンソロジーを編みました。堀辰雄から秋元康、森見登美彦まで、夏こそ「子ども」「青春」の意味をとらえ直すための作品群。
ブックキュレーター
文筆家 千野帽子文筆家。文学理論を研究しながら雑文を執筆。小説についてのエッセイが多いですが、俳句や人文科学やサブカルチャーについて書くこともあります。好きなジャンルは進化心理学、哲学、宗教、小説(とくに海外)、俳句。福岡市出身。学業でパリ、仕事で岡山、京都に住み、その後神戸近郊に移住。本は公共交通機関で移動中に、あるいは喫茶店で読みます。家族が就寝中(早朝か深夜)なら家でも読みます。紙の本と電子書籍の比率は目下19:1程度ですが、これから電子の比率が上がるかもしれません。
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