ブックキュレーター株式会社カストリ出版 渡辺豪
消える遊廓文化を探して
歌舞伎や落語などの芸能や、浮世絵などの芸術などにも多くの影響を与えた遊廓。昭和33年に施行された売春防止法によって遊廓が消滅してから、2019年の今年、61年目を迎えます。半世紀を経て、遊廓建築など当時の面影は失われていっています。今回は、全国に遍在した遊廓を知る本を紹介します。
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江戸時代に幕府から唯一認められていた売春街としての吉原遊廓は有名ですが、江戸市中には吉原以外の売春街(岡場所)が幕府の目から隠れて存在しており、宿場町・銭湯・船着き場・茶屋などにはそれぞれ、飯盛女・湯女・舟饅頭・茶汲女など呼ばれた娼婦がいました。吉原だけではない、江戸の色街文化を広く知るためにはこの本。
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「遊廓」には様々な形態があり、紋切りにできないのが遊廓の持つ奥深さの一つ。遊廓は様々な時代・場所・理由によって発生しました。海上輸送の盛んだった中近世は港に、内陸の交通網が整備される近代以降には宿場町に、戦中戦後は基地周辺にもつくられていきました。カメラマンでもある著者が日本国内に残る遊廓の残滓を求めて歩いた本書。写真を多数収録。
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母の問わず語り 辻遊廓追想
真喜志 きさ子(著)
日本最南端の県、沖縄。ここにも遊廓・辻(チージ)がありました。その立地条件から辻は“緩衝装置”として、中国や薩摩藩などの役人を迎賓する場に使われ、沖縄の「尾類(ジュリ)」と呼ばれる遊女は、同時に歓待のため芸を披露する芸能者でもありました。辻遊廓は沖縄芸能のルーツでもあります。本書は、元遊女だった母を持つ著者が、第二次世界大戦中に遊女たちが辿った戦争体験などを訊き取ったノンフィクション作品。
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昭和33年で消えた赤線(戦後に存在した売春街の俗称)。あれから赤線の街はどのようになったのか?赤線は消えても、形を変えて今も売春街としての性格を残す街を訪ね、そこで働く現代遊女と心と身体を交わす旅。ちくま文庫化され、書き下ろし1編を収録。
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花街 異空間の都市史
加藤 政洋(著)
花街というと現代では、「芸者さんがいる街」というイメージですが、かつては遊女と芸者が混在する街を花街といい、広義の意味で遊廓=花街でした。明治になって遊廓を取り巻く法例が整備されるにしたがって、遊女の街と芸者の街は分離していきました。時代によって「花街」の持つ意味は一定ではありません。本書は、都市空間における花街がどのように設計されていったのかを紹介。花街の視座から遊廓が見える一冊です。
ブックキュレーター
株式会社カストリ出版 渡辺豪1977年生まれ。日本唯一の遊廓専門出版社・(株)カストリ出版代表。2016年、かつての吉原遊廓に遊廓専門書店・カストリ書房を創業。職業柄、多くの遊廓関連書籍に目を通していますが、これまでに国内の遊廓跡を約400箇所以上をフィールドワークしています。日本近現代史の裏側にあり、これまで見落とされがちだった遊廓にまつわる情報を流通させることを目的としています。出版や書店だけでなく、遊廓関連のテレビ・ラジオ出演、トーク講演、イベント主催などもしています。遊廓家。
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