ブックキュレーター哲学読書室
眠る記憶をざわめかせる、ざわめく記憶を眠らせる
歳を取ると、自分の忘却力に驚かされる。忘れるのはやはり忘れたい記憶が多い。でも、記憶を失うのは、個人でも、集団でも、地域社会でも、国でも同じである。失われた記憶をざわめかせるもの、また、忘れられない記憶を眠らせてくれる営みをめぐる5冊を選びました。【選者:福島勲(ふくしま・いさお:1970-:仏文学者・文化資源学者)】
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宮本常一を現代に蘇らせる名テクスト選集。もはや神話の領域に達した「土佐源氏」を含む。「私の一生は伝書鳩のようなものだったかもしれません」という著者の述懐には、空間だけでなく、時間を超えて人から人へと言葉を伝えていく作業の重要性とその困難を改めて思い知らされる。伝書鳩になりたい。
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毎日写真
鷹野 隆大(著)
写真家は名文章家でもある、という誰かの洞察をしみじみと思い出す。両者に共通するのは、外界や内面を観察する際の解像度の高さに加えて、対象と自分との関係についての透徹した意識である。被写体と一緒に裸になり、不可視の「カス場々」の写真を撮る鷹野の自己相対化、ユーモア、そしてその責任感の所在が見えてくる一冊。
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贈与論 資本主義を突き抜けるための哲学
岩野卓司(著)
冷戦終了とグローバル化によって地球全体が資本主義化してしまった現在、贈与とは何だったのかをやさしく丁寧に、しかも強烈な突破力をもって語りかけてくれる一冊。モースから現代フランス思想にいたる贈与をめぐる思考を辿り直しながら、商取引ではない人と人、人と物、物と物との関係を今一度思い出してみよう。
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ディアローグ デュラス/ゴダール全対話
マルグリット・デュラス(著) , ジャン=リュック・ゴダール(著) , シリル・ベジャン(編) , 福島 勲(訳)
文学と映画、言葉と映像は近いようで遠い、遠いようで近い。遠近法を無視した両者の距離感はデュラスとゴダールによる三つの対話の中に表れている。両者は出会っては別れ、そして再び出会う。エクリチュールで世界に対峙したデュラス、映像と音で対峙し続けている孤独なゴダール。形式の違いで対立し、形式の違いを超えて連帯している二人。
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ブックキュレーター
哲学読書室知の更新へと向かう終わりなき対話のための、人文書編集者と若手研究者の連携による開放アカウント。コーディネーターは小林浩(月曜社取締役)が務めます。アイコンはエティエンヌ・ルイ・ブレ(1728-1799)による有名な「ニュートン記念堂」より。
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