ブックキュレーター哲学読書室
哲学カフェには考えるに値する論点があるか?
「哲学カフェなんてたんなるおしゃべり会でしょ」――そんな陰口をときどき耳にします。何を隠そう私自身がこの疑念を完全には払拭できていません。それでも、アウトリーチのようにたんに哲学カフェを行なうだけではなく、この営みが含みもつ思想的な論点を考え、書き留めたい。そんな思いを叶えるにあたって裨益した本をご紹介します。【選者:三浦隆宏(みうら・たかひろ:1975-:椙山女学園大学准教授)】
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哲学カフェを論じるにあたって、最初に気になったのが、「進行役とはどういう存在か?」という問いでした。先生や指導者ではなく、支援者や助産師としてのファシリテーター観を本書の冒頭で目にしたときの「あ、これだ!」という目から鱗の感覚は、いまもはっきりと残っています。
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サイエンスカフェや認知症カフェといった言葉をよく目にするようになった2000年代の中盤からは、「カフェ」という場所の意義が気になりだしました。そんなときに本書の「インフォーマルな公共の集いの場」としての「サードプレイス」という概念は、「ウィーク・タイズ」や「ソーシャル・キャピタル」という語とともに、とても役立ちました。
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弱いロボット
岡田 美智男(著)
哲学カフェが哲学研究者から不評を買う一つの理由に、その不完全な性質があるように思います。参加者らの発言に依存するという点では他力本願な営みですし。そんな欠点をなんとかポジティブに捉えられないものかと思案していた頃に読み、「オープンなシステム」(としての哲学カフェ)という視点を本書から得ました。岡田先生とはのちに丸善名古屋本店での「マルゼミ×哲学カフェ」でもご一緒させていただきました。
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活動の奇跡 アーレント政治理論と哲学カフェ
三浦 隆宏(著)
以上の哲学カフェをめぐる四つの論点については、本書の第2章、第5章、補論2、補論3で論じていますので、お読みいただけますと幸いです。やっと自分なりの哲学カフェ論をまとめられたと思ったのも束の間、今度は「オンラインで哲学カフェはどこまで可能か?」という新たな問いに直面しつつある今日この頃です。
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哲学読書室知の更新へと向かう終わりなき対話のための、人文書編集者と若手研究者の連携による開放アカウント。コーディネーターは小林浩(月曜社取締役)が務めます。アイコンはエティエンヌ・ルイ・ブレ(1728-1799)による有名な「ニュートン記念堂」より。
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