大人でも子どもでもない。感受性豊かな中学生の成長と揺れを描いた物語

大人になった征人が、自分の息子を連れて故郷の島を訪れます。そこで思い出す、14歳の自分。暑い夏の時期、誰もが感じた気持ちがすーっと心をよぎります。あのころの不安定で、儚くて、だからこそずっと大切にしている感覚を、鮮やかに思い出させてくれることでしょう。

イギリスで、地域で底辺と言われる中学校に通う著者の息子が主人公。彼を取り巻く環境には、経済、人種、政治的な問題のすべてが横たわっていて、彼はそのなかでどのように生きていくのか・・・。決して遠い国の話ではないと感じつつ、懸命に生きる親子のしなやかで力強い姿に、思わずエールを送りたくなります。

いじめにあって不登校になった少女・まいは、夏の間に祖母である「魔女」のもとに預けられます。そこで学ぶのは勉強ではなく、なんでも自分で決める強さです。思春期特有の苦しさや寂しさや苛立ちを通して、凛々しい自分になっていくまいの姿に、思わず過去の自分の姿を重ね合わせてしまうことでしょう。

「キレた」友人を見て、「キレる」ことを考え始めた男子中学生・エイジ。家族や友人との関係、そして初恋に揺れながら成長していく物語です。14歳の心に絡まるさまざまなことを、どうやって消化していくのかという過程はとてもリアルで胸に迫ります。日常に潜む気持ちの揺らぎを見事に描き切った快作です。

1クラスに集まる24人の中学1年生、それぞれの視点で語られる連作短編集です。「人気者になりたい」「恋のライバルが友人だったら」「仲間外れになりたくない」など思春期であれば一度はぶつかる思いを、シリアスに、ユーモアたっぷりに描いています。あのころの甘酸っぱさを懐かしく感じたい、すべての大人にオススメします。