ブックキュレーター港の人 編集者 井上有紀
切手が結ぶ遙かなる世界
手紙を書く習慣をもつ人は、もはや圧倒的少数者なのでしょうか。紙に書いた言葉を贈りあう郵便という仕組みには、機能だけでは語れない価値があり、それは本の価値にも通じているように感じられます。そのことを象徴するのが切手。小さな紙片にこめられる無限の美は、人の心をとらえて余りあるものです。切手の価値と魅力を見直してみませんか。
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切手帖とピンセット 1960年代グラフィック切手蒐集の愉しみ 増補新版
加藤 郁美(著)
カテゴリーごとにフルカラーで紹介される無数の切手! でも、カタログ的ではなく、切手帖をそっとあけて、カラフルな図柄に眼を溺れさせる楽しみを追体験させてくれます。添えられた説明も情報豊かで丁寧。この増補版では、「もっともっと」とばかりに素敵な切手が追加されて、切手愛が止まらなくなってしまうこと必至。
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女王の肖像 切手蒐集の秘かな愉しみ
四方田犬彦(著)
映画だけでなくあらゆるテーマを自在に語る才人である著者の趣味が切手蒐集とは少々意外。この本はコレクション自慢ではなく、50年以上になるという蒐集のドラマが語られます。四方田少年が切手を通して世界を知り、愛着を深めていく様子、切手が蔑ろにされがちな昨今への嘆きからも切手愛が楽しげに伝わってきます。
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葉書でドナルド・エヴァンズに
平出 隆(著)
ドナルド・エヴァンズは夭折の画家ですが、その短いキャリアのうちに架空の国の切手を4000枚以上描きました。切手によっていくつもの国を想像し、創造したのです。エヴァンズに向けて書かれた百通以上の手紙から成る美しい本。切手は、遠く思えるような場所へ私たちを連れて行ってくれる秘密のドアなのです。
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おとぎの国の郵便切手
安野 光雅(著)
ある国で初めて切手をつくることになり・・・という物語に添えられた安野光雅による切手。ページをめくるたびに、繊細な図柄のきれいな切手のシートが次々に現れて、古今東西どんな物語も包み込んでしまう切手の魔法を、たっぷりと味わえます。自身の絵が切手になるという画家にとっての特別な喜びも伝わってきます。
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競売ナンバー49の叫び
トマス・ピンチョン(著) , 志村 正雄(訳)
混乱が混乱を呼び、混沌が混沌を呼ぶピンチョンの世界。この小説で鍵になっているのは切手。ピンチョンが切手をモチーフに選んだ背景については訳注でも触れられていますが、私たちが現実と思っている世界と、どこかにあるもうひとつの世界をつなぐものは、やはり「切手」でなくてはならないと思えて仕方ありません。
ブックキュレーター
港の人 編集者 井上有紀鎌倉の由比ガ浜にある出版社「港の人」勤務の編集者。手がけた本は、『目であるく、かたちをきく、さわってみる。』(マーシャ・ブラウン)、『きのこ文学名作選』(飯沢耕太郎編)、『胞子文学名作選』(田中美穂編)、『世界 ポエマ・ナイヴネ』(チェスワフ・ミウォシュ)、『90度のまなざし』(合田佐和子)など。海を見ながら自転車で通勤する時間が、毎日のいちばんの贅沢です。本棚の隅っこにあるような本もふくめて、一冊一冊大切に紹介します。ホームページhttps://www.minatonohito.jp
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