ブックキュレーター映画批評家 寺本郁夫
SF短編集の快楽
SFの優れた短編集は「種子」のように読む人の心に植えられて、それがある年月を経てびっくりするような姿に育っているのを発見することがあります。人の生き方や文明のあり方などに関するイデーは、もはや無視出来ないほどはっきりと確かに、私たちの心に根付いてしまう。そんなポテンシャルの塊のような、想像力の極北とも呼び得るSF短編集をご紹介します。
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1953年の出版だってことを、読んでいると忘れます。我々の現代社会の人間疎外を遥かに予見した小説集として、あまりにアクチュアルだからです。テクノロジーの発展にさらされる私たちがそれでも人間らしくあるための道を、静かに(ときにシニカルに、ときに詩的に)示してくれる作品群。
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愛はさだめ、さだめは死
ジェイムズ・ティプトリー・ジュニア(著) , 伊藤 典夫(訳) , 浅倉 久志(訳)
異様な想像力と鋭利な表現が描く地球外生命は、とても映画が視覚化することなど出来ないし、恐るべきスピードで疾走する文章が描く世界の終わりも、とうてい映像にはできません。ジェンダーに関する突き抜けた視点にも唖然とします。言葉のヴィルトゥオーゾが繰り出す超絶技巧SFサーカス。
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今やサイバーパンクの「教祖」の教典ですが、これは近未来を舞台にしたアウトローたちのタフなハードボイルドとして読むべき小説集です。これほど濃密に(そして華麗に)SF的ガジェットを敷き詰めながら、サスペンスの緊張が極限にまで張り詰めている、ゴージャスな電脳オペラ。
ブックキュレーター
映画批評家 寺本郁夫映画批評家。80年代の季刊『リュミエール』に映画批評を発表。以来、TOWER RECORDSの『intoxicate』、『映画芸術』に映画批評を寄稿。映画の批評とはその映画の独自性を発見すること、および、その批評を通して映画とは何かを発見することと信じる映画原理主義者。さらに、映画批評は単に映画を発見するのみでなく、映画を表す言葉を発見しなければならないと信じる批評原理主義者。座右の銘はメルロ=ポンティの次の言葉。「(『語る』という現象において)話し手は語るに先立って考えるのではない。話す間に考えるのですらない。語るということが考えることなのである。」映画も読書も雑食性。好き嫌いなく食べます。
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