ブックキュレーター港の人 編集者 井上有紀
ほんとうの金子みすゞ
最もよく知られる詩人のひとり、金子みすゞ。作品が辿った数奇な運命、瞬時に人の心をとらえる詩の言葉の力を見るとき、みすゞの平明な詩には恐ろしいほどの強さ、激しさが秘められているように思えます。「優しさ」や「善良さ」といった言葉だけでは語り尽くせない、詩人・金子みすゞのほんとうの姿、その詩の秘密を探してみませんか。
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金子みすゞは当時盛んだった童謡雑誌の投稿欄の常連のひとりで、それが唯一の発表の場でした。死後30年以上経ち、投稿詩を目にして強く惹かれたこの本の著者・矢崎氏が十数年をかけて無名だったみすゞを捜し出し、埋もれた作品群を掘り当てたのでした。この事実は、詩の言葉が時を超えて生きることの証明だと思います。
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美しい町 現代仮名づかい版 上
金子 みすゞ(著) , 矢崎 節夫(監修)
1930年3月、金子みすゞは26歳の短い生涯を自らの手で閉じました。前日に近くの写真館で撮影してもらい、幼い娘と五冊の手帳を遺しました。そのうち三冊には500篇余の自作の詩が書かれ、一冊ごとに「美しい町」「空のかあさま」「さみしい王女」と題名をつけた詩集となっていました。みすゞの全集は、この三冊を忠実に再現しているという点で特別な全集なのです。
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琅玕集 童謡・小曲 上
金子 みすゞ(編) , 矢崎 節夫(監修)
五冊の手帳のうちのもう一冊は、みすゞがセレクトした詩選集です。当時人気の詩人から投稿仲間の若い詩人の作品までが多数収められていて、冒頭を飾るのはロセッティの詩群。書店勤めのみすゞが売り物の本を書き写したのではと言われています。琅玕とは美しい石を指す言葉。みすゞにとって詩はまさに宝石だったのですね。
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金子みすゞ南京玉 娘ふさえ・三歳の言葉の記録
金子 みすゞ(著) , 上村 ふさえ(著) , 矢崎 節夫(監修)
そしてもう一冊の手帳が、3歳の娘の片言の言葉を書き留めた記録です。当時みすゞは夫から詩作を禁じられていて、手帳の冒頭に「言葉を書き留めることが何にも代え難く楽しい」とあります。みすゞには「生きた言葉」が何より切実だったのです。母親との死別後70年を経て書かれた娘、ふさえさんのあとがきも美しい。
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金子みすゞの童謡を読む 西條八十と北原白秋の受容と展開
ナーヘド・アルメリ(著)
みすゞという詩人の発見は童謡研究の世界に衝撃を与え、人々の心に広くしみわたっていきました。無数の関連書が出版されていますが、シリア人研究者によるこの本は、新たなみすゞ像を提示して注目を集めています。先入観にとらわれず言葉そのものに向き合うこと。そうすることによって詩は私たちの前に何度でも甦るのです。
ブックキュレーター
港の人 編集者 井上有紀鎌倉の由比ガ浜にある出版社「港の人」勤務の編集者。手がけた本は、『目であるく、かたちをきく、さわってみる。』(マーシャ・ブラウン)、『きのこ文学名作選』(飯沢耕太郎編)、『胞子文学名作選』(田中美穂編)、『世界 ポエマ・ナイヴネ』(チェスワフ・ミウォシュ)、『90度のまなざし』(合田佐和子)など。海を見ながら自転車で通勤する時間が、毎日のいちばんの贅沢です。本棚の隅っこにあるような本もふくめて、一冊一冊大切に紹介します。ホームページhttps://www.minatonohito.jp
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