ブックキュレーター哲学読書室
国際的なことは個人的なこと:ジェンダーが世界を動かす
国家安全保障、外交、貿易、植民地化と脱植民地化、軍事占領。これらはすべて「ある種の私的関係とされるものに依存している」と政治学者エンローは論じます。「高度な政治力学」(とされているもの)を日常生活から読み解くジェンダー研究書5冊をご紹介します。【選者:望戸愛果(もうこ・あいか:1980-:立教大学アメリカ研究所特任研究員)】
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ジェンダーとは女性を指すのではなく「女性と男性の関係を指す概念」だと本書は冒頭で指摘します。ジェンダーを女性にのみ関わる「争点」としてではなく、いかなる政治現象も説明する「視点」として用いることがなぜ必要なのかが分かる本です。「ジェンダーの視点をあらゆることに適用できることが分かると、世界の見え方が違ってくる」のです。
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家事労働の国際社会学 ディーセント・ワークを求めて
伊藤 るり(編著) , 定松 文(ほか著)
毎日の家事労働をグローバルな問題として考え直してみませんか? 近年、国際労働機関(ILO)は有償家事労働を「ディーセント・ワーク」(権利が保障され、十分な収入を生み出し、適切な社会的保護が与えられる生産的な仕事)として認めるようになりました。いかにして家事労働は国際的課題となったのか、我々はこの課題にどのように取り組むべきなのかを、本書は教えてくれます。
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バナナ・ビーチ・軍事基地 国際政治をジェンダーで読み解く
シンシア・エンロー(著) , 望戸 愛果(訳)
シンシア・エンローの主著。国際政治のジェンダー分析の「新古典」と言える本です。軍事、外交、ナショナリズム、食品・衣料品産業、観光、家事労働など、世界のあらゆる局面でジェンダーが不可欠な役割を果たしていることを本書は丁寧に浮き彫りにします。エンローの『〈家父長制〉は無敵じゃない』(佐藤文香監訳、岩波書店)も同時期に刊行されました。
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戦う女、戦えない女 第一次世界大戦期のジェンダーとセクシュアリティ
林田 敏子(著)
「ジェンダーの視点から見るとき、第一次世界大戦期のイギリスはいかなる社会としてとらえることができるだろうか」と問う本。軍服姿の女性たちが、戦争が日常と化す社会の中で果たした重要な役割を著者は鋭く指摘します。彼女たちは「マスキュリニティとミリタリズムの一体性を破壊することで、市民権に関する概念をも大きく変えた」のでした。
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虫喰う近代 一九一〇年代社会衛生運動とアメリカの政治文化
松原 宏之(著)
第9回女性史学賞受賞作。20世紀初頭アメリカでは「科学」の地位が定まっていませんでした。本書はこの時代に反売買春運動を推進した人々(ソーシャルワーカー、テクノクラート、財界人、医師等)が模索しつつ掲げた様々な「科学」が政治文化を再編したことを論じ、ミクロな現場で生み出された共振がマクロな秩序へ及ぶ過程を明らかにします。
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哲学読書室知の更新へと向かう終わりなき対話のための、人文書編集者と若手研究者の連携による開放アカウント。コーディネーターは小林浩(月曜社取締役)が務めます。アイコンはエティエンヌ・ルイ・ブレ(1728-1799)による有名な「ニュートン記念堂」より。
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