ブックキュレーター港の人 編集者 井上有紀
文学の町、鎌倉を感じる
鎌倉に住んでいた、あるいは、住んでいる文学者は数えきれず、町のあちらこちらに文学の息吹を感じ取ることができます。中世まで視線を広げればますますその気配は濃くなります。このことは、鎌倉で本の仕事をする時の最大の恵みだと感じています。この恵みを、みなさんにおすそわけします。文学に触れに、いつか鎌倉へ来てください。
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猫の散歩道
保坂 和志(著)
鎌倉住民はみんな、巻頭エッセイ「鎌倉と私 自然への無条件な信頼」に心をわしづかみにされるでしょう。鎌倉で育った小説家は「『鎌倉』は『自分』なのだという気持ちは一生変わらないんじゃないかと思う」とも書きます。鎌倉を舞台にした保坂作品とともに読みたい、鎌倉がたくさん登場するエッセイ集です。
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春の雪 新版
三島由紀夫(著)
侯爵家の御曹司と伯爵家令嬢の悲恋を情感たっぷりに描くこの小説は、大正期の貴族たちの優雅な暮らしの描写が、人間の業を浮き彫りにし、ロマンチックな雰囲気を盛り上げています。ここに出てくる鎌倉の別荘のモデルになったのが、今の鎌倉文学館。鎌倉と文学の深いかかわりを示すシンボルとなっている小説です。
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ぼくの鎌倉散歩
田村 隆一(著)
詩人、田村隆一は後半生を鎌倉で過ごし、鎌倉を題材にした詩やエッセイをたくさん書きました。路地をめぐり、海をのぞみ、草花や鳥を愛し、街角に歴史を目撃する。人の営みのあらわれとして町を立体的に感じ取る直感力は、詩人ならではのもの。詩ももちろん素晴らしいですが、リズム感あふれる散文も、読ませます。
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雪の宿り 神西清小説セレクション
神西 清(著) , 石内 徹(編)
数々の名訳を生み出したロシア文学者の草分け的存在であり、小説も書き、三島や中村真一郎らに高く評価されていた神西清。53歳で亡くなりましたが、40代から鎌倉に住み文筆活動を行いました。この本の冒頭におかれた「水と砂」は鎌倉が舞台。硬質で美しい文章に、かつての文学者の格の高さを思い知らされます。
ブックキュレーター
港の人 編集者 井上有紀鎌倉の由比ガ浜にある出版社「港の人」勤務の編集者。手がけた本は、『目であるく、かたちをきく、さわってみる。』(マーシャ・ブラウン)、『きのこ文学名作選』(飯沢耕太郎編)、『胞子文学名作選』(田中美穂編)、『世界 ポエマ・ナイヴネ』(チェスワフ・ミウォシュ)、『90度のまなざし』(合田佐和子)など。海を見ながら自転車で通勤する時間が、毎日のいちばんの贅沢です。本棚の隅っこにあるような本もふくめて、一冊一冊大切に紹介します。ホームページhttps://www.minatonohito.jp
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