ブックキュレーター哲学読書室
カトリーヌ・マラブーによる哲学の可塑性
カトリーヌ・マラブーはドイツ・フランスの近現代哲学と脳科学の可能性を探究する哲学者。ジャック・デリダのもとで執筆した博士論文『ヘーゲルの未来』以来、形の贈与と受容の運動を示す「可塑性」概念に着目してきました。マラブーの思索とともに、哲学の変形可能性を体感してみましょう。【選者:西山雄二(にしやま・ゆうじ:1971-:首都大学東京教授)】
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真ん中の部屋 ヘーゲルから脳科学まで
カトリーヌ・マラブー(著) , 西山 雄二(訳) , 星野 太(訳) , 吉松 覚(訳)
脱構築の批判的継承者マラブーが、ヘーゲルの弁証法の可能性を問い直しつつ、ニーチェやフロイトからドゥルーズ、バトラーまでの現代思想を俎上に載せるとともに、脳科学を哲学の試練にかけて、神経の可塑性や病的失認などを考察する。
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偶発事の存在論 破壊的可塑性についての試論
カトリーヌ・マラブー(著) , 鈴木智之(訳)
事故や大震災、パンデミックなど、突然降りかかってくるアクシデントは私たちの存在をいかに変容させてしまうのか。プルーストやトーマス・マンらの作品、マルグリット・デュラスの人生が参照され、因果関係には収まらない、アクシデントの破壊的可塑性が主題化される。
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新たなる傷つきし者 フロイトから神経学へ、現代の心的外傷を考える
カトリーヌ・マラブー(著) , 平野 徹(訳)
脳損傷によって私たちの自己同一性が破壊される状態をたんに退行や異常と判断してよいのか。自己抹殺的な変容の後で、別の同一性とともに生き延びるという創造的出来事が起こりうるのではないか。精神分析と神経学が把握し損ねている脳の否定的可塑性に論究し、脳と思考の新たな唯物論が示される。
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デリダの脱構築思想の今日的展開が「死後の生」という主題とともに詳細に示される、日本語で書かれた良質な研究書のひとつ。有限な私たちの生はいかに「死後の生」と隣接し、混交しているのか、という論点はマラブーの生/死をめぐる可塑性の思索とも響き合う。
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ありえないことが現実になるとき 賢明な破局論にむけて
ジャン=ピエール・デュピュイ(著) , 桑田光平(訳) , 本田貴久(訳)
マラブーが直接言及しているわけではないが、デュピュイの研究は今日、彼女が示した論点と関連する。予測可能で計算可能なリスクに向けて対策をとるだけでなく、想定外の破局的出来事を思考する態度をいかに身につけるべきか。
ブックキュレーター
哲学読書室知の更新へと向かう終わりなき対話のための、人文書編集者と若手研究者の連携による開放アカウント。コーディネーターは小林浩(月曜社取締役)が務めます。アイコンはエティエンヌ・ルイ・ブレ(1728-1799)による有名な「ニュートン記念堂」より。
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