ブックキュレーター哲学読書室
政治とポップカルチャーの古くて新しい関係を考える
政治とエンタテインメントの関係はメディアテクノロジーの進展により飛躍的な変化を遂げています。現実と虚構の境界がさまざまな仕方で揺らいでいるいま、そこにはどのような可能性と陥穽があるのでしょうか。政治とポップカルチャーが交錯するダイナミックな地平を探るために、いま改めて手にとってほしい5冊を選びました。【選者:清水知子(しみず・ともこ:1970-:筑波大学准教授)】
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啓蒙の弁証法 哲学的断想
ホルクハイマー(著) , アドルノ(著) , 徳永 恂(訳)
ヨーロッパ的な啓蒙、理性の歴史はなぜファシズムという暴力と野蛮を生みだしたのでしょうか。ナチス・ドイツからアメリカへ亡命したアドルノとホルクハイマーは、啓蒙と野蛮の逆説的な関係をアメリカの資本主義のなかにも見出します。ジャズ音楽、ラジオ、映画といった文化産業を通して人間の精神を均質化していく社会の支配と管理を批判的に考察したフランクフルト学派の代表的著作です。
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プロパガンダと聞くと威圧的なイメージがあるかもしれません。ですが、プロパガンダは「恐怖」によってではなく、むしろ娯楽性に富んだ「楽しさ」によってこそ、より巧妙にかつ効果的にその威力を発揮します。古今東西のプロパガンダの歴史を振り返りつつ、ひるがえって現代日本の状況を問い直す示唆的な一冊です。
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20世紀のポピュラー文化を牽引したウォルト・ディズニーの世界は、現代の政治、社会、文化、自然に何をもたらしたのでしょうか。ウォルトが創造したエンタテインメントをグローバルなポピュラー文化の同意と抵抗の闘技場として捉え直し、メディア・テクノロジーを通して交渉される人間/自然/動物の関係性を探ります。
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「日常的なものは、無数の密猟法からできあがっている」とセルトーは言います。支配的な文化のエコノミーのただなかで狡知を働かせ「ブリコラージュ」を行いながら「なんとかやっていく」技芸。私たちは現代的なメディアの生態系においていかにそうした技芸を創出できるのでしょうか。本書はそのさまざまなヒントに満ちています。
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コンヴァージェンス・カルチャー
ヘンリー・ジェンキンズ , 渡部宏樹 , 北村紗衣 , 阿部康人
コンヴァージェンス・カルチャーとは、複数のコンテンツとメディア・プラットフォームを横断しながらオーディエンスが能動的に往来するなかで展開される集合的知の生産プロセスを指します。メディアの制作者と消費者が予期せぬかたちで遭遇し、思わぬ政治的メッセージを生み出すファンダム文化。その生態を描き出す本書は、ポップカルチャーと民主主義の関係を考えるうえで必読の古典的名著です。
ブックキュレーター
哲学読書室知の更新へと向かう終わりなき対話のための、人文書編集者と若手研究者の連携による開放アカウント。コーディネーターは小林浩(月曜社取締役)が務めます。アイコンはエティエンヌ・ルイ・ブレ(1728-1799)による有名な「ニュートン記念堂」より。
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