ブックキュレーター東京大学大学院人文社会系研究科教授 加藤陽子
見えていそうで見えていないモノに気づいて見つめ直すには
2021年の前半期は、果たして7月末に東京五輪が開催されている時空が出現しているのかしないのか、想像しつつ過ごしていた。現実世界の自分はどちらの空間に居るのだろうか。どちらの可能性も半々で有り得たな、との不可思議な実感を得た上で過去を振り返ってみれば、そこにはこれまでと違った過去の歴史が立ち現れてくるはずだ。
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「毎日新聞」に月1回連載されたエッセーとコラムと書評からなる。原稿用紙3~5枚の分量、一息でとはいわないが通勤途中の一駅ほどで読める分量で、国家と国民、東日本大震災、天皇と天皇制、戦争の記憶、世界と日本を論じてみた。日本と世界をどう眺めるのか、の練習帳として使い倒してください。
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帯の惹句に、「戦争を描くのにこのような手法があったとは。統制下に置かれた新聞は、戦地では支配の末端をも担う。若き日『百姓だって人間だ』と書いた記者・清六はいかに働き、いかに愛し、いかに死んだのか」と書いた。「いかに働き、いたに愛し、いかに死んだのか」は、カミュ『ペスト』からの引用。
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この方が登場して、世の中には国会ウォッチのツイッターが続々と現れた。テレビや新聞は、首相や閣僚の発言に化粧を施して意味ありげに報道してしまう。意味のない発言は意味がないままに伝えるべし。そのまま見せることが大事だと喝破した珠玉の本。見る目はこの本で養おう。『政治と報道』もお奨めです。
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世界滅亡マシン 核戦争計画者の告白
ダニエル・エルズバーグ(著) , 宮前ゆかり(訳) , 荒井雅子(訳)
ご存じペンタゴンペパーをリークした著者。ベトナム戦争よりも熱いリークがこれだった。アメリカは核融合の水素爆弾を作り上げてから一貫して、ソ連(ロシア)と中国を一体として先制核攻撃の対象としてきた。日本列島が対中ミサイル基地化されそうな現在、国際政治の見る目を養うためには必携の本。
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ブックキュレーター
東京大学大学院人文社会系研究科教授 加藤陽子1960年、埼玉県大宮市(現、さいたま市)生まれ、1989年東京大学大学院人文系研究科修了(博士 文学)。専門は日本近現代史。著書に、『この国のかたちを見つめ直す』(毎日新聞出版、2021年)、『天皇と軍隊の近代史』(勁草書房、2019年)、『増補版 昭和天皇と戦争の世紀』(講談社学術文庫、2018年)、『戦争まで』(朝日出版社、2016年)、『それでも、日本人は「戦争」を選んだ』(新潮文庫ほか、2016年)、『新装版 模索する1930年代』(山川出版社、2012年)、『満州事変から日中戦争へ』(岩波新書、2005年)などがある。
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