ブックキュレーター港の人 編集者 井上有紀
何気ないふだんの暮らしに新しい風を呼びこむ本
手を動かし、目を動かし、心を動かすことによって、単調な暮らしの色あいも、もしかしたら人生の意味も少しずつ変わってくるかも。スタイルなんて、それぞれでいい。美しくなくても不器用でも、自分を殺さずに生きていけば、そこにひとすじの道が見えてくるはず──ゆっくりとした語りで、そんなふうに励ましてくれる本たちです。
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月金帳 第1集 2020 April−September
牧野 伊三夫(著) , 石田 千(著)
友人同士の作家と画家がコロナ禍の中で始めた往復書簡。リズミカルなやりとりが楽しい。ステイホーム生活のあれこれを報告しあう通信に登場する食べ物、飲み物、見るもの、聞くもの、すべて驚くほど「普通」のことだけ。読み終わると「普通」の価値が心に染みてくる。励まされる。そして心に根っこが生えてくる。
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風邪の効用
野口 晴哉(著)
「風邪を全うする」とか「上手に風邪をひく」などと、整体の創始者である著者は言う。なぜ風邪をひくのか、風邪で体に何が起こるのか、そんな話を聞いていると、凝り固まった健康観がときほぐされて身体というものを通して新しい自分が見えてくる。身体についての感覚の幅を広げ、病や死と新しい関係を結ぶ一冊。
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生きる
谷川俊太郎(著) , 岡本よしろう(イラスト)
「生きているということ/いま生きているということ/それはのどがかわくということ」と始まる谷川俊太郎の一篇の詩と、あたたかな絵とで構成された絵本。何気ない、脈絡のない、思いがけない「いま」という瞬間の連なりが人生になる。柔らかく、楽しい言葉でつくられた一篇の詩がはらむ深さにたじろいでしまう。
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サンライト 永井宏散文集
永井 宏(著)
巻末の解説に、著者の永井宏さんは「励ます人」だったとある。「技術や経験がなくてもいい、拙くても素直な気持ちで試みつづけていけばいい」。この励まし上手な人は自身の身の回りの出来事を穏やかに語りながら、不思議な説得力で、情報や消費の氾濫から離れてもなお不安になりがちな私たちを内省と行動へと優しく誘う。
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ブックキュレーター
港の人 編集者 井上有紀鎌倉の由比ガ浜にある出版社「港の人」勤務の編集者。手がけた本は、『目であるく、かたちをきく、さわってみる。』(マーシャ・ブラウン)、『きのこ文学名作選』(飯沢耕太郎編)、『胞子文学名作選』(田中美穂編)、『世界 ポエマ・ナイヴネ』(チェスワフ・ミウォシュ)、『90度のまなざし』(合田佐和子)など。海を見ながら自転車で通勤する時間が、毎日のいちばんの贅沢です。本棚の隅っこにあるような本もふくめて、一冊一冊大切に紹介します。ホームページhttps://www.minatonohito.jp
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