ブックキュレーター哲学読書室
誰でもよいあなたへと宛てられる言葉
2021年に惜しくも亡くなったフランスの哲学者ジャン゠リュック・ナンシー。その哲学の独自性はどこにあるのか。膨大な数の著作を、「誰でもよいあなた」=「不定の二人称」という切り口から読み解き、その先にあるものを見据えるための5冊を紹介する。【選者:伊藤潤一郎(いとう・じゅんいちろう:1989-:日本学術振興会特別研究員PD)】
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ジャン=リュック・ナンシーと不定の二人称
伊藤 潤一郎(著)
ナンシーの思考は、重要な局面において「あなた」という二人称と「誰か」という不定の人称を持ち出してくる。この二つの人称を整合的に解釈するために本書が提示したのが「不定の二人称」という独特な人称性である。誰でもよいあなたへと宛てて言葉を投げることこそ、ナンシーの思考の核にあるものなのだ。
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無為の共同体 哲学を問い直す分有の思考
ジャン=リュック・ナンシー(著) , 西谷 修(訳) , 安原 伸一朗(訳)
不定の二人称という観点からして最も重要なナンシーの著作は、1970年代末から1980年代半ばの時期の一群のテクストである。そこでは言表行為の問題系を蝶番として、不定の人称と二人称が次々に登場する。この時期の頂点ともいうべき『無為の共同体』の「君が私を分有する」という一節の射程は果てしなく広い。
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人称をめぐって
木村 敏(監修) , 野家 啓一(監修) , 清水 光恵(ほか執筆)
人称についての研究は多分野にまたがり、その成果はとてつもない奥行きをもつ。この論集は、まさにそれを実感させてくれるものだ。とりわけ冒頭に配された座談会(野家啓一、谷徹、内海健)は、デカルト、坂部恵、バンヴェニストらを参照軸としながら、思想史を踏まえた広い視野のなかで人称の重要性を浮き彫りにしている。
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「投壜通信」の詩人たち 〈詩の危機〉からホロコーストへ
細見和之
拙著は結論部において、ナンシーの思考をパウル・ツェランが語った「投壜通信」と結びつけている。なぜなら、どちらにおいても問われているのは「あなた」に対する信や欲望だからだ。このような視座は、細見和之の一連の著作なくしてはありえなかった。ここでは「投壜通信」をタイトルに掲げる本書だけを挙げておく。
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石原吉郎詩文集
石原 吉郎(著)
不定の二人称は、ナンシーと石原吉郎の接点にもなるだろう。「一人の思想は、一人の幅で迎えられることを欲する。不特定多数への語りかけは、すでに思想ではない」という石原の言葉を思い出したい。誰でもよいあなたへと投げられた言葉を受け取るのは、ほかならぬ一人の私であり、そこに生まれるものこそ「思想」なのだ。
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