ブックキュレーターhonto編集員
続きは読者の胸の中に。未完に終わった世界の名作小説
名作小説のすべてが完成品とは限りません。文豪の最期を飾る作品には、経済的・精神的な問題で継続不可になったもの、作者の死で絶筆となったものが少なからず存在します。だけど、そもそも物語の結末に決まりはないし、未完である事実が奇跡的に無限の可能性を生むこともあるのです。その具体例となり得る世界文学の名作小説を精選しました。
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イギリスの小説家、チャールズ・ディケンズの遺作。クリスマスの朝に失踪したエドウィン・ドルードを巡る本格的な探偵小説で、謎解き要素が大方出揃ったところで著者の急死によって幕を閉じます。河で発見された彼の懐中時計が意味するものとは。嫌疑をかけられた青年は無実か否か。小説自体が謎となり、現代に推理の余地を残した快作です。
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フランスの小説家、カミュの遺作。不慮の事故死を遂げたカミュの鞄に残されていた小説で、その内容には著者自身の過去を振り返る自伝的要素が含まれています。戦死した父親と、貧困生活を送っていた幼少期の記憶の交錯が、複数のエピソードで描き出されていきます。不条理というテーマを追究してきた小説家の貴重な遺稿です。
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叶えられた祈り
カポーティ(著) , 川本 三郎(訳)
アメリカ上流階級の裏側を「暴露」したトルーマン・カポーティの問題作。孤児院育ちの作家志望者で、マッサージ師や男娼などを務めるP.B.ジョーンズの遍歴と、ハイソサエティのスキャンダルを赤裸々に語る全3章で構成されています。社交界から猛烈な非難を浴び、著者の失意と急逝により未完のまま絶筆となったいわくつきの小説です。
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ロベルト・ボラーニョ(著) , 野谷 文昭(訳) , 内田 兆史(訳) , 久野 量一(訳)
チリの小説家、ロベルト・ボラーニョの遺作。ドイツ人作家のアルチンボルディの研究者、精神的に不安定な哲学教授、ボクシングの試合を取材する黒人記者、女性連続殺人事件を担当する捜査官、あるドイツ人青年といった人物たちによる重層的な物語です。独立しながらも関連性を持つ構成が見事で、未完にして完成の域に達した傑作といえるでしょう。
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