ブックキュレーターhonto編集員
ディストピアを覗く。暗黒の近未来に挑戦した野心的小説
暗黒郷とも呼ばれるディストピアの定義は複雑ですが、ユートピアの対義語だけではなく、ユートピアを批判的・否定的に解釈することで生まれた世界観でもあります。もしかすると理想郷と思えた世界はまやかしであり、実際は閉鎖された地獄かも知れません。そんな思考実験を物語化したディストピア小説。その魅力を伝える至高の小説を紹介します。
- 4
- お気に入り
- 1587
- 閲覧数
-
舞台はフォード紀元632年(西暦2540年)のロンドン。幾度にもわたる戦争を経て、人類は暴力を排除した社会を築きましたが、人間は人工授精で製造され、階級通りの能力を与えられる存在に変化していました。本書は異端的な主人公の視点を通し、完全なる統制社会を予言的に描きだしたディストピア小説の金字塔です。
-
第三次世界大戦後のサンフランシスコを舞台とした、フィリップ・K・ディックを代表するSF小説です。賞金稼ぎのリックと火星から逃亡してきたアンドロイドたちの攻防を軸に、放射能灰にまみれた地球と、生物を所有することが地位に関わる社会システムにマーサー教という宗教をかけ合わせ、独特の荒廃感を生み出している点が印象に残ります。
-
近未来の国家「クオリティランド」では国民は個人情報をもとにランク付けされて、日常生活がアルゴリズムで最適化される仕組みになっています。そのなかで、主人公は「役立たず」級のランクに降格し、オンラインショップからは望まない商品を送りつけられます。超監視社会の不条理をブラックユーモアで包み込んだ予言的SFです。
-
帝政が復活した2028年のロシアは強権統治が進められていて、皇帝の親衛隊員が幅を利かせる国家となっていました。本書は親衛隊士である主人公の1日を描き、ほぼ現代も同然の近未来で巻き起こる奇々怪々な出来事に迫ります。バイオレンスにドラッグ。クレイジーな未来が著者特有の風刺的表現で彩られた問題作です。
-
世界初の予言機械を開発したソ連に対抗し、日本の中央計算技術研究所に務める主人公も予言機械を開発。彼は脳波からその人自身を再現する機能に注目しますが、実験過程で想定外の事件に巻き込まれ、やがて「ある人物」を再現した未来像から過酷な未来予測を知らされます。日本の本格的長編SF小説の原点といえる傑作です。
ブックキュレーター
honto編集員ブックツリーとは?
ブックツリーは、本に精通したブックキュレーターが独自のテーマで集めた数千の本を、あなたの"関心・興味"や"気分"に沿って紹介するサービスです。
会員登録を行い、丸善・ジュンク堂・文教堂を含む提携書店やhontoでの購入、ほしい本・Myブックツリーに追加等を行うことで、思いがけない本が次々と提案されます。
Facebook、Twitterから人気・話題のブックツリーをチェックしませんか?
テーマ募集中!
こんなテーマでブックツリーを作ってほしいというあなたのリクエストを募集中です。あなたのリクエスト通りのブックツリーが現れるかも?
テーマ応募フォーム
こんなテーマでブックツリーを作ってほしいというあなたのリクエストを入力してください。
ご応募ありがとうございました。
このテーマにおける、あなたの”6冊目の本”は?
※投稿された内容は、このページの「みんなのコメント」に掲載されます。
コメントを入力するにはログインが必要です