辻村深月『島はぼくらと』 待望の書き下ろし最新長編作品 著者インタビュー「明日は島へ行ってきます」そんな気持ちで書き上げた、高校生4人と島の物語。

肯定することで見えてきた「故郷とは何なのか」

―新刊『島はぼくらと』を書くきっかけは?

3年前にプライベートで瀬戸内海の島々を訪ね、気候、太陽、光の色まで違う、従来の自分の中にはなかった「地方」を目の当たりにしました。「地方」とか「故郷」という言葉で表されるものが必ずしも同じではないというこの時の経験が、「田舎を肯定的に書いてみたい」という思いと合致し、執筆のきっかけになりました。

―「田舎を肯定的に書く」というのはどういうことでしょう?

私の作品は地方や故郷のしがらみ、価値観を否定し、闘う視点の物語が多い気がします。でも、逆にそれを肯定する物語を書いてみたいという気持ちもずっとありました。昨年、『鍵のない夢を見る』(文藝春秋)で直木賞をいただき、地方描写を評価されたことから、もう否定より先に進まなければだめだと思ったんです。

今回、全力で肯定して書こうと決めた『島はぼくらと』では、しがらみがあるからこそ助けられることとか、敵意をむき出しにしているだけでは見えてこなかったものが見えてきました。押さずに引いたからこそ書けたものが多くあり、故郷を生きるとはどういうことなのかがより浮き彫りになった気がしています。

―そのせいか、登場人物の雰囲気も従来作品と異なりますね。

今まで書いたことがないような子を4人書いてみたいと思いました。これまでの作品の中でも、読者の皆さんそれぞれにお気に入りの登場人物を見つけてくださることが多くて、まるで 自分の友だちみたいに呼んでくれるんです。そこまで大切にしてくれるのかと思ったら、また新しい子たちを読者に向けて送り出したい気持ちになりました。この4人を好きになってもらえたら嬉しいです。

―登場人物が複数の作品にまたがる「リンク」も、辻村さんの作品の特徴ですね。

私自身、そういうシステムの作品に出会うと、「この登場人物も元気でやっているよ」というのを見せてもらえた気がして、すごく嬉しいんです。

―登場人物や物語の設定は、細かく決めた上で執筆されるのですか?

ミステリー作家にあるまじきことですが、「まぐれ連鎖」のくり返しです。何か謎みたいなものを蒔いておいてから、「これってこういうことだったんだ」と、自分自身が腑に落ちるという感じです。

 『島はぼくらと』はその連続で、書いている途中で「○○が○○したのは、○○だったからなのか」(笑)。そういうことが多い作品は、自分でも手応えのある作品なんです。この作品は自分自身も実在する島のような気持ちでのめりこみました。執筆中は「明日は島に行っています」みたいな感覚で、書いていて本当に楽しい話でした。

それぞれに合ったツールで読書を楽しむ時代

―辻村さんの著作が電子書籍化されることについてはいかがですか?

紙の書籍でも、電子書籍でも、それぞれの方に合った形でお届けできればと思っています。まずは、幅広い方に作品を読んでいただきたいという気持ちがありますので。

ただ、カバーとか、魅力的にパッケージングする姿勢は、なくしてほしくないですね。本を愛する読み手として、″ジャケ買い〟をするような楽しみは失いたくはありません。

プロフィール

辻村深月(つじむら みづき)

1980年山梨県に生まれる。小説家。2004年『冷たい校舎の時は止まる』で第31回メフィスト賞を受賞しデビュー。

著書に『名前探しの放課後』、『ゼロ、ハチ、ゼロ、ナナ。』、『ツナグ』(第 32回吉川英治文学新人賞)、『鍵のない夢を見る』(第 147回直木賞)など。

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電子書籍

島はぼくらと

直木賞受賞第一作、書き下ろし長編

島はぼくらと

辻村深月

出版社:講談社

税込価格:1,260

母と祖母の女三代で暮らす、伸びやかな少女、朱里。美人で気が強く、どこか醒めた網元の一人娘、衣花。父のロハスに巻き込まれ、東京から連れてこられた源樹。熱心な演劇部員なのに、思うように練習に出られない新。四人はフェリーで本土の高校に通う。「幻の脚本」の謎、未婚の母の涙、Iターン青年の後悔、島を背負う大人たちの覚悟、そして、自らの淡い恋心。故郷で知った大切なこと、すべてが詰まった書き下ろし長編。

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    出版社:講談社

    税込価格:578円~630

    人気作家チヨダ・コーキの小説で人が死んだ。その彼を救ったのはある少女からの128通の手紙だった。新たなる青春群像の傑作、誕生!

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  • 電子書籍鍵のない夢を見る

    鍵のない夢を見る

    出版社:文藝春秋

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    町の中に、家の中に、「犯罪」の種は眠っている…ささやかな欲望が引き寄せる奈落を鮮やかにとらえる傑作五篇。

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  • 電子書籍ぼくのメジャースプーン

    ぼくのメジャースプーン

    出版社:講談社

    税込価格:683

    学校のうさぎが何者かに殺され、親友のふみちゃんは心に傷を負った。彼女を救うため、ぼくはその罪に向き合っていく。

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  • 電子書籍ふちなしのかがみ

    ふちなしのかがみ

    出版社:角川書店

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    おまじないや占い、夢中で話した「学校の七不思議」、おそるおそる試した「コックリさん」。青春ミステリの旗手・辻村深月の新境地、懐かしくって怖い現代の怪談。

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  • 電子書籍V.T.R.

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    出版社:講談社

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    ティーの元にかかってきた一本の電話。それは三年前に別れた恋人、アールからのものだった。彼女が危険を顧みず求めたものとは--。

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    凍りのくじら

    出版社:講談社

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    高校生の理帆子は、母と二人、壊れそうな自分と家族を必死で守ってきた。ところが、彼女の前に一人の青年が現れたことで――

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  • 電子書籍ゼロ、ハチ、ゼロ、ナナ。

    ゼロ、ハチ、ゼロ、ナナ。

    出版社:講談社

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    お母さん、これはひどい。母と娘。それは切っても切れない息苦しい繋がり。母を刺し、行方をくらました幼なじみは今どこにいる?

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  • 電子書籍ツナグ

    ツナグ

    出版社:新潮社

    税込価格:1,260

    この喪失は永遠に取り戻せないのか――あなたが再会したい人は誰ですか?

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