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SF性も強く、ファンタジー性も強い

評価5 投稿者:コスモス

純粋なSF作品だけでなく、神や天使が登場する作品もあるので、人によって(特にゴリゴリのSFマニア)には作品の好き嫌いが分かれるかもしれません。
ただ一つ一つの作品は、長すぎることも短すぎることもないと思うので、内容に関わらず比較的読みやすくなっていると思います。

何しろいずれの作品も難解で頭の中をかき乱された感じになる。しかし、読み始めると結末を知りたくて読み始めてしまう。全く持って不思議な作品ばかりでした。

評価4 投稿者:ナミ

何しろいずれの作品も難解で頭の中をかき乱された感じになる。しかし、読み始めると結末を知りたくて読み始めてしまう。全く持って不思議な作品ばかりでした。なお、本書に収録されている「あなたの人生の物語」を映画化した2017-151『メッセージ(Arrival)』(c2016:アメリカ/116分、監督:ドゥニ・ビルヌーブ、出演:エイミー・アダムス、ジェレミー・レナー)を観て、どうも判然としない部分があったため原作小説を読んでみようということで手にしたもの。結論は、映画と小説を合わせてやっと少し理解できたけど、やはり難解作品だということでした。むしろ映画の方が結末は判り易くまとめていました。

1;バビロンの塔                          4点
 空間的トリックのSF(サイエンス・フィクション=空想科学小説)作品。
2;理解                               4点
 脳に重大な損傷を受けた主人公が「ホルモンK療法」を受けた結果、脳が異状活性化し途方もない能力を獲得する。
3;ゼロで割る                            4点
 数学論、具体的には「1=2」を証明してしまったことで、数学全て無意味であることを証明してしまった女性数学学者の話という形式をとっているが、私には夫婦の感情のすれ違いを描いた作品に見えてしまう。
4;あなたの人生の物語                      4点
 冒頭から「あなた」「私」という妙に錯綜した感じで始まる。「あなた」=娘は25歳で死んでいる。謎めいた流れの中で、突然地球外生命体=ヘプタポッドが出現。言語学者として呼ばれたルイーズ・バンクス=「私」は、そこで「あなた」の父である物理学者ゲーリー・ドネリーと出会う。以下省略。
5;七十二文字                           3点
 名辞、真辞、オートマトンなどなどが主役の魔法世界で、人類が繁殖能力を失って絶滅の危機に陥ってることは判ったが、どうにもその「魔法世界」の全体像が掴み切れないためすっきりと共鳴できない。
6;人類科学の進化                        4点
 超人類がその知識をDNT(デジタル・ニュートラル・トランスファー)でやり取りするようになった世界。普通の人類はそんな情報に直接アクセスすることが出来ず、一度「人類言語」に翻訳せざるを得ない。このような時代の文化とはどうなるのかといった超SF的お話。僅か4ページほどの超短編だが、実に興味深い一文でした。
7;地獄とは神の不在なり                    2点
 他の作品と全く異なる性格の作品。個人的には、聖書=キリスト教的奇跡や世界観が絶対であり現実に存在することを前提にして、何もしない(何もできない)しそもそも存在しないし「神」を愛することを正当化しようとしているだけの作品にしか見えなかったです。馬鹿らしい。
8;顔の美醜について-ドキュメンタリー           4点
 顔の美醜で人を差別する「容貌差別」を無くすために開発された「美醜失認処置(カリーアグノシア)」の長所・短所を、その賛成派と反対派との主張を交互に展開することで物語は進む。たったこれだけの問題を私などとても思いつかない様々な側面から掘り下げていくその洞察力・表現力に圧倒されました。

イーガンを初めて読んだときと同じ興奮!!!少々難解じゃないと、やっぱSFは楽しめないのだ。

評価5 投稿者:山 

 とはいえ、この本はSFなのだろうか!? 読者は皆そう思うはず。そもそもSFの定義付けが「SFとして発表された」とか「初出がSF誌だから」とか「SF界の賞を受賞している」だとかくらいの形式的な場合も多いため、グレッグイーガンやこの本の著者テッドチャンなんかにはカテゴライズなんて無意味なのかもしれない(当然だけど、これは純文学とエンタテインメントなんかの違いとも同じで、科学と哲学の領域の異種混合なんかにも通じるし、ビジネスのインテグレーションなどとも相違しないはず)。
 しかしやはりSFなのである。というのは「SFを書く」という初期衝動がなければ絶対に書かれなかったであろう自由度や世界展望そして難解さがあり、読者の側も「これはSFなのだ」という前提のもとで読んでいるからこそ理解でき、かつ楽しめる小説世界なのだ。むろん僕だってイーガンと並ぶSF界の新精鋭という評判がなけば読まなかった本であることは確か。

 短編小説というのはアイデア一発勝負であったり、プロットそのものの独創性、簡潔性が勝負となるわけだけど、くどくどタラタラと冗漫な長編SFが多い中、本書の短編としての割り切りというか潔さというのは、難解さに隠れてしまっているけど、ほんと気持ちいいものがある。
 この混沌とした現代というか世界を、どう解き明かすか!? この命題はSFだけでなく小説という文芸に架せられた大命題であり、テッドチャンは例えば冒頭『バビロンの塔』(あの地上から天空まで突き抜ける「バベルの塔」のことですね)では“宗教”というツールを用いてバッサリ切り取っている。すなわち「世界とは『上』に行こうとする人間達の幻想で成立している」と。
 「上」というのは「下」のことでもあり、中庸にとどまって分相応に「中」ほどで生きているのがフツ〜の人間。夢とか希望とか、さらに日常的な諍いや戦争なんて揉め事から逃れられない僕たちは、ある一定の役割が与えられており、それは「上」に行っても「中」ほどにいても「下」で嘆いていても同様であり、特権的な役割を与えられて(あるいは夢が叶って)「上」に行って戦ったり活躍したりできたとしても、それは「下」に行くための戦いなのだ、そこではまた「上」を目指す人々の欲望とか闘争心が渦巻いている。

 科学や数学、哲学などの引用というか構成要素がストーリーを難解に見せかけているけど、テーマやプロットは単純明快というか、いや単純ではないんだけど着地点は明快そのもの。読むのに手こずる部分もあるけど、そもそも「難解さ」を楽しむのがこの手のSFというか小説の醍醐味なわけで、頭の中に異物を突っ込まれて掻き回されているような快感が充分に味わえる(もちろん判りやすい話が好きな人には勧められない本だけど)。
 イーガンのような叙情性こそないが、収録作8本はどれもこれもフツ〜の小説では絶対に楽しめない要素がふんだんに詰まっている。それだけでも凄いと思う。つまり、こんな短編集は世界にひとつしかないということ。似たような本は僕の知る限りどこにもない。

ちんぷんかん魔術だぞ。チャン。

評価5 投稿者:SlowBird

 この短編集は、1990年からの12年間でテッド・チャンが発表した全作品8作を集めたもの。ほとんどの作品が各種の賞を受賞したり、候補になったりした傑作揃い。各作品のアイデアは、突飛なものから、ほんの明日にでも実現するかもしれないようなものまで多様。個人的には、この本が2003年のベスト。
 だいたい文学っていうのは、一人の人間の経験を通して新しい世界認識の切り口を提示するもの、という見方もできると思う。これがチャンの場合、新しい認識をほんとうに確定させてしまった人の経験とその内面が中心になる。
 特に気に入った作品は「72文字」。設定のアイデアを書いても普通はネタバレということにはならないと思うけど、チャンの場合は日常的な風景の中から少しずつ奇妙な設定が立ち現われてくる過程に一番の楽しみがあると言ってもいいぐらいだと思うので、書かないでおきます。えーっと、当世風に言えばナノテクってことになるのだろうけど…(うずうず)。ただ登場する職人の親方が、短い出番ながら非常にいい味を出しており、特に技術系の人間なら激しく共感できるんじゃないだろうか。
 らしさが典型的に現われているのは「ゼロで割る」だろう。数学(数論)に基づく世界認識の話で、読んでいる最中は、なにかすごくヤバイものを読んでしまったような感覚にとらわれた。ディティールや主人公の内面の描写が緻密で的確なため、これは架空の話なんだって後で自分に言い聞かせなくてはならなかった。
 評判の高い表題作や「72文字」のように、言語の性質を特異な形で利用するところが特徴的かもしれない。中国系アメリカ人であることや、本業としてフリーのテクニカルライターをしているということなどで、言語に対して独特の視点と造詣があるのだろうか。
 どの作品でも、科学にしろ宗教にしろ難解な説明に走らず、登場人物の受け取った印象と、変わっていく人生を描いている。新しい世界認識を人類というレベルで語ることもなく、個人の問題にとどめていても、それ以上は言わないでもワカルって気にさせる構成や表現も魔術的なのだけど、結局は科学による新しい未来なんてものを信じていないのかもしれない。たった8作の短編で作家を語るのも無理があるけど、その意味で実はすこぶる現代的な作家と言えそうだ。
 パチパチピチンコ。

認識の臨界点をつきぬけた哲学的感動

評価4 投稿者:オリオン

 SFはめったに読まない。でも、読めば必ず、傑作にめぐりあう。ここ数年ではグレッグ・ベアの長編とグレッグ・イーガンの短編にまいってしまった。そのベアの絶賛の言葉「チャンを読まずしてSFを語るなかれ」が、本書の腰巻に印刷されている。山岸真の「解説」には「形而上学の領域へ科学が手をのばし、人間の問題をハードSFとしてあつかうことを可能にした」というチャンのイーガン評が紹介されている。というわけで、読む前から私はすっかりチャンに魅了されていた。実際、表題作「あなたの人生の物語」に出てくる非線形書法体系や同時的意識のアイデア、「七十二文字」に出てくる真の名辞による単為生殖のアイデアなどは、途方もない起爆力をもっていた。なによりも、チャンの短編には小説ならではの感動がある。イーガンの作品がたたえる切ないほどの感動とは趣を異にするが、本書に収められた作品群がもたらす認識の臨界点をつきぬけた(哲学的)感動の質は得難いものだ。

地球を訪れたエイリアンとのコンタクトを担当した言語学者ルイーズは、まったく異なる言語を理解するにつれ、驚くべき運命にまきこまれていく…ネビュラ賞を受賞した感動の表題作をはじめ、天使の降臨とともにもたらされる災厄と奇跡を描くヒューゴー賞受賞作「地獄とは神の不在なり」、天まで届く塔を建設する驚天動地の物語--ネビュラ賞を受賞したデビュー作「バビロンの塔」ほか、本邦初訳を含む八篇を収録する傑作集。

アンドロイドは電気羊の夢を見るか?

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本格的

評価5 投稿者:しんぴん

SFだけど、人間のありかたを考えさせられる、良い本。面白い。

生命は尊い

評価3 投稿者:まゆげ

言わずと知れた1982年のSF映画「ブレードランナー」の原作。

太陽系からはるかに離れた異星系空間で過酷な労働に従事していたレプリカント(人間より優れた肉体を持つアンドロイド)は、その限られた寿命(4年?)を延ばしたく彼らを製造した地球にやってくる。

違法に地球に戻ったレプリカント達は、人間と全く見分けのつかない姿をしているため地球に来た目的を果たすために社会に潜り込む。

彼らを捕獲又は抹殺するために警察機構が雇ったハンター(賞金稼ぎ デッカードら)は、人間とレプリカントを区別するテスト(フォークト・ガンプフ法)を怪しい人物に行い、レプリカントを探し出し、追い詰めていく。


侵入レプリカントの首領は、厳しいセキュリティを乗り越えて、彼らの創造主(タイレル社の社長)に寿命の延長を依頼するが、遺伝子工学上の問題で願いが叶わないことを知る。

生き延びようとするレプリカントとその抹殺を使命とする闘いは熾烈だがその闘いの姿を見ていると、レプリカントの方が、より人間らしい生きざま・感情(生への欲求、同胞愛、死の苦しみ)を見せる。

人間もレプリカントも同じ生命を与えられた存在であり、生きることは何か・生命とは何かを考えてしまう。

SFの代名詞

評価3 投稿者:すの

 「○○は××の夢を見るか?」なんて、いろいろな場所でパロディにされている名作といえる。
 外国語で書かれた作品は苦手だ。言葉も文化も違うのに、日本語で表現するからどうしても不自然なのである。そういう意味で、日本の作家さんの方が読んでいて楽しいのだが、これはやはり名作。

 ストーリーは有名だと思うのでここでは特に紹介しないで、最近この作品で思い出したことを書かせていただこうかと思う。

 現在の科学&医学は鬱だとか引きこもるとか性格の延長線を、脳の情報伝達物質が足りないとか多いとかで一生懸命説明するわけで、抗鬱剤なんて薬もある。遺伝子的に、なんて話になったら鬱を治すウィルスなんてのも出てくるかもしれない。

 そしてこの小説の最初では、感情をコントロールする情調オルガンという機械がでてくる。そして、主人公の妻は、自ら自虐的抑鬱をセットする。絶望しないことが不自然だからといって彼女はわざわざそのチャンネルを探し当てたのだ。

 なんだか、近いうちに似たようなことをしそうだと不安になることがある。


 個性と病気の境界線、生命と非生命の境界線、有りとあらゆる境界がどんどん曖昧になって、人は不安になるのかもしれない

 そういった要素をすべて含んだ作品である。

原作の方が面白い

評価5 投稿者:ポーリィーン

 鬼才リドリー・スコットが映画化! などと騒がれたので見てみたが、いったい何がいいのかさっぱり判らなかった。だが、本書の奇妙な題に惹かれて原作を読んでみると…めちゃめちゃ面白い!! それに未来の話なのに映像が頭にスンナリと浮かぶ。そして映画の内容もやっと判った(もう一度見たいとは思わなかったけど)。

オリジナルの実力

評価4 投稿者:すまいる

 有名SF映画『ブレードランナー』の原作小説。ご覧の通りの魅力的なタイトルの作品で、映画版でのタイトル変更は必要なかったのでは? とすら思えてきます。

 放射能に蝕まれた第三次世界大戦後の地球では、生の生物(なまのいきもの)がとても貴重で、動物を飼ったりするのはステータスにすらなってます。たとえばアンドロイドハンターの主人公なども、本物の羊を飼うのを夢見つつ、電気じかけの羊で我慢してたりするわけです。まあ、そこいらじゅうアイボだらけの世の中って感じでしょうか(笑)。

 主人公は脱走したアンドロイドを捕まえるというか、狩るのを生業にしているのですが、彼は、アンドロイドたち、そして、それをとりまく人間たちと関わっていく過程で苦悩します。例えば「もしかして、おれっちもアンドロイドなのかも?」なんて、思いはじめたりもするわけですね(笑)。

 「アンドロイドである」とはどうゆうことなのか? 「人間である」とはどうゆうことなのか? 映画での疾走感とは一味違う、哲学的な思いにふけることが出来る一作です。映画版をすでに観ているかたでも、充分に楽しめる一冊です。

第三次大戦後、放射能灰に汚された地球では生きた動物を持っているかどうかが地位の象徴になっていた。人工の電気羊しか飼えないリックは、かくて火星から逃亡した〈奴隷〉アンドロイド八人の首にかかった賞金を狙って、決死の狩りを始めた! 現代SFの旗手が斬新な着想と華麗な筆致で描く悪夢の未来世界!

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