honto+インタビュー vol.8 松岡圭祐

注目作家に最新作についてお話しいただく『honto+インタビュー』。
今回は、最新シリーズ『探偵の鑑定』刊行を記念して松岡圭祐さんが登場。

ふたりの主人公に出会いのきっかけを与えると、あとはキャラクターが動いてくれました

あらゆるものごとの真贋を見抜く凜田莉子が、鮮やかに事件を解決する『万能鑑定士Q』シリーズ。探偵事務所の「対探偵課」なる部署に属する紗崎玲奈が、悪徳探偵を潰すために暗躍する『探偵の探偵』シリーズ。
いずれも松岡圭祐(まつおか・けいすけ)さんのミステリー小説のなかで高い人気を誇る作品群だ。
「あの主人公同士が、同じ舞台で活躍する話があったら、ぜひ読みたいのに!」
ファンなら誰しも、そんな思いを抱いたことがあるはず。読者の願望に、なんと作者が応えてくれた。莉子と玲奈が共闘する松岡さんの新作は、その名も『探偵の鑑定』と相成った。

――今作は、読者の夢を叶えるために書いてくださった?

両作品がコラボレーションすれば面白そう。そんな声があるのは承知していましたし、作者としてそれはよく理解できます。小説は文字だけでできているので、同じページに莉子と玲奈の名前を書きさえすれば、いつでも簡単に共演させられるのはたしか。でも、それでは単なるイベントごとに過ぎない。ストーリーにしろテーマにしても、ふたりが揃うことに大きな意味があり、納得のいくものになるならば、書いてみようと考えたのです。

――執筆を決意させた、莉子と玲奈が顔を揃えることの「意味」とは?

『探偵の探偵』の玲奈と『万能鑑定士Q』の莉子は対極で、ちょうど童話『北風と太陽』の関係です。玲奈は相手と真っ向からぶつかり、力業でねじ伏せる。いわば北風のような存在といえます。莉子のほうは、自発的に相手を改心させる優しさを持つ。つまりは太陽ですね。それぞれのシリーズは、北風と太陽の話だったわけです。そうして書き継いでいくと、どちらのシリーズも、最終的なテーマがおのずと見えてくる。北風は、太陽のような存在を受け入れられるようになるかどうか。太陽は、北風が吹く状況でも太陽であり続けられるのか。そんな試練と直面します。最後はそこを解決しなければ終われない。そう考えると北風の玲奈と太陽の莉子、両者をいっしょにして影響を与え合えば、テーマがうまく完結し得るのではと考えました。

――確固とした作品世界を持つふたつの小説を融合させるのは、困難も多そうですが?

どちらも長いシリーズなので、すでにさまざまなストーリーが展開され、人物のキャラクターはしっかりと確立しています。ふたりの主人公に出会いのきっかけと舞台設定を与えれば、あとはキャラクターが動いていってくれました。

――たしかにこれまでの作品と同様に、今作もストーリーが生き生きとして、キャラクターも伸び伸びと動いている印象です。構想は事前に細部まで決まっているものなのですか。

おそらく多くのミステリー作家もそうでしょうけれど、ゴールは最初に設定しておいて、そこから逆算していって話をつくります。同時に、キャラクターの動きは時系列で進行させていく。うしろと前、両方からの折り合いで物語は生成されていきますね。細部まですべて設計図のようなものをつくってしまうと、ストーリーがうまく転がっていかないものです。とはいえ、文庫にして100ページ分くらいのプロットはつくってから書いていますので、執筆中はあまり迷うことなく進みますよ。いつも締め切り前に完成します。編集者や出版社を待たせることが一切ないのは、ちょっとした自慢ですね(笑)。

――玲奈は探偵としての知識を活用して戦い、莉子は鑑定士としての知見を駆使して問題の解決に臨む。広範かつ最新の「知」が作品内には満載です。作者としてはいったいどのように膨大な情報を扱っているのでしょう?

玲奈や莉子は状況ごと瞬時に適切な知識を出すのですごく頭がいいように見えますが、こちらは手元に資料やPCがあります。調べながら書いているだけです。正しく最新の情報を用いることは、作品の信頼性とリアリティにかかわりますから、絶えずアンテナを張っています。また、情報の出し方も大切ですね。知識がいくらたくさん羅列されていても、それだけでは文章が頭に入ってこない。人が興味深く思えるものごとを取捨選択し、うまくストーリーに絡めていく。そうして初めて、単なる情報が“文芸”へと昇華するのだと思います。

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著者プロフィール

松岡圭祐(まつおか・けいすけ)

1968年12月3日生まれ。愛知県出身。
小説デビュー作『催眠』がミリオンセラーとなり、当時小学館文庫の歴代1位の売上を誇る。
大藪春彦賞候補作『千里眼』シリーズは628万部のヒットになった。
角川文庫『万能鑑定士Qの事件簿』シリーズは初年度の売上のみで200万部に達し、ブックウォーカー大賞2014文芸賞を受賞した。
東映『千里眼』の脚本とキャスティング、東映ビデオ『千里眼キネシクス・アイ』の監督を担当した。
他に小説作品は『探偵の探偵』『ミッキーマウスの憂鬱』『特等添乗員αの難事件』『水鏡推理』『蒼い瞳とニュアージュ』など。
身長180cm、体重71kg。趣味はドライブとダイビング。

主な著作

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