僕の小説で働く人たちを元気にしたい 著者インタビュー 池井戸潤さん ドラマ「半沢直樹」シリーズ最新作!! ロスジェネの逆襲

読んでワクワクする読書体験を味わって欲しい。直木賞作家の池井戸潤さんに、小説で描く世界についてお聞きしました。

新作『ロスジェネの逆襲』はどのような人に向けて書いたのでしょうか?

 『ロスジェネの逆襲』は、バブル時代に都市銀行に入行した主人公・半沢直樹が、さまざまな圧力、逆境を跳ね返す「オレバブ」シリーズの最新作です。銀行小説というと銀行を書くことを目的にしたものが多いのですが、これは銀行を舞台に使っただけのエンターテインメント小説なんです。就職誌などの取材を受けていると、30代半ば前後のロストジェネレーション世代の人たちが、バブル世代に対してすごく被害者意識が強いのが分かる。働き方にも悩んでいたりしてね。そこで、そういう人たちが元気になれるようなものを、と思って書いた小説です。

小説の中にメッセージを込めているのですか?

 職業作家が自分の主義主張をダイレクトに書くようなことはしない方がいいと思う。それも文学の役割かもしれませんが、僕は文学を書いているつもりはまったくなくて、あくまでもエンターテインメント小説なんです。読んで「ああ面白かったな」と言ってもらうことが目的。説教臭いことは一切書かない。プロットも大雑把にしか組みません。プロットが先にあると、プロット通りに動かそうとして、その登場人物なら絶対言わないようなことを言わせたりする。これではリアリティが一気になくなります。読者はすごく敏感で頭が良いので、作者が意図したあざとさなんかはすぐ見抜かれるんです。例えば『空飛ぶタイヤ』は書いていて自分でも結末がまったく分からなかった。小説の終わりは小説が決めてくれるものなのですよ、大体ね。
 小説のリアリティとは、こういう設定の人物がいて、こういう状況になった時に、こういう言動をするかどうか。それだけです。

小説のテーマはどのように決めているのでしょうか?

 エンターテインメントは面白くなきゃいけない。ワクワクドキドキの単純な面白さですね。小説は、人の内面を書くものです。例えば爆破シーンなんて、小説でどれだけ詳細に描写しても、映像の方がはるかに効果的ですよね。だから爆破を起こす人間の心情を書くのが小説の目的で、そこから先は不要なんです。
 職業作家には必要なテーマというのがあります。エンタメは一つの発明ごっこだから、これまでの映画や小説にもないような新しさが必要です。そして自分が書く意味があるかどうか。このテーマで、こういうキャラだったら多分僕が日本で一番うまい、だから書こうと。それから豊穣な物語であるということ。物語性ですね。いまは全体的に小説のスケールが小さいから、もっと大風呂敷を広げて大嘘をつくような小説がいいと思う。この「新しさ」「自分が書く意味」「物語性」の3つの要素がすべて満たされるものをテーマとして選んでいます。
 子どもの頃に読んだ小説って本当に面白い。ああいうワクワクするような読書体験って、大人になるとどんどん減っていくんですが、僕が書く小説でそんな読書体験を味わってもらえたら最高ですね。

電子書籍についてはどうお考えですか?

 いまは楽天やらアマゾンやら混沌としていて、5年後に何が生き残るのか分からない。一つにOKを出しても、ダメになってしまったり、ほかでうまくいかない場合も考えられます。勝ち組負け組が分からない状況ではコンテンツを出す側としては非常にためらってしまう。出版契約でも、電子書籍に関する項目はいまは削除してもらっています。

最後にメッセージをお願いします

 人生というのは基本的に勝負の積み重ねなんですが、努力している人が全敗することはないですよ。だから1回の失敗でくじけないで、努力すべきときはしっかり努力をする。諦めないこと。それがすごく大事だと思います。

著者プロフィール

池井戸潤さんの写真

池井戸潤 (いけいど じゅん)

1963年生まれ。慶応義塾大学卒。1998年『果つる底なき』で第44回江戸川乱歩賞を受賞。2010年『鉄の骨』で第31回吉川英治文学新人賞を受賞。2011年『下町ロケット』で第145回直木賞受賞。他の代表作に『空飛ぶタイヤ』『ルーズヴェルト・ゲーム』や、最新刊『ロスジェネの逆襲』のシリーズ前作となる『オレたちバブル入行組』『オレたち花のバブル組』など。

最新タイトルはこちら

ロスジェネの逆襲

ロスジェネの逆襲

池井戸潤(著)

出版社:ダイヤモンド社

税込価格:書籍:1,575円/電子:1,260

子会社に飛ばされたバブル世代の主人公・半沢直樹。親会社から受けた圧力や嫌がらせは知恵と勇気で倍返し。
世代を超えた男たちの戦いが、今始まる!

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著作紹介

  • オレたち花のバブル組

    オレたち花のバブル組

    池井戸潤(著)

    出版社:文藝春秋

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  • オレたちバブル入行組

    オレたちバブル入行組

    池井戸潤(著)

    出版社:文藝春秋

    税込価格:690

    大手銀行にバブル期に入行して、今は大阪西支店融資課長の半沢。夢多かりし新人時代は去り、気がつけば辛い中間管理職。そんな世代へエールを送る痛快企業小説。

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  • シャイロックの子供たち

    シャイロックの子供たち

    池井戸潤(著)

    出版社:文藝春秋

    税込価格 書籍:660

    ある町の銀行の支店で起こった、現金紛失事件。銀行という組織を通して、普通に働き、普通に暮すことの幸福と困難さに迫った傑作群像劇。

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  • 下町ロケット

    下町ロケット

    池井戸潤(著)

    出版社:小学館

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    佃航平は宇宙工学研究の道を諦め実家の町工場を継いでいたが、経営はまさに崖っプチ。だが世界最先端の技術で特許出願をしていた佃製作所に、ロケット開発という思わぬ展開が…。

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  • ルーズヴェルト・ゲーム

    ルーズヴェルト・ゲーム

    池井戸潤(著)

    出版社:講談社

    税込価格:1,680

    監督に見捨てられ、主力選手をも失ったかつての名門・青島製作所野球部。廃部か存続か。繁栄か衰退か。人生を賭した男達の戦いが始まる…。

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  • 空飛ぶタイヤ 上

    空飛ぶタイヤ 上

    池井戸潤(著)

    出版社:講談社

    税込価格:680

    真実はひとつだけ――大企業の横暴は絶対に許さない。リコール隠しを巡る熱き人間ドラマを描いた社会派小説。

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  • 空飛ぶタイヤ 下

    空飛ぶタイヤ 下

    池井戸潤(著)

    出版社:講談社

    税込価格:680

    父から受け継いだ会社、社員、そして家族を守るために命を賭けて闘う。けっして泣き寝入りはしない――。

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  • 鉄の骨

    鉄の骨

    池井戸潤(著)

    出版社:講談社

    税込価格:880

    中堅ゼネコン・一松組の若手、富島平太が異動した先は"談合課"と揶揄される、大口公共事業の受注部署だった。組織に殉じるか、正義を信じるか。白熱の人間ドラマ。

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    出版社:集英社

    税込価格:書籍:1,700円/電子:1,300

    物語の面白さもさることながら、装幀もすばらしい。この本を見て、同じデザイナー(岩瀬聡さん)に『ロスジェネの逆襲』の装幀をお願いしました。

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