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日本で報道されない事実
2016/07/10 08:17
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投稿者:comic artist - この投稿者のレビュー一覧を見る
国家に不利になることを追及し記事にするジャーナリスト達をいとも簡単に暗殺してしまうロシアという国、そしてプーチンに恐ろしさを覚えると同時に、人間の命を何とも思わない彼らに憤りを感じる。現代のロシアも又共産主義時代とさほど変わっていないという事を知り、「KGBに気をつけて!」と大学時代にロシアに帰国する留学生の友人に言っていたスペイン人の留学生の言葉が更に真実味を増してまさに昨日のように鮮明に私の脳裏に蘇ってきた。悪がいる反面、善の人々も確かに存在しており、かつてお目にかかったことのあるゴルバチョフ元大統領が、彼らジャーナリスト達を支援していることも知り、やはり彼は善の心の持ち主だと改めて知った。とにかく興味深い内容。一読する価値あり。
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アンナ・ポリトコフスカヤ暗殺後のロシア・ジャーナリズムの現状。ノーヴァヤ・ガゼータの状況を中心に、どんどん政権寄りになってゆくロシア・メディアの現状がレポートされてる。これを読む限り、ノーヴァヤ・ガゼータが最後の牙城に見えてしまうんだが、、、ロシア・ジャーナリストにとって春の訪れは遠そうだ。取材対象が狭いように感じるけれど、現在のロシア・ジャーナリズムの状況を知りたければ読んで損は無いと思う。
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ソ連が崩壊し、ロシアは「開かれた国」になるはずだった。だが――。政権はメディアを牛耳り、たてつく者は次々と不審な死を遂げる。白昼に繰り返される射殺、ハンマーでの撲殺、そして毒殺。犠牲者は権力批判の最前線にたつ記者だった。屍を乗り越え、不偏不党の姿勢を貫こうとする新聞社に密着した衝撃のルポルタージュ。
プロローグ 2つの襲撃
第1章 悲劇の新聞
第2章 奇妙なチェチェン人
第3章 告発の代償
第4章 殉教者たち
第5章 夢想家たちの新聞経営
第6章 犯罪専門記者の憂鬱
第7章 断末魔のテレビジャーナリズム
第8章 学校占拠事件の地獄絵図
第9章 誰が子供たちを殺したか
エピローグ 恐怖を超えて
1992年創立の同紙の発行部数は、わずか27万部。しかし日本の一地方新聞程度にすぎない同社がその短い歴史の中で支払った命は、六名。権力におもねらない報道に対して政権が取る対応に東西はないことは Wikileaks を巡るニュースを見るだけで伝わってくるが、それでも「西側」においてジャーナリストが支払うのは「せいぜい」職であったり身柄であったりに留まる。「干される」という奴だ。
しかし、ロシアでは本当に殺されるのだ。
彼らが何をどのように報じ、そしてどのように死んでいったかは本書で確認していただくしかない。それを要約したり再構成したりするだけの技量も覚悟も私にはないのだから。
だけど、知ってもいるのである。
「崔杼弑君」の一言が自らの命よりも重い人が、古今東西必ず出る事を。そしてそういう人々が歴史を紡いできたのだということを。
本書は単純な「おそロシア」な話でも、「ジャーナリスト魂」でもない。ライフワークだけではなくライスワークのこともきちんと書いてある。命さえ賭ければ書き続けられるというほど、ジャーナリズムは単純な世界ではないのは、「西側」とて同じこと。この点に関しては「西側」の方が問題は深刻であるかも知れない
траха Нет, No Fearという一言は、そういったものを全てひっくるめた上のものである。
「編集長のムラートフは『ノーバヤ』を刊行する時、政治の記事は紙面の一番最後でいいと言っていたのです。彼は、ロシアの普通の人々の喜びや悲しみを生き生きと伝えるような記事を中心に据えたかった。しかし残念ながら、政治的な大事件が次々に起こる今のロシアでは、経済に大きく紙面を割かざるを得ない。でも、ムラートフはいつか、政治のニュースが小さな扱いですむ日が来ることを待ち望んでいます。」
日本がまさにそのようであるのは、努力よりは幸運の賜物ではあるのだろう。だからこそ、努力が必要な国と人々のことに思いをいたす必要があるはずだ。一旦それを失ったら、今度血を流す羽目になるのは我々なのだから。
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ノンフィクションのあじわい。
これを読んで、プーチンのやりかたは間違っている!プンプン!と思ってしまうのが、まぁ大多数だとは思うけど、プーチンの気持ちになって読んでみるのも一興かと。
俺がプーチンだったらそりゃ殺すわな。ジャーナリスト。
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「『プラウダ(真実)』に真実なく、『イズベスチア(報道)』に
報道なし」
ソ連時代の有名なアクネドートである。国の名前はソ連からロシアへ
と変わったものの、言論の自由に関してはロシアはソ連時代を大いに
引き摺っている。
現在のロシアで政権に批判的なメディアが次々に潰されていったのは、
本書を読むまでもなくこれまで出版されたロシア関係の本で書き尽く
されている。
国内の政治体制についても同様だ。よいどれエリツィンが何もかも
ダメにしたロシアを引き継いだのは、我が愛するワロージャこと
ウラジーミル・プーチンである。
彼は国民が熱望した「強いロシア」を体現した。その政治手法のなか
では、オリガルヒと呼ばれる新興財閥に対する強引な弾圧もあった。
しかし、その手法を一方的に非難するだけで済むのだろうか。
あの強引さがなければ、ロシアはとっくに国として崩壊していたのでは
ないか。
反体制としてチェチェンの報道を続けたアンナ・ポリトコフスカヤが
暗殺されたはあまりにも有名だが、彼女以外にも政権に立て付いた
ジャーナリストが何人も命を落としている。
その黒幕は一体誰なのか。勿論、ロシアの政治体制にあることは
間違いない。
本書はロシア唯一と言っていいリベラルな新聞社の受けた権力からの
圧力や暴力を追っているのだが、記述があまりにも感傷的に過ぎる。
どんな圧力にも屈せず、事実を伝えようとするジャーナリストたちの
闘いは確かに注目すべきものがあるだけに少々残念だ。
既にアンナ・ポリトコフスカヤの著作を読んでいれば、本書は読む
必要もないかも。
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2011年2冊目。
285頁。
地元の図書館で借りた。
ロシアは、はたして民主国家なのか。メディアの状況を見れば、答えは「否」だろう。民主主義の根幹である報道の自由が事実上存在しないからだ。
たとえばテレビ局。プーチン政権は民放のオーナーを次々と逮捕。釈放の条件として会社の株を手放させ、それを国が買い取るという手法で、すべての局を政権の管理下に置いた。政権から送り込まれた経営者が番組に目を光らせ、ニュースは大本営発表と化した。
そのような状況下で孤軍奮闘、鋭い権力批判をつづけている新聞社がある。その名は「ノーバヤガゼータ(新しい新聞)」。
だが、今のロシアでは最も危険で難しい「不偏不党」「中正公立」を貫くがゆえに、これまで数々のスタッフが犠牲となってきた。白昼街中で射殺された者、放射性物資を密かに飲まされ衰弱の果てに命を落とした者、自宅前で撲殺された者......。
権力と対峙する記者たちの目を通して、「虚構の民主国家」の実態をえぐる、戦慄のルポルタージュ。
(Amazon内容紹介)
「おそロシア」なんてジョークがネット上では遣われているけど、本当に冗談ではすまない程にロシアという国は恐ろしく、また闇に包まれた国であると感じた。
政府に楯つけば脅され、傷付けられ、そして最悪の場合は殺される。言論の自由など名ばかりで、あるのは秘密警察や諜報機関の眼に怯える日々。そんな現実が、どうやら今のロシアにはあるらしい。そしてそんな現実に、多くのロシア国民は気付いていないか、見て見ぬふりをしているようだ。
そんなロシアと比べたら、日本は平和だと言いたくなるが、日本にも少なからず報道上の規制はあるし、タブーもある。報道されていないだけで、我々の知らない間に消された事実もたくさんあるだろう。
ロシアの抱える問題に限らず、ジャーナリズムや報道、政治と国家など、本書は様々な問題を考えるきっかけになった。
p.21-22
「結局、この国では、軍服を着た人間や権力者はやりたい放題です。何をしても責任を問われない。反対にジャーナリストは、国家からまったく守られていない存在なのです」
p.34
「エリツィンを民主主義者だと信じたのはどこのどいつだったのだ」と自己嫌悪に陥るというのが現在のロシア人の大方の心理である。(中略)
「レベルの低い選択だった。2つの悪のうち、よりましな悪の方を選んだにすぎない」
p.87
「残念ながら、人が消えてしまうことはチェチェンでは普通に起きています。とりわけ、チェチェンの真実を外の世界に伝えようとする者には、必ず報復が待ち受けています」
p.120
1993年の「ノーバヤガゼータ」の創刊以来、17年の間に、2人の記者が殺害され、同じく記者1人が不審死を遂げ、契約記者2人、さらに顧問弁護士までが殺されてしまった。歴史の浅い小規模のメディアで起きたこれだけの犠牲は、世界的に見ても例がないだろう。
p.170-171
「プーチン政権は、(中略)“制御可能な社会““制御可能な言論の自由“制御可能な自由経済”を目指したのです」
p.280
「ノーバヤガゼータ」の今後には、これまで以上の困難が待ち受けているかもしれない。しかし、この小さな新聞が閉鎖に追い込まれる日が来るとしたら、それは、ロシアで今、かろうじて灯っている言論の自由の火が消える時である。
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怖すぎる。
特定の、1名のジャーナリストの行方を追うのかと思っていたら、一体何人死ぬのか。
これが独裁国家。その情報統制。
まだ、シナよりマシなのかとは思わなくもないが。
最後の、ベスランの立て籠もり事件の顛末に至っては、それなりの文明国とは信じられない。
これが世界の現実。
いや、その上澄みなんだろうと背中が寒くなる。
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ドストエフスキーを読み、ロシアという国が気になって手にした本。思っていた以上に恐ろしい国だ。
当局の力で次々と不都合を闇に葬り去る。白昼堂々と射殺することも厭わない。TV局や新聞社は当局の圧力に屈し、当局に都合の良いことしか報道しない。
それでも真実を暴こうとするジャーナリストも少数ながらいる。本書は身の危険を冒してまで言論の自由を体現する彼ら/彼女らの奮闘記。
人権の世紀と言われている21世紀において、国際的にも責任ある立場にある大国ロシアで、国がこんな蛮行を繰り返しているなんて。ベスラン学校占拠事件の真相を暴く第8章なんて、読むに堪えない。
今度は日本についても勉強してみよう。でも、やっぱし知らん方がいい事は、知らん方がいいかな。悩ましい。
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「ノーバヤガゼータ」という新聞を中心に,ロシアにおける報道の自由の危機を紹介。体制批判を厭わないこの新聞では記者をはじめ関係者6名が暗殺されている。
著者の福田ますみは,モンスターペアレンツに事実無根の体罰や差別発言を糾弾され,実名報道,裁判沙汰になった小学校教師を描いた『でっちあげ』も良い本だった。
ロシアでの記者暗殺といえば,2006年10月,自宅アパートのエレベータで白昼射殺された女性記者,ポリトコフスカヤが良く知られている。彼女は「ノーバヤガゼータ」でチェチェン紛争の取材に熱心に取り組み,ロシア軍を痛烈に批判する記事を書いていた。
要するにロシアには報道の自由はない。テレビは特に顕著で,政権批判は難しい。比較的影響力の少ない新聞は,多少の自由があるが,それでもプーチンのスキャンダルなどタブーはある。何よりも,何十人ものジャーナリストが不審死を遂げていることが,相当な圧力になっているだろう。
本書では,2006年9月の北オセチアのベスラン学校占拠事件を二章にわたって取上げている。取材は困難で,当局は人質の数を過少発表するなど事実を隠蔽。300人程度と報道されたが実際は千人以上いて,突入により400人以上が犠牲になった。
そんな状況の中,「ノーバヤガゼータ」をはじめ,政権を批判し,真実を伝えていこうというジャーナリストがいるというのはすごい。ロシアの外からも,そういう人たちを支援する動きもある。ロシアも次第に変わっていくのかも知れない。
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社会主義国から一転、開かれた国家に生まれ変わったように見えているが、そこにあるのは「制御可能な」という形容詞のつく統制社会であり、暗黒な社会だと思った。
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ノーバヤガゼータは2015年に資金難で休刊してしまったらしい。(今はインターネットメディアに移行)
本書が刊行されたのが2010年暮れなので、その後どういった経過を辿ったのか、新たに犠牲者は出なかったのかなどが気になる。
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日本人がノーバヤガゼータのことをここまで取材したのはすごい。アンナポリトコフスカヤは年を取るごとに心の美しさが外面にも現れ、笑うと女性らしく不正には涙を流し、どんな男より勇敢だった…。テレビ報道出身の他の記者は表現が比較的自由な新聞に移ったが、テレビのとらえる人々の一瞬の表情が恋しい様子。一線で働いてきた人は他の人が気づかないことに魅力を見いだしてる。ノーバヤガゼータはゴルバチョフとオリガルヒの1人とがかなり支えていた、そういうことも色々わかって面白かった。
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公権力の厳しい報道規制と闘うロシアのリベラル紙「ノヴァヤ・ガゼータ」のジャーナリストたちを追ったルポルタージュ.ソ連崩壊以降,エリツィン政権下で勃興した,新興財閥「オリガルヒ」の専横と堕落,そしてプーチン政権以降,その反動として始まった中央集権化と統制の中で,マスコミの多くが政府系企業の傘下に入り,結果として旧ソ連時代のような,国家によるマスコミの独占状態が再び戻ってきている様子が伺える.プーチンの下で権勢を振るう「シロヴィキ」の存在,更にはマフィアなどの犯罪組織との結託から,公安警察や行政機関が公然と行う癒着・汚職・隠蔽も克明に描かれており,ノヴァヤ・ガゼータで活動していた,体制に批判的なジャーナリストや関係者も,公権力やその手先とみられる者によって殺害され,捜査も碌に行われないなど,今日でもなお民主国家・法治国家とは程遠いロシア国内の実態が分かる.また,混迷しているコーカサス地方の政治問題,とりわけチェチェンを巡る問題についても述べられている.アメリカがテロとの戦いを国際世論の主軸に据えていったことが,皮肉にもロシア国内及び旧ソ連圏の反体制勢力や,彼らが潜伏していると目された地域に暮らす住民への迫害を,助長している側面がある.
同僚を何人も殺害されてなお,体制によって迫害される人々の現状を知らしめるべく,ペンを取り続けるノヴァヤ・ガゼータの人々の意志の強さには,目を瞠るものがある.
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『でっちあげ』『モンスターマザー』が素晴らしかったのでロシアに全く興味がないながらも読んでみた。 これも良い本。 なんというか、ヒドいの一言。 テロリストとは交渉すべきではないというのはもちろんそうなのだが、こういう内容を知っちゃうと「声を上げたところで効果がないから武力(暴力)で・・・」って人が出るのも仕方がない気がしてくる。 日本はこういう国相手に「仲良く」なんてできるのか。 あくまで本書を読んだ感想。 ロシアという国や、ジャーナリズムに興味のある人であれば読むべき一冊。