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自衛隊について密着取材した後藤氏が、自衛隊の存在意義や自衛隊の中で働く人の思い等について書いた本です。自衛隊と旧日本軍の違いもよくわかっていない私にとっては、初めて気がつかされる点も多くありました。
日本の防衛費はGDP比率では少ないものの、絶対額では円高や人件費のため世界の中では上位に占めているといわれています。軍隊に本当に必要な武器や、練習のための弾薬が十分に買えない、弾薬の保管や移動についても、既存の法律に縛られていて、有事のときにどの程度活躍することが出来るのか、心配になったのも事実です。
そういえば昔イラクに自衛隊が派遣されたとき、自衛隊保有の輸送機ではなくて民間機で行ったこと、必要な物資は宅配便を使用した等、不思議に感じたことも思い出しました。
以下は気になったポイントです。
・航空自衛隊は、日本本土の防空抑撃のみ、海上自衛隊は、対潜水艦能力・海上護衛能力・機雷掃海能力、陸用自衛隊には本土防衛能力のみの防衛能力しかない(p23)
・アメリカ合衆国の軍事費は5618億ドル(56兆円程度)で、GDP比較で4.5%であり、世界各国累計額の半分を占めている(p25)日本の防衛費は2005年で4.8兆円程度、4割以上が人件費、10%が基地対策費であり、装備品購入費は18%、訓練費は16%程度(p30)
・海軍兵学校の施設は、アメリカ太平洋司令官のニミッツ大将の厳命により爆撃目標から外されていた、対岸の呉市が猛撃を受けたのとは対照的(p39)
・自衛隊では、任期2年で入ってきた一般隊員(士)を、自衛隊生徒(曹)が束ね、それを防衛大卒(幹部)が指揮する構図となる(p41)
・富士駐屯地には、日本最高の練度・装備を誇る最精鋭部隊である富士教導団があり、もし本土に敵が上陸した場合には、戦場の火消し役として投入される最後の切り札(p48)
・英国海軍やそれに学んだ日本海軍は、士官(少尉)以上の者と、下士官(二等兵曹)以下の者が顔を合わせることがないように軍艦を設計していた、陸軍でも同様(p60)
・防衛省の実質的な警備は、警備会社のセコムが担当、防衛省や自衛隊への警備システム等もセコムが独占納入している、駐屯地内において1箇所だけ自衛隊が管理しているのは、弾薬庫の直接警備である(p75)
・陸自の場合、一番楽な勤務は、大都市圏内の通信科、次が輸送科(ただで免許が取れる部署)、普通科も勤務地によっては良い、最悪なのは特科(砲兵)、機甲科(戦車兵)である(p111)
・海軍の伝統であった”金曜カレー”は、長い洋上生活による曜日感覚の希薄化を防止する目的で、毎週金曜日にカレーを給食したのが起源である(p150)
・自衛隊で十分な実弾訓練ができないのは、弾薬が高いことに加え、民間の火薬取締法に従って管理されるので、駐屯地への常時備蓄は難しい、運送も事前許可が必要(p161)
・自衛隊の大半の部隊の移動は、民間の東日本カーフェリー等に依存している、有事となった場合の輸送はどう考えるのだろう?(��172)
・戦車を積んだトレーラーの移動は、特別大型車輌になるので、道路交通法により夜間21時以降しか公道を走れない(p174)
・自衛隊が出勤を命ぜられるのは、1)防衛出動、2)治安活動、3)災害派遣、4)海外派遣、であるが、政府・自治体からの命令や要請が必要であり、自衛隊独自判断は不可能である、これが文民統制(政治が軍事に優先される理念)である(p185)
・F15は日本において開発国アメリカに次ぐ保有数(213機)があり、ライセンス生産できるのは日本のみ(p189)
・日米共同開発機、三菱F-2支援戦闘機(攻撃機のことであるが、憲法9条との兼ね合いから支援戦闘機と呼ぶ)の採用が検討されたが、実現されなかった(p205)
・戦争末期において、関門海峡に4696個の機雷が敷設され、45年5月の1ヶ月間で、21.3万トンの日本商船が沈没、大破した、機雷が戦争終結に果たした役割は原爆以上とも言われる(p213)
・占領軍は、日本陸海軍の解体を進める中で、掃海部隊だけは任務継続とした、旧海軍、復員省、海上保安庁、海上警備隊へと管轄を移しながら機雷処理を続けた(p213)
・陸上自衛隊には、3つのエリート・レンジャー集団がある、1)北海道の雪中専門部隊(北方レンジャー)、2)長野県松本の松本13普通科連隊(山岳レンジャー)、3)千葉県習志野の第1空挺団(空挺レンジャー)、がある、もし日本でクーデターが起きるのであれば、第1空挺団であるというのが自衛隊での共通認識(p228)
・海上自衛隊は5隻のイージス艦を保有(2008年3月に、6隻目「あしがら」竣工予定)しており、世界第2位である、1位はアメリカの73隻(p236)