紙の本
死んで花実を咲かせた男
2015/08/08 03:32
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投稿者:金吾庄左ェ門 - この投稿者のレビュー一覧を見る
死んで花実が咲くものか。とは言いますが、本書の主人公・清河八郎は死んで花実を咲かせた男といえます。
序盤は14にして遊郭遊びしたり、妙に理屈ぽかったりであまり可愛げのない性格ではありますが、自分の名前を上げたいと一念発起し江戸を始め全国を遊学する事で、また山岡鉄太郎や伊牟田尚平といった仲間との出会いにより、倒幕という大きな目標を打ち立てます。
清河はその倒幕を実現するにはもっと多くの同士が必要であり、より大きな力が必要であると考え、自分が死ぬ事によって、倒幕の志を知ってもらい原動力となろうと決意します。だからこそ、死を決意した清河が生きて何かに執着しようとはしませんでした。わかりきっている死を迎える事で清河は、維新回天の扉を開き、花実を咲かせたとも言えます。
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幕末の山師と呼ばれた清河八郎の歴史小説。
名前だけは知っていたけれど、いざどんなことをしたかといわれると、よくわからない。あまりいい人ではないという印象はあるけれど、何故かしらない。
それでも、違う角度から見てみるのも言いかと思い手に取った。
陰謀の段階でつぶされていく為、派手さはほとんどない。その分、清河と言う人が出来ていく過程がしっかりと書かれていて、ある種の納得ができた。
田舎の酒屋の息子が新しい世の中を作ろうとしたならば、清河の境遇を考えれば、誇張や策略は必要だと思う。
人と金、才には恵まれたけれど、時に恵まれなかった人。それが、清河八郎の印象。
幕末の胎動期を読むのには良い作品だと思う
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酒は飲む、女遊びは奔放
主人公に肩入れできない本は読むのが苦痛です
策士策に溺れたのでしょうか。
早すぎた幕末の志士は、その座を新撰組に譲った
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新撰組が生まれるきっかけとなった浪士組を組織した幕末の策士、清河八郎。
京都に浪人たちを集めたり、幕府を介さずしかも諸藩でもない浪士組に勅諚を賜るという当時としてはとんでもない経験までしてます。
ただ、後ろ盾(朝廷・幕府・藩)のない個人としては国を動かすのは難しいことで、攘夷倒幕の夢を果たせずに最期を迎えます。
個人的に開国派が好きな私としては、八郎が死の直前に攘夷の無理さ、無意味さを悟った場面が印象的でした。
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幕末,草莽の志士 清河八郎の物語。
著者があとがきに書かれているように,私も清河に対しては,策士で少し鼻持ちならない人間のような感じを抱いており,かといって,清河自身のことをあまり深くは知らなかったが,この本を読んで,その考えが変わった。著者は,清河のそういった負のイメージを少しでも改めさせ,本当の清河を知ってもらいたいといって書いた本ということだった。
清河は出羽庄内藩では最大の醸造石数を誇る酒造家で裕福な出の郷士であり,才に恵まれ,武も北辰一刀流の免許皆伝で,俗に言う文武両道であったため,人に疎まれることが多かった。清河は自分を潰しにかかって来る人間に対しては,徹底的にやりこめるたちであったから,これまでの私のような者にはその部分のみがフューチャーされ,毛嫌いしていたかにおもわれるが,その反面,自分を頼ってくる者や弱い人間に対してはとことん面倒を見るような人間であった。
維新回天の最終仕上げをした,西郷,桂,坂本などは,藩主と一心同体で倒幕に向かったのではなく,本人たちが知らないうちに,バックに薩長土藩がいることを草莽の志士達はちゃんと認識していた。反面,清河はバックに何もなく,故に,人のふんどしで相撲をとるようなまねをすることが必要であり,奇策に奔ることも多かったのである。
ただ,よく考えてみると,龍馬も薩長を利用したり,ギリギリになって大政奉還を献策したりと他人のふんどしの利用や奇策とも言い得なくはない。
小説で言うに,清河は,自分がここで倒れてもよい。その後に誰かが続き,やがては倒幕が成ると,倒幕の魁になろうとしていたようであり,事実,倒幕の時期も今一歩煮詰まっていなかったように感じる。
天地人の考えから見ると,天の時は未だで,地の利も清河の背景に強藩がいなかったことからここも成っておらず,唯一,清河自身の才知や周りが清河を盛り立てようとすることも考えると人の部分が成っていたように思われる。
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藤沢周平氏の幕末史実を舞台にした長編。幕末の志士、清河八郎の人生を描く。文庫表紙カバー挿画は蓬田やすひろ氏。内容の深厚さを思うとカバーがちょっと物足りない感じ。
幕末の様子が身に迫ってくるような内容です。山師、ペテン師とも評された主人公の「回天」を藤沢氏が成し遂げようとする渾身が伝わってくるようです。
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幕末期に活躍した荘内藩の浪士清河八郎を描いた小説。
清河は様々な物語においては策士や煽動家といった悪役のイメージが強いが、そのイメージを改めさせられる一冊。
まさに幕末維新は彼が種をまいたことにより始まった。
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異国に旅に出るときはなぜか時代ものを読みたくなる。
北欧の地で読んだこの本は、江戸時代の末期、
幕府の国政がどうしようもなくなりはじめたときに
日本を変えるために現れた先駆者の話。
外国船が日本の海岸に押し寄せ、開国を迫る中、
答えをうやむやにして引き伸ばすなど
様々な幕府の政策は後手後手に回る。
そんな閉塞感に満ちた時代に、ジワジワと湧き上がってきた尊皇攘夷。
そして倒幕の流れ。
ん?この背景って今の日本政府に似てない?
現代の清河八郎は現れるのか。
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全1巻。
幕末のペテン師、清河八郎のおはなし。
このひと、
ほぼ自分の田舎っていっていいくらい近所の
おとなり山形は庄内の産なのです。
まず。
田舎モンが、なんとか世に出ようとして、
田舎モンコンプレックス自覚しながらがんばるのが、
ものすごく分かるかんじだった。
田舎だと、浮くのよね。異端児。
でも都会でると、所詮田舎モンって意識が
ふとした時に浮かび上がる。
田舎でも、都会でも、なかなか居場所を認められない。
まあ。
自分ごとなんておこがましくて言えないけど、
自分なりにすごく共感できた。
誤った評価を受けた人らしいけど、
悪評にせよ、名を残してるってのは
やっぱ凄いことなんだと思った。
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何か藤沢周平を読まねばならない、という強迫観念から手に取った一冊。数ある藤沢本から選んだ、具体的な理由は思い出せないが、幕末草莽の志士関連で引いたと思う。
清河八郎はこれまたよく知らなかったが、カリスマ性を持った棟梁格として成長、世界を広げ、最後は散っていく。大政奉還や明治維新まで辿りついておらず、超有名な幕末志士に与しない、独特の立ち位置。しかし新撰組の前々身である浪士組など、よく見ていけばかなりの活躍であったことを知り、まだまだ知らないことが多いことに改めて気付く。当然ですが。
藤沢周平は淡々と記載が進み、盛り上がりに欠ける感じがしたが、最後に進むにつれ、静かに激しさとスピード感が増し、最後は乗り切った。次はナニを読むか。
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藤沢には珍しい真っ当な歴史小説。司馬遼みたい。 うーん、僕が期待する藤沢はこーいうんじゃないなぁ。 清河八郎って、才気あふれる快男児で魅力はあるんだけど、 結局「腹芸やって自爆した男」という印象に終わってしまう。
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清川八郎という人は作者藤沢周平の出身地鶴岡に近いところの出らしい。そのせいか、ものすごく力が入っていることを感じる。
内容はもう持ち重りするくらい文字がたっぷり。良書。
八郎が倒幕の意思を固めるあたりから、この本は俄然おもしろくなる。司馬遼太郎の本でもなんどか清河八郎は登場する。あまりよい印象はなかったが、これほど強烈な意思を持っていたとは..。この時代の人の持っていた熱量はすごかったと思う。幕末が迫ったこの地代の幕府の動き、朝廷のうごき、司馬遼太郎では分からなかった部分が少し見えた。
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特に幕末に強い興味を持っているというわけではない私にとっては、登場人物が多く、関係性もなかなか複雑なので、大局を掴むのに少し苦心した。
清河八郎という人物に対する著者の愛情のようなものはよく伝わってきた。
今を生きる我々にとっては俄かに想像し難いが、日本でもちょっと前までは、嫡子が後を継がずに家を出るとか、身分を問わずに好む人と結婚するとかいうことが非現実的な望みで、それを実行するためにはとてつもない艱難辛苦が伴ったんだなあ、という思いを新たにする。
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読書期間:4/2-4/20(19日間)
あらすじ:変節漢・山師・策士とひとは呼ぶ。清河八郎は今なお悪評のさなかにある。八郎は仕官の途さえ望まぬ、一個の”草莽の士”であった。さらにその時代は、倒幕の機いまだ熟さず、彼は早すぎた志士として生きねばならなかった。郷里出奔から、麻布一ノ橋で凶刃に倒れるまで、この悲劇の孤士の生涯を余すところなく辿る力作一千枚(裏表紙より)
感想:清河八郎には、大いに興味があった。新撰組関連の書籍を乱読する中で知っている知識といえば、「幕府を守護し、京都に跋扈する”尊攘志士”を取り締まるため、浪士を集めて任につかせる・・・と見せかけ、京都で尊攘倒反幕の団体にしようとして新撰組にのっとられた大博打に失敗した男」である。
その博打たるやあまりに大胆で、どえらいことをしようとしているものの、結局成就しなかったこと、その後の新撰組の活躍が目だってしまったため、余り語られることがない。(と思う)。
本作は、非常に珍しい清河八郎もので、大好きな藤沢周平さんだったので、莫大の期待と共に読みました。
感想としては、悪く言えば退屈、よくいえば非常に丁寧に描写してあります。作品としての評価について、個人的にはじっくり丁寧でよかったと思いますが、一般的には高評価は難しそう。
清河は、羽州田川郡清川村の素封家 斉藤家の長男で、お金持ちで将来を約束されたボンボンです。ですが、環境に倦んでしまい、両親の反対を押し切って江戸にでます。江戸では文武に頭角を発揮、私塾を開き剣と学問を教えるのですが、尊攘の志に目覚め、反幕感情から地下活動を行うようになり・・・といった人生。
作者の想いとして、「変節漢・山師・策士」といった世間の印象を払拭し、一個の”草莽の士”であった、と再評価させたいという狙いがあるようです。
が、読了後も、やはり詐欺師的な、扇動家という印象でした。最後の賭けがあまりに博打的であることが問題なのですが、ただ、一千枚を読後、同情するところはありました。
じっくり丁寧に清河八郎を知りたい人にはお勧めの一冊です。幕末の動乱にドキドキを求めたりカタルシスを感じたいなら、あまりお勧めできない一冊です。
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時代の為に、討幕を説いて回った志士『清河八郎』
読む前はあまりよいイメージはなかったが、高い志を持っていたが故に、誤解されていたのか?
あまりに時代の先を行き過ぎると、人々からは理解されにくい。