紙の本
打倒信長に燃える杉谷忍びの鬼気迫る死闘が呼吸を忘れさせる
2009/12/04 19:21
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投稿者:toku - この投稿者のレビュー一覧を見る
<あらすじ>
甲賀・杉谷忍びの於蝶と叔父の小兵衛が雇われていた今川家は、勝ち戦に奢り忍びの情報を聞かなくなった結果、桶狭間で義元を討たれた。
その後、上杉家に雇われ謙信の小姓として世話をすることになったお蝶は、鬼神のような風貌と純真な心根に惹かれ、謙信のために働きたいと思いはじめた。
上杉家と武田家が激突した川中島の合戦をくぐり抜けた於蝶は、六角勢に味方する杉谷忍びたちと共に信長の首を狙うべく、近江を戦場とした浅井・朝倉と織田・徳川の合戦へ身を投じていく。
<感想>
戦国時代の不器用に生きた大名たちのために働いた女忍び・於蝶を主人公とした物語で、於蝶の頭領・杉谷信正の不器用な姿を描いている。
古い体制を頑なに信じて守ろうとする謙信、京の近くにいながら現在起こっている状況を知ろうとしない浅井、朝倉、六角氏らの衰退が印象に残り、そういう状況の中で、信玄や信長さえ討ってしまえばと暗躍する杉谷忍びの鬼気迫る緊迫の死闘は、読んでいて呼吸するのを忘れてしまう。
そして時代の流れに乗れなかった大名たちのために働き、同時に自身も零落していく杉谷忍び達には、悲壮感を感じるとともに、自分たちの信念のために働く潔い姿が凛として感じられた。
本書を読んで、「秘伝の声」や「秘密」ほど、この先はどうなるんだろうというワクワク感が感じられなかった。
恐らく川中島の合戦や姉川の合戦などの史実のなかで暗闘する忍びたちを描いているため、どんなに忍び達が信玄や信長の首を狙おうと、その結果がどうなるかは知っていることで、忍びたちの生き方を描いた物語に焦点を当てたものであることが、そう感じさせるのだと思う。
さらにこれまで多く語られてきた大合戦が舞台になっているので、歴史の流れ自体も大体知っているからなのだと思う。
真田太平記も歴史の流れの中に『草の者』を描いているが、真田家の中でクローズアップされがちな幸村だけでなく、あまり語られていない昌幸、信幸らに『草の者』が関わることで、この先は?という好奇心が起こる。
かといって「蝶の戦記」がつまらない訳ではなく、幾度か登場する謙信の小姓だった岡本小平太の成長と於蝶の関わり合いは、読んでいて面白いし、最後もこの二人で締めくくられているので、読了感は心地よい。
ところで「蝶の戦記」には、お蝶が登場する「忍びの風」「火の国の城」という続編がある。
「忍びの風」では「蝶の戦記」のクライマックスである姉川の合戦から始まり、甲賀・伴忍びの井笠半四郎とともに信長の命を狙い物語は進んでいく。
「火の国の城」では時代は関ヶ原の合戦の五年後に移る。甲賀を裏切った甲賀忍び・丹波大介を主人公として、伝説的な老忍び・お蝶とともに加藤清正のために働く姿を描いている。
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著者初の女忍びを主人公にした本。上杉謙信と武田信玄の川中島の戦い、浅井・朝倉連合軍と織田軍との姉川の戦いを通して、甲賀の杉谷信正のもとで働く於蝶の活躍を描いています。この於蝶は「火の国の城」にも登場します。
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戦国にハマって、ごく初期の頃に読んだ本です。
忍びものとして、楽しめる作品だと思います。
謙信さまがステキです。
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上杉謙信と武田信玄の川中島の戦い、浅井・朝倉連合軍と織田軍との姉川の戦いを通して、甲賀の杉谷信正のもとで活動する於蝶の活躍を描いてます。
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尾張、清洲城下のはずれで、二十の於蝶は五月晴れのもとにのびやかな肢体をなげだしていた。夏草のにおいと果肉のような体臭に木立を進む武士は惑乱した。一瞬の後に…。川中島から姉川合戦に到る年月を甲賀忍びの技と道に賭してゆく於蝶。おのが生理と心をあやつり、死闘を繰り広げる女忍びの活躍は、ここからはじまる。
2008.5 読了
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不幸な女が生まれた。
戦国の世、時代の影に生きる忍びたち。
甲賀の杉谷忍びに属する女忍者、於蝶(おちょう)は、男装し井口蝶丸として上杉に仕える。
戦乱の中、激しさをきわめる忍び同士の死闘、息詰まる神経戦、恋、そして裏切り。
戦いの果て、味方の半数を失った於蝶たち杉谷忍びは、姉川の戦いへ。
狙うは一つ、信長の首。
『鬼平犯科帳』シリーズで知られる、歴史・時代小説の巨匠、池波正太郎の隠れた名作。
突飛な忍術などで驚かすのではなく、あくまで登場人物たちの心情や、歴史的背景が主題となっている重厚な作品。
ラストが切ない。
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全2巻。
池波先生忍者シリーズ。
川中島の戦い〜姉川の戦い。
そして謙信の死まで。
後のシリーズではおばあちゃんな
お蝶が若い頃の話。
「忍びの女」と違ってあんまり武将と直接からまない。
より裏の世界のプロ感がある。
シリーズ3本目だけど、
なんだろ、
やっぱり史実の流れと主人公達の物語が
少し距離がある気がする。
相変わらずワクワクするんだけど、
振り返ってみたら主人公達の話は実は普通にまとまってる感じ。
2つの物語があんまり絡み合ってない印象。
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池上正太郎の忍者シリーズ。買ってからしばらく放ってあったが、注文してある本が届いかず、隙間で読んでみた。
「丹波大介」や「火の国の城」「真田太平記」とキャラが被る部分もあり併せて読むと面白い。
今回はお蝶の若い頃、時代は室町後期~戦国時代。上杉謙信らのそばで忍び活動を行っている。武田信玄や織田信長といった、よく知られている武将が出現し後半にかけて面白さが増す。
下巻も楽しみだ。
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忍モノ 上下巻
女忍の於蝶の若き頃からを描いた話
池波さんの忍モノ作品は 数多くありどれも魅力的なわけですが・・
その忍モノに登場する人物の中でも 私は於蝶が一番好きですので
この本は面白かったですね^^
おそらく忍キャラの中で 於蝶が一番愛されてるキャラだろうとは思いますが^^
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上巻読了。
甲賀の女忍び、於蝶の活躍を描いた戦国忍者モノ。
同著者の「真田太平記」に登場する“お江”という女忍びを彷彿させるな・・。と思っていたら、「真田太平記」に出ていた甲賀の頭領・山中俊房が本書にも出てきました。何気にリンクしているのでしょうかね。
で、お江さんは武田サイドの忍びでしたが、本書の於蝶はライバル・上杉謙信の為に忍び働きをします。
謙信のストイックさには徹底していて、その清廉さに於蝶はじめ、配下の者たちが惹かれるのもわかる気がしますね。
まさに群雄割拠の時代が舞台だけに、読んでいてワクワクします。下巻では於蝶がどのような活躍を見せてくれるか、楽しみです。
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織田信長が尾張を制覇する少し前の上杉謙信が二番目の主人公という物語。主人公の女忍びは妖艶であどけなくおもしろい。一番興味深いのは、主人公の師匠のおばばさま。これは凄い忍者です。
歴史の勉強にもなり、ハードボイルドなヒューマンドラマありでおもしろい。
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桶狭間の戦い、川中島の決戦など、信長、謙信、信玄、木下藤吉郎、柴田勝家などの時代に暗躍した甲賀の忍びの物語。於蝶(おちょう)20歳の忍びの戦いと恋愛の長編物語。池波正太郎「蝶の戦記(上)」、2001.12発行。
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時代小説らしく、時代背景が書かれているところが多く、なかなか進まない所も多かった。
くノ一の於蝶が活躍する物語、くノ一らしく女の武器を使って任務を遂行する。まだ若く、結婚か忍として生きていくかなど悩んだりするところも良い。
下巻も読んでいく。