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紙の本
やっぱ、カバー画とくればクレーでしょ。でも、いい加減なクレーファンである私はまさか彼に『セネシオ』という作品があるとは思いもしなかった
2004/05/05 21:22
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:みーちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
「仕事中に妄想モードに入ってしまう梅原司。そんな彼が密かに想いを寄せているのが18歳の栗田智美。そんな彼女に気障な同僚や嫌らしい上司の魔の手が」SFファンタジー。じつは福森について余り知識が無かった。性別はもちろん年齢も知らない。清張賞受賞ということで、50間近の男性ではないかと、勝手に思っていた。そんな思い込みは、嬉しい誤算。
梅原司は19歳の三流大学の二年生。ディスカウントストア「ロシナンテ虹が丘店」でアルバイトをしている。仕事中に一人で妄想モードに入ってしまう、そんな彼が密かに想いを寄せているのが同じ職場の18歳の栗田智美。それを冷やかすのが石渡泉。薬科大学を出て製薬会社に勤め、結婚相手を見つけてさっさと退社し、今は資格をいかしてパートをしている30代の女性。
司は好きな智美に何となく好かれたような気でいる。しかし、彼女に目をつけているのは、司だけではない。一流大学の二年生であることで何となく司より上に見られる「キザ野郎」真柴公郎と、司や泉の上司で太目の40男「ゆで克」大森克夫は虎視眈々と智美と懇ろになるよう手を打っている。仲間の送別会で、セクハラ親父の「ゆで克」の手から智美を守ることができなかった司は、泉に叱られても反論できない。
そんな時、司が受け持つ薬品売り場に毎日現れる少女と話をすることに。カレンダーのクレーの画『セネシオ』に何処か似ている彼女は、玉川野菊。彼女は、司には超能力があるという。これ以上は書けない。ここから狩るものと狩られるものとの宿命的なラン&チェイスが始まるが、私は表題作を読み終わった時点で、これは完結した話を集めた短編集だと思ってしまった。それほどに、「セネシオ」は纏まりがいい作品である。
しかし、続く「イエロー・ガール」を読んで、遅まきながらこれが連作であることに気付いた。「忘れっぽい天使」、「さえずり機械」と展開していくが、後半の展開は予想していなかっただけに、楽しめる。これを予定調和の範囲内と思う人もいるだろうが、私には十分意外。叙情味こそ、さほど感じないが、またいつか彼らに会いたい気がする。彼らって何だ、と思う人はぜひ作品に触れてほしい。本物の医学知識が、内容にじつにしっくり溶け込んでいる。
詰まらないことだが気になる点が一つ。同時期に浦賀和宏『ファントムの夜明け』(幻冬社2002)を読んでいたが、その小説に詰まらない役で高畑という男が出てくる。『セネシオ』の「さえずり機械」にも、いやらしい身勝手な男として高畑が出てくる。偶然というには、余りに気になる。もしかして、私の知らない有名人で、その名前のもの凄く厭な奴がいたりなんかして。これ、冗談です。
ちなみに、著者の森福は1963年生まれ、広島大学医学部卒、その経歴がこの小説のクローン技術描写あたりに生きている。『長安牡丹花異聞』で第3回松本清張賞、私はこの頃の清張賞にいいイメージを持っていなかったので未読だけれど、何時かは読んでみたいものだ。
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