投稿元:
レビューを見る
毎日新聞記者が、昭和20年12月(本書の前身の書籍)刊行の戦前昭和史の内幕暴露本。張作霖爆殺事件等現在では高校教科書レベル+αと評しうるが、当時はセンセーショナルだったと推察する。新聞記者だからだろうが、著者は憲兵を毛嫌いしているようで、憲兵の親玉のごとき東条をこき下ろし、また反東条と思しき人々のことを細かく叙述している。本書を読んでも、当時の陸軍・政府首脳部がまともな戦術眼(戦略眼がないのはもとより)を持っていたとは考えにくい。
戦力の集中投入・奏効しない時の自重や戦線縮小は当然の策であるが、全くこれをしていないが、これはどうしてか。国民の雰囲気等で正当化されるのであれば為政者の資格なしである。また、悲観的報告を嫌う東条に配慮した部下が正確な情報をあげていなかったという事実も、東条の指導者としての資質を疑わしめる。努めて正確な情報をださせるシステムの構築責任がリーダーにはあるからだ。
なお、陸軍対警察の構図となったゴー・ストップ事件(昭和8年)、陸軍の派閥抗争(古典的・教科書的)、各種テロの経緯についても細かく書かれているので、参考になった。