紙の本
満足する読後感
2015/09/10 06:44
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:わん - この投稿者のレビュー一覧を見る
読み終わったら満足感と達成感が得られて、小説を読む楽しさが感じられた。イギリスの小説で、フランス人に殺人事件の容疑がかけられるので、まさかと思って少しはらはらしながら読んだ。
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終わった~~~!!!
最後はなんだか駆け足で読んでしまったのがちと惜しい。
が、最終巻はやはり一番良い!!!
気が遠くなりそうな描写は無いし、3巻後半からのスピードはクライマックスを過ぎると、のんびり流れる。
普通、これだけの長さの本を読めば、最後には読み終わる寂しさが募るのだけど、これは最後の数章自体が余韻を与えてくれているので、寂しくなりすぎることもなく読み終えることが出来ました。
青木先生による「ディケンズ文学の魅力」も面白かった。
確かに、ディケンズは賛否両論でしょうな(笑)
ご都合主義万歳!(笑)
私は史料的にメモをとりながら読んだりするので、とてもありがたい本でしたが、時勢の批判的な要素も多いし、シェイクスピアを引用しすぎだしだったりするので、イギリス近代史に興味が無い人は1巻でつまずくかもしれない...
間違っても19世紀英文学の最初にこの本を選ばないようにしたほうがいいでしょう(^^;
本当なら星五つ上げたいところですが、筑摩書房さんにちょっと星一つマイナスです。
危ないと思ったから読んでいなかった背表紙を、なぜか4巻だけ途中で読んでしまいました。それによっていいところを先に知ってしまった。
ちょっと書きすぎです。
(H21.10 図)
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3巻からはあっという間だった。
やたらといた登場人物のすべてが絡まりだして廻りだす。
「物語」の筋書きというものは快楽が得られるパターンがもう決まっていて、
荒涼館はそのひとつ、「あしながおじさん」。
物語終盤でのジョンおじさまはできすぎだが、
そこがまたよいのであった。
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荒涼館に引き取られた、出自不明の少女エスタ。彼女をめぐる物語、そしていつまでも決着がつかないジャーンディス対ジャーンディス訴訟事件の結末は・・・?
荒涼館、怒涛の最終巻。
2、3巻があまりに凄かったので、最終巻は少々落ち着いたところもあったけれど、この物語にふさわしい大団円といえたのではないだろうか。
本としての完成度だとか、物語としての評価だとかを言わせてもらうと、少々難をつけたいところも少なくはない。無駄な文章が多すぎる気がするし、筆の勢いにまかせて書いたのでは? と思うところもあったのだ。
しかし、それでもこの『荒涼館』を読み終えた今、私はいい読書をしたなぁ、と思っている。この感情を上手く言うのは難しい。たとえば4巻でのこんな場面。エスタがバケット警部とともに、夜通し雪の降る道を馬車で走り続け、びしょ濡れになってやっとある宿につき、休んだあと、再び出発しようというところ。
「私が馬車に乗って、皆さんにお礼とさよならをいった時、一番下の娘さん――十九の花ざかりで、一番先にお嫁にゆくはずですとか聞きましたが――が、入り口のステップにやってきて、身を乗り出すと私にキスをしました。その時以来私は一度もこの娘さんに会っておりませんが、今でも私のお友達だと思っています」
ここは物語の本筋に全く関係がないのだけれど、私はこのくだりを読んだとき、嬉しくて、胸がいっぱいになって、この物語を抱きしめたくなったのである。
先が見えなくて、びしょ濡れで、凍えそうなときに入った宿。そこで温かく世話をしてくれた人々。そして、そこを出るときに一瞬で通った心――。それこそ、その娘さんが何十年来の友であったかのような。なんの理由もなく、なんの必然性もないけれど、この場面を読んだときに湧き上がった幸福感とは何なのだろう。
人間愛、と言えないこともない。けれども、そんなに大層なものではないのだ。この娘さんは、この全4巻の物語のここ数ページしか登場しないし、エスタにしたことといえば、キスをしただけ。しかし私は今でも、この場面が確かに目に焼きついている。
『荒涼館』の魅力は、これに似たものなのではないかと思う。
張り巡らされた数々の伏線や、入り乱れる多くの人々はそれぞれに魅力的だけれど、その物語が生み出すうねり、その中にはっとするようなきらめきを感じるからこそ、この物語は力強く、また時に愛おしいのだろう。
特に、この物語の主人公であるエスタ。私は彼女の、幼いときに繰り返し願っていたという願いの文句がとても印象に残っていて、それを探してからこの本の感想を書こうと思っていた。しかし、いくら探しても見つからないので、こんなにこの本の感想を書くのが遅くなってしまったのである。
それは確か、淋しく不幸な少女時代の彼女の「どうか人の役に立てますように、私の力が他人のためになりますように」というささやかな願いだったとおぼろげながら記憶しているのだが、その願いの意味こそ、この物語の全編に散りばめられたテーマだと思うのだ。だから、私は彼女が「あまりにいい人すぎてあまり好きになれない」とは思わなかった。むしろ、そんな彼女を主��公にしてこそ、このような物語が生まれたのだろうと思う。なぜなら、「人の役に立ちたい、人にとって自分の存在が意味を持って欲しい」、というのは、誰でも持っている、本当に本当に“ささやかな”願いだと思うからだ。
なので、私はエスタをとても好きだったし、最後まで彼女に飽きることがなかった。飽きるということなら、私の場合むしろ、エイダのほうだった。エイダに比べれば、私はエスタのほうが断然人間味があって、生き生きした人物だったと思う。
というわけで、『荒涼館』、読めてよかったです。4巻で少し物語のパワーが緩んでしまったけれど、全体としての評価は星4つ半、です。
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点と点が繋がり線となった。謎は解け、重く暗く立ちこめていた雲は晴れ、暖かな日差しが戻った。さわやかなやさしい西風が吹き抜けていった。
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前半2巻は、物語や登場人物の背景を中心に綴られており、読み続けるのにかなり根気が必要だった。
後半になると、物語の進行にスピードが増すとともに前半に張り巡らされた複雑なプロットが繋がりはじめ、目を離せないような迫力を感じさせられる。そして大団円へと一気に駆け上っていく。このあたりは「二都物語」や「大いなる遺産」同様ディケンズの真骨頂だ。
他の作品に比べると地味な内容ではあるが、当時の英国の世相をもっとも詳細に描写した作成っではないかと思う。
どちらかというと不幸な人物が多く登場nし、気が滅入る部分もあるが、読後感は爽やかであった。
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タルキングホーン弁護士の殺害事件の捜査にあたるバケット警部。捜査の過程でタルキングホーンの掴んだデットロック婦人の秘密を知り殺害の動機として考える。デットロック卿に知られた秘密。デットロック夫人の失踪。倒れたデットロック卿からの嘆願。帰宅したジョージ軍曹。ウッドコート弁護士とエスタの関係。ジャーンディス氏の示した優しさ。裁判の行方。リチャードとエイダの運命。
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一度は断念したが、読み切った。
デッドロック(どんづまり)へ向かい突き進む法廷裁判の裏で、まずデッドロック卿が麻痺し、事件は急加速する。馬車が突き進む奇妙な馬力は、裁判に向き合う人々の、死をともなう精力にも似ている。
そしてデッドロック夫人が死んだとき、この停滞状態は破裂する。結末に向かい一つ一つの事件がハッピーに解決していく様をみて、読者は安心する。
ただ、これはエスタ・サマスンの一人語りを仮に信ずれば、のことである。ことあるごとに自分の顔について長々と語るサマスン。自分は美しくないと幾度も語るが、その美貌が色あせた後「かつてとこんなに変わってしまった」と狼狽するなど、思うところは隠しきれていない。
また、あまりにも善良すぎて、それを表に出しすぎてはいないだろうか。ディケンズは、本来ならば戯画化されるような「善意の塊」を主人公として、一人称の語り手として現せさせることにより、物語の全てを戯画化してしまったと言ってよいのではないか。
結末の末尾、サマスンが不敵にも自らの美貌を匂わせ「でも、もしかしたら。。。」と締めくくる。ここぞ証拠、サマスンの一人称は全て、彼女の暴走する善意の渦である。我々は今一度、客観的語り手の言葉で、物語を読み直さなければならない。
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正直ディケンズの印象といえば、読み物としては面白いけどまあ、そんくらい、しか思ってませんでした。かわいそうな子供が運命の荒波を乗り越えて、純真無垢な心と幸運の導きをえて幸せな結末を迎える。ジャンプ的な物語だなーくらいな印象。
この荒涼館もそうっちゃそうなんだけど、丁寧に練られたプロットに基づくご都合主義っていいものですね。
霧、煙、すす、鳥といった象徴の小物たちが盛り上げる雰囲気
前半部で入念に張り巡らせた伏線を後半部に向かって徐々にペースを早めながら回収しつつ大オチにむかう高揚感とあーそういうことかーていう気持ちよさ。
典型的でわかりやすく性格付けされた登場人物たちの悦にいった長口舌。
ここ盛り上がるとこだから!といわんばかりに悲しみ通り越して陶酔しきったような美文で饒舌に描き出される死の情景の数々。
そしてもちろん約束された安定の大団円。
大団円にいたるはずっていう信頼があるからこそ、ハラハラドキドキも安心して楽しめる。
僕個人として小説を読む楽しみの原点回帰、といえるような体験でした。
小難しいこと抜きにして、あー面白いと素直に言える傑作。
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正統派の英国ハッピー物語でした。めでたしめでたしという訳で満足の結果。
ただ、ハックルベリフィン、大いなる遺産とは異なり、登場人物のエピソードにミステリー要素が多い事と、各人の語りがなかなか蘊蓄が有る人生談・・酔わせます(ある意味、美文調だけれど)
デッドロック卿の本心を見誤っていた夫人と失踪、そして死に至る結末が嫌がおうに、この小説を気高く仕上げた感が強い。
一旦、犯人として仕立て上げられたジョージ軍曹のエンディングでのオジサンぶりじょーじぐんそうに笑いを貰えた
ジャーンディス氏が思いやったウッドコートの想いは読み手を安堵させている。リチャードとエイダはなんか付け足しだったと思えたラスト。
エスタの人間味を現す小さなエピソードが随処に散りばめられており、読んでいる時は「無駄に長い」と思いつつも読み終えてみると言いようもない温もりを感じさせた大長編だった。