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紙の本
パラサイトは雇用の世代間格差から生まれる
2002/01/07 23:27
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:基山健 - この投稿者のレビュー一覧を見る
パラサイトシングルは生活の負担を負わず豊かな生活をしているなどとパラサイトシングルを非難するような物言いに、読んでいる途中でなんとなく違和感を覚えたが、語られるべきことは語られている書であろうと思う。パラサイトシングルと非婚化、少子化との関係、親の経済的利用可能性と階層分化、諸外国とのポスト青年期の比較などについては非常に鋭い分析が展開されている。また、対応策について、今の経済状況下では、もはやサラリーマンと専業主婦という家族で、若い男性の収入だけで生活をしていくことはできないのだから、夫婦共働きで、家事・育児を分担し合ってそこそこの生活をする、という方向になっていく必要があるという主張も的確である。
山田氏も若干触れているが、パラサイトシングルの問題を考える際に不可欠なのは、雇用慣行の変革や労働市場の整備ではないかと思われる。現在、若者の多くが失業や、低賃金、不安定な非正規雇用の状態に置かれている一方で、中高年は強い解雇規制によって職を失うことがなく終身雇用、年功賃金によって働き以上の賃金を得ている(中高年のリストラが報じられるが、その数は若者の失業に比べれば圧倒的に少ない)。パラサイトシングルは結局、中高年(=親)によって就労機会から追い出されている若者(=子ども)が、家庭の中で親から経済的利益の還元を受けているに過ぎないのだ。
雇用をめぐる世代間格差こそがパラサイトシングルの発生要因である。中高年が若者の職を奪っているという構造を変えない限り、問題は解決しない。しかし、中高年には自らの既得権を守る労働組合というセクターがあるが、若者には何もない。本書にあるように労組が強いヨーロッパにおいて若者の失業率は驚異的である。若者の側から状況を変えるための核が必要である。
紙の本
私もパラサイト中…
2001/03/16 16:54
4人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:やまだまさ - この投稿者のレビュー一覧を見る
パラサイト・シングルとは、小説「パラサイト・イヴ」をもじってつけられた名称で、適齢期になっても親元にとどまり、経済的な自立を果たさない若者達のことを指す。筆者は特に経済的な観点からその危険性に警鐘を鳴らしている。何が問題なのか?それは基礎的消費の現象と、少子化による労働力の低下による生活水準の緩やかな低下である。著者は若者を自立させる為に政策と企業慣行の変革による対策を主張している。
今の若者の生活水準が驚くほど高いということはちょっと街をふらつけばわかる。ヴィトンなどの高級ブランド店にもおばさま方よりむしろおねえさま方のほうが多くみられる。大学生である私も、親からの仕送りが無ければ明日から生活してゆくこともできない。親元から学校に通う子たちも、バイトなどをすれば月々に10万円近くを「贅沢消費」に費やせるだろう。贅沢消費はOLなどが最も高い割合を占めているそうだ。結婚し、世帯を持てば自由にできるお金は確実に減る。子供をもてば、向こう10何年は家に縛り付けられ、一人の子供を満足に育てるには数千万かかる。だから、親元でぬるま湯に浸りつつ世の春を愉しむ。だが、このこと自体は確実に社会をダメにする…。
著者は以上のような状況を様々な統計を引用して説明する。本書は私に、人間にとって何が「幸せ」か?という価値観の問題を思い起こさせた。自立が「幸せ」か、ぬるま湯的消費が「幸せ」か…。幸せとは、豊かさとは、「物質的」なものを保証されていなければならない。だが、逆に「物質」のみで豊かさが手に入れられるというわけでもない。何を求めているのか?私は。
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学問的には??
2002/01/31 11:05
4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:もとますた - この投稿者のレビュー一覧を見る
よく考えてもらいたい。
たとえば、著者はパラサイトシングルの出現による経済現象を懸念しておられるが、これだけ国際的になった経済のなかに一体どれだけの説得力があるだろうか。
至るところに、こうした思慮不足を感じる。依存心と社会構造の関係は複雑であり、あまりに単純化した「原因と結果」の帰結には閉口する。国際比較をするためには、その背後の関係に触れておく必要があり、データのみから結論を導くのは早計である。
紙の本
1999/11/22
2000/10/26 00:20
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:日経ビジネス - この投稿者のレビュー一覧を見る
「パラサイト」とは英語で「寄生」の意。「パラサイト・シングル」とは、「寄生している未婚者」。つまり、親の生活圏から自立できない独身の若者たちを指す。
親との同居で、衣・食・住に何ら不自由しないのをいいことに、自ら稼いだ金は、レジャーやブランド商品など、娯楽、趣味に費やす生活を送る。そんな男女が、今や約1000万人に達しており、社会に病巣を形成しつつあると分析するのは、著者である学芸大学教育学部の山田昌弘助教授だ。
「パラサイト・シングル」の増殖は、日本に景気下降や社会モラルの低下をもたらした一因だとも指摘。その根拠を解説する。
例えば、経済に及ぼす影響として、住宅や電化製品などの需要低下がある。「パラサイト・シングル」はそれらを親と共有しているため、世帯数そのものが伸びていかないのだ。彼らが唯一貢献するブランド商品などの付加的需要の伸びも、焼け石に水だと言う。
「生活水準が落ちるのが嫌だ」という甘えが、彼らが親に寄生し続ける理由の根底にある。彼らに自立を促すことは、もはや一家庭の問題ではないという事実を痛感させられる。
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