紙の本
辻邦生氏を静かに見つめる温かさ
2015/10/18 08:43
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投稿者:タヌ様 - この投稿者のレビュー一覧を見る
辻邦生氏の多くの作品、たとえば「春の戴冠」のように美術史の高い知見に驚き、佐和子氏が美術史の専門家であることが多くの歴史ものの背景のあるんじゃないかとと思うのである。
また、辻邦生氏は思い考えながら日常生きているのだろうか、湧き出るように書き続けることをやめない辻邦生氏の姿の描写があり、あーこういう人なんだと。やっぱ違うんだなと。駄々っこをみつめるようなまなざしである。
夫唱婦随の組み合わせで辻邦生氏のまことに華麗で、染み入るような悲しみの絵画的イメージの作品ができてきたんだと思えてしまう。
温かく、そして生きることの充足を静かに語ってくれている。読んでいて思った、素直に人を見つめることはできるんだよと、そんな気持ちになる本である。
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2011/05/25 中公文庫「『たえず書く人』辻邦生と暮らして」(辻佐保子 著)
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辻佐保子という著者は、作家・辻邦生夫人である。
この著作を初めて見たのは、もう数年も前の事になる。四六小版の薄いハードカバーであったと記憶している。その時読んでみたいと思ったのだが、単行本であったため購入しなかった。
その後やはり読みたいとその本を探したのだが、既に本屋の棚から消えていた。売れたのであろうが、手に入れられなかったのが残念に思っていた。
そして今日、朝日新聞の広告欄に中公文庫の出版案内が掲載されており、それらの文庫の一つとして、この作品が紹介されていた。やった!欲しい本が文庫として出版される。嬉しくなり出かける時に買おうと思った。
果たして購入したのだが、…いつから読み始めようか?
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以下は中公文庫のWebサイトに紹介された記事である。…
〈些細な出来事や着想から大きな一つの作品世界を構築していく作家・辻邦生の仕事ぶりを、半生記を共にした夫人が綴る作品論的エッセイ。〉
書誌データ
初版発行日2011/5/25
判型文庫判
ページ数248ページ
定価540円(本体514円)
ISBNコードISBN978-4-12-205479
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読むのはいつもあとがきばかり
あとがき−心の闇あるいは水面下の氷山−
過ぎ去る時と留まる記憶
八ヶ岳から軽井沢暮らしになるところが懐かしく、また、知らなかった人間関係も見えてきた。辻邦生の松本高校時代の恩師であり結婚の証人になった関屋光彦氏の綾子夫人の兄が森有正氏だった。
著者は私のなかでは「A」として「パリの手記」に出てくるイメージしかない。
辻邦生の文学を現実に引き戻す存在としてAのネタばらしは楽しい(引用を見てね)。
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辻邦生全集のあとがきを編集した内容。各巻ごとに当時の執筆状況や心理状態を最も近い存在の著者が振り返っている。年代順に追うことができる。