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●はじめに
こちらの本は当ブログを観覧いただいている、同業界の先輩となる方から献本をいただきました。ありがとうございます!お渡ししていただく際に、「オンラインエンターテインメント業界における教科書」として使えるとのお話を頂いておりましたが、実際にそのとおりの内容でした。
この本は、オンラインゲームやオンラインエンターテイメントに従事している、従事したいと考えている方に、是非読んでいただきたい一冊です。
●第一部「デジタルコンテンツの収益モデル」
第一部では、デジタルコンテンツという無形の物がどのように販売されてきたのかを記述しています。物販などで使われるような収益構造とは違い、そもそもの収益構造自体が大きく違うことを中心に、これらを事細かに記述しています。
実際に業界で3年*1やってきましたが、これまで感じていた部分を上手く「言語化」できているのには、目から鱗でした。また、言語化だけではなく、「ゲーム内行動と収益性指標の関係」といった形で図式化するなどにより、視覚的に非常に分かりやすくまとめられています。
●第二部「形のないものを売る仮想世界サービス」
第二部では、オンラインゲームを中心に、実際に「形のないものを売る仮想世界サービス」とはどうなっているのか、どういった収益構造の変化を遂げてきたのか、そして仮想世界のサービスという、これまでの物販などには見られなかった「継続性」の概念について上手くまとめられています。
何故ユーザーは形のないものを買ってしまうのかについて、同著者が実際にオンラインゲームをプレイした経験や、非常に貴重なアンケートデータを解析した数値を元に、「何故買うのか」を具体的に示していきます。
また、収益点として現在各所が取り入れようと躍起になっている、オンラインゲームへの広告投入する事業(アドバゲーミング事業)についても触れられており、新しい挑戦分野についても言及がされています。
●第三部「仮想世界のマネジメント」
この第三部こそがこの本でもっとも情報が詰まっている部分であり、これまでこの業界に従事している人間達が実際に感じておきながら、データ化することの出来なかった多くの事象をまとめられている部分です。
課金をしてもらうためにもお客様がいなければ成り立たない、という言葉から始まる第三部は、第九章 アイデンティティ、第十章 コミュニティ、第十一章 関係性の創出と公平性、第十二章 仮想世界の経済システムと、全ての章のそれぞれが非常に濃厚にまとめられており、仮想世界が如何にして成り立っているかをまとめています。
前半では、どのような目標を持ってゲームを継続して行くのか、バーチャルアイデンティティとしてハンドルネームや見た目の重要性について、コミュニティのオピニオンリーダーが大枠でみても複数種の存在があることなど、細かな点までおとしこまれています。
後半では、なぜオンラインゲームには公平性が求められるのかについてから始まり、仮想世界における経済システ��が現実とは全く違う姿をしている点について言及されています。同時に、RMT(リアルマネートレード)についても避けて通らずにたっぷりと言及してくれており、その可能性と問題点についての問題定義がなされている点は特筆するべき部分です。
オンラインゲームの世界をどう構築していくことで、ユーザーの求める(そしてお金を払ってくれる)世界となるのかについて、理解を深めるためにもこの部は非常に重要といえます。
●全体を通して
全体を通して、実際に業界に従事している人間であっても「なるほど!」と思える部分が多数存在しているのには非常にすばらしいと感じています。
ただし、各所で説明を加えてあるとはいえ、「読むための前提条件(知識)」というのは必要不可欠ではないにせよ、より深く理解するためには最低限、オンラインゲームをプレイして課金するまでに至っていることが望ましい内容になっているため、読む人間次第では理解度が変ってしまいます。*2
とはいえ、その前提条件をクリアした状態で読むのであれば、自身の中にある地盤をより揺るがない「頑丈な基礎」へと変化させるために必要な情報が詰まっています。
私自身、実際に完読してみての感想ですが、この分野においてこれほどまでに言語化され書籍化されている物は唯一無二であり、現在この業界でかかえている「知の共有の問題」であったり「前提条件の作成」という問題点を解決するための非常に優秀な教科書として使える書籍です。
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本書は、仮想世界のビジネスモデルを分析しているのだが、内容は仮想世界の住人達の分析・アンケートと分析が多く、心理学や社会学の視点から呼んでも楽しい本です。
それと、筆者の仮想世界へのハマリ具合がよく伝わってくるところが、すごくいいと思いました。
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オンラインゲームビジネスについて書かれた数少ない書籍。アンケートなどによる統計データを用いたグラフィカルモデリング分析が非常に参考になる。著者がオンラインゲームを自分で体験している、というか廃人になりかけるまでやった点も評価できる。
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オンラインゲームに嵌まっている著者が、仮想世界のビジネスモデルについて語る1冊。
オンラインゲームにおけるネガティブ要素を廃して、経済活動のみ特価しているため、シンプルで読みやすく面白かった。
物販モデル。
従来の実際の物を購入するビジネスモデル。
消費者は、手持ちのお金だけで、より良いものを手に入れようとする。
(品質がよい、値頃感のある、など)
ダウンロードモデルも同様。
このあたりは、商品を購入するまえの「期待感」でものを購入する。
(CMで期待させるシーンを見せたり、シリーズで「前回の感動をもう一度」のように、過去の経験から期待させるなど)
それらに対して、仮想世界のビジネスモデル、オンラインゲームやサービなどでお金を得るサービスモデル
(例えば月額X円のゲームや、無料で参加できるが、一部アイテムにお金のかかるゲーム。
オークションに参加するのは無料だが、落札時に課金されるなどのサービス。
ニコニコ動画やmixiなどの有料ユーザーもあるコミュニティサイトなど)は
、「継続する満足感」に対してお金が支払われる。
単純に言えば、長く使ってもらうことが収益に繋がるのである。
では、どうすれば長く使って貰えるか。
面白い体験が出来るから?
アイテム収集・レベルアップが楽しいから?
みんなとワイワイできるから?
この本では、アンケートにより、最後の「みんなでワイワイできるから」が長く使ってもらえる最大の要因だと分析している。
みんなと一緒だから続ける。
求めているのは、ゲームでの楽しみというより、「居場所」である、と。
居場所って何?
仮想世界上でのもうひとりの自分。
リアル世界の人格ではなく、ネット上の人格。
自分の中の大切な一部。本当の自分。
(ネット上に、いつもの自分とは異なるネット人格があるという考えは多いそうな)
このあたり、非常に納得した。
コミュニティに居場所を求める人は、ゲームに対してお金を支払う。
それはコミュニティ内で特別な地位を求める(レアアイテムを持っているから凄い、格好いい)とか、
購入したアイテムを送って喜ばれたりすると嬉しいし、
仲間を誘って増やそうとしたりする。
コミュニティに利便性を求める人は、
必要とする機能が満たされればよいと考え、
居場所には固執せず、サービスを簡単に乗り換える。
(例えとして、よく使うサイトでも、「お気に入り」に入れず、都度検索するとあった。確かに)
ただ、気になる。
小学生がネットで同じモンスターを倒す単調な作業を繰り返すのを見て、著者が「算数のドリルやったほうがい楽しいのではないか」と問い掛け、「単調でつまらない作業だけど、それでも結果がすぐ目に見えてわかるのが良い」と返す。著者は、「ドリルをやったから成績が必ず上がる訳じゃない。幸せになる確証はない。複雑さを削減させた仮想世界は、人をやる気にさせるようだ」と書いている。
以下は本に書かれていることではなく、読んで感じたこと。
これに書かれていることが真実で、企業が利益を得るために、もっと人をとどめようとすると、それは、とても恐ろしいことじゃないだろうか?
現実が辛くて、簡単に楽しいことがあれば、そちらに流れる。
それが加速して、ネット上に居場所があればいいと満足し、ネット上の自分が大切だと感じることは、恐ろしいことなんじゃないだろうか。
ビジネスモデルとして、企業がそれをするのは当然なんだけど。
上にも書いたけれど、ネット人格は本当の自分である、と思う。
けれど、現実の自分も同じように本当の事自分だと思う。
うまくいかないことも辛いことも何もかもひっくるめて、自分なんだろうと。
ネット人格を大切にしても、それは「都合のいいところだけを集めた自分」ではないのかな。
何か起きても、IDを変えれば、いつでもリセットすることが可能だ。
そしてネット上には、現実とはちがって単純に分かりやすい結果が待っている。
サービスを提供する企業は、心地よい居場所を提供しようとする。
都合のよい、居心地のよい場所。
辛いなら、いつでも辞められる(これは現実でも同じだけど、現実にはどうしたって肉体がある)。
はまったら現実に戻らなくならないか?
私、仮想現実にはまったら、現実に戻れる自信ない。
あと、居場所を求めるユーザーと、利便性を求めるユーザーで、サービスに対する意識の違いがある。
それに気づいたことは大きい。
ネットすごい。そして怖い。
このままいくと、短絡的になりそうだなと思うけど、小説やマンガ、テレビが出はじめたころにも、「こんなものが流行ったら大変だ」みたいな話が出たんだろうなぁ。
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デジタルコンテンツ、というかオンラインゲームをビジネスとして成立させるための要因を、ひたすら学問的に突き詰めて論じた本。
オンラインゲームの利用者が、仮想世界に公平性や努力に対する報いを求める気持ちが強いという分析が興味深かった。
企業が、短期ではなく、長期的により多くの利益を得るために、如何に非協力的に(ユーザーに)協力的な行動を取らざるを得ないといけないのかといったこともわかり、ゲーム理論的な観点でも楽しむことができた。
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ニコ動画が他サイトと違うのは、新奇性指数とコミュニティ指数の高さがある。
Youtubeではコメントは書けるがニコ動のような見ながら吹き出しのようにはできない。
価値分析:アイデンティティ、関係性、コミュニティ、新寄性。
セカンドライフは面白いが利用者は少ない。
無料でプレイできる気軽さから入ってきたユーザをどれだけ楽しませ、引き込ませ、長居られるかという顧客マネジメントがビジネスの要。
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物販モデルでは最初に定価が決まり、売れ行きが悪くなると価格が下がるという方向で価格が推移する。
サービスモデルではサービス当初は無料で集客をしてあとに課金をするという風に、概して無料から有料へ価格が推移する。
無料時代から顧客を育て、有料化後のユーザー離れをどれだけ食い止めるかという長期戦のビジネスなのである。
同じ動画サイトであっても、必要な時に動画が見られるという便利さが主要な価値になっている場合、
世界中から投稿された動画を探したり閲覧したりする楽しさが魅力になっている場合、
あるいは動画をネタにしてコメントし合う行為が受けている場合で 提供している価値は大きく異なる。
クリエイティブな活動をしたいと仮想世界での目標をあらかじめ持っているユーザーは、できるだけ自由度の高い世界を好む。
一方、仮想世界に慣れていない一般的なユーザーは自由であることに帰って戸惑うものである。
アイテム課金は原価がゼロの仮想アイテムが飛ぶように売れる良い商売というイメージを持つかもしれないが、
販売アイテム数の増加ないし客単価の増加という売上目標と、
ユーザーの利用期間を延ばすという世界全体の価値を維持することという二つを両立しなければならない。
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ゲームに大事なのはゲーム性とコミュニティ性。そしてそこにいていい、いたいと思わせる場所としての空気。
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これは完全にタイトルからジャケ買いしたもの。
奇しくも私もWebビジネスでサブスクライバモデルを検討している1人であったため、興味深く購入。
少し古い本なので、例に挙がるゲームなどの仮想空間はセカンドライフである。今であれば全盛を誇っているモバゲーやGREEなどが関わるのだろうが、まあそこは堪忍してください。
目次
第一部 デジタルコンテンツの収益モデル
第一章 デジタルコンテンツのビジネス問題
第二章 価値分析
第三章 時系列分析とタイミング
第二部 形のないものを売る仮想世界サービス
第五章 仮想世界の設計理念
第六章 オンラインゲームの事例
第七章 広告モデル
第三部 仮想世界のマネジメント
第九章 アイデンティティ
第十章 コミュニティ
第十一章 関係性の創出と公平性
第十二章 仮想世界の経済システム
結論もネタバレしちゃうのだが、最終的にはサプライヤーの提供するプラットフォームでいかにユーザー同士がつながる環境を用意できるかどうかが課金の正否を握ると結論づけられる。
今で言えば、セカンドライフ的にコミュニティを楽しめるのはアメーバピグではないだろうか。
実際やったことはないからわからないが、仕組みとしてはうまくできていると感じる。
便利だからなどの理由では続かないというのは、突き刺さるなぁ。
情報考学の橋本さんの書評もあったので、リンク。
http://www.ringolab.com/note/daiya/2008/12/post-893.html
ちょっと鮮度にかけるが、考えさせられる内容であったので4つ。
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ふつう商品は段々値引きされるが、デジタルコンテンツは無料から始まって課金に移行する。今までの経済学モデルではカバーできないのかもしれない。少し古い本なのでちょっと事例がそぐわないのは否めないが面白い本。
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綺麗にオンラインゲームを中心とした形のないものの購買現象についてまとまっていた。また、著者の経験も織り込まれている辺りは目新しかった気がする。
全体として感じたのは、善くも悪くも学生の論文(但し、佳作)のようだ、というところ。わかりやすくて良かったけど、幾分稚拙な印象と言うか。
統計手法やパス図も駆使されていたので、それこそ、学士論文等を書こうとする人にはかなり参考になる気がする。
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とにかく面白かった。著者がゲーム廃人ということもあり、現場(?)の空気が伝わってくるし、言葉にも説得力がある
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今は亡き妻が執筆した本。
彼女は研究者として、私は実務家として、この業界に携わり、動向を見守ってきました。
ゲーム市場の定義が変わり、コンテンツからサービスにシフトしていきている。もはや90年代に謳歌してきた市場とは、全く違う形態のビジネスとなっている。
彼女の遺志を継ぎ、次なるは出版業界のありようについて手研究し、改革者として邁進していきます。
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年末に紅白を観ながら読了した本その1。会社の先輩に薦めてもらいこの本を知りました。
デジタルコンテンツのビジネスモデルについて余すところなく体系立てて説明されておりその整理に重宝するに留まらず、現時点ではこれと対極にある物販をやっている自分にとって相対的に捉えることでどちらのモデルについても知見を深められた様に思う。
この本を読んで改めて問題意識を抱えたところで言えば、ユーザー参加型のデジタルコンテンツまわりのビジネスについて、基本無料の風潮に一石を投じるものや2D主流のコミュニケーションから3Dの世界がマニアックな人向けのものというレッテルから脱け出て世の中に浸透していく様な仕組みが生み出せるかを自分の中で深掘していきたいところ。
オンラインまわりの話が多くの割合を占めますが、それ以外の業界でマーケティングや企画に関わる人にも思考の整理に役立つ一冊だと思います。