- 予約購入について
-
- 「予約購入する」をクリックすると予約が完了します。
- ご予約いただいた商品は発売日にダウンロード可能となります。
- ご購入金額は、発売日にお客様のクレジットカードにご請求されます。
- 商品の発売日は変更となる可能性がございますので、予めご了承ください。
紙の本
人生、そして中流階級的価値観への皮肉
2009/05/15 11:23
9人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:dimple - この投稿者のレビュー一覧を見る
裕福な中流階級の英国人中年女性が、非日常的な空間で一時的に精神的危機に直面する様を描いた作品である。
第2次世界大戦前夜の時代、主人公のジョーンは、弁護士の夫を盛り立て、3人の子供たちを立派に育て上げたことを自負しており、人生に満足していた。
そのジョーンは、娘の病気見舞いに嫁ぎ先のバグダッドを訪れた帰途、悪天候のためにイラクの砂漠地帯にある駅の宿泊所で数日間足止めをくらってしまう。
砂漠で孤独な時間を過ごす中、ジョーンは自己の半生を振り返ることになったのであるが、やがてその人生への満足は単なる思い過ごしであり、自分は家族の誰からも愛されていないのではないか、という疑念に苛まれてしまう。
作品の中では、ジョーンの疑念は正しいことが示唆される。すなわち、ジョーンの家庭への献身は、実は世間体を気にする彼女の利益に資することが最大の目的であったことを夫や子供たちは見抜いていたのである。
エピローグで提示される結末に関して、作家の栗本薫は文庫版の作品解説において、本作品の悲劇性ないし「哀しみ」と述べているのであるが、これはおそらく正しくないと思う。本作品は、英国人の控えめさと偽善、そして空気の読めない中流女性の俗物性を皮肉った、戯曲仕立ての喜劇(コメディー)と捉えるべきなのだ。
電子書籍
謎を自ら探して読み耽る…
2022/08/28 16:30
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:PJ64 - この投稿者のレビュー一覧を見る
実年齢よりも若く美しい裕福な主婦のモノローグで、ある家族の生き様が語られる。
ポワロとミス・マープルを読んできたので新しい視点に驚きよりも引き込まれました。
殺人やトリックが無いのにミステリアスで謎めいていて
自分で謎を探して「ああ~、そうだったのか」と納得したりして。
最後まで控え目なドキドキ、どちらに展開するのかと一気に読み終わりました。
面白かったのは間違いない。
モヤモヤは残るけれど。
人生という謎に答は一つでは無い、と実感する小説でした。
さすがアガサ・クリスティ。何度も脱帽です。
ただ………愛されているヒロイン。焼け野原で一人生き残る。
それを支えるヒーロー、、愛、してるんですね。1番の驚きでしたが。
紙の本
最後まで読むと怖い作品
2022/06/19 09:07
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:たっきい - この投稿者のレビュー一覧を見る
クリスティの異色作。最後はどういうオチになるんだろー?と思いながら、読みました。娘を見舞ったバグダッドからの帰りの途中で、列車に乗り遅れたため何日か足止めをくらい、その間、夫や子供についてあれこれ思い巡らす一人の妻の空想がメインのストーリー。自分が良かれと思ってしていることが、実は他人の思想や考えを踏み躙っているということはよくあること。最後のエピローグまで読んでしまうと、怖いなぁと思わず、考えさせられる内容でした。
紙の本
身近にある世界
2021/10/06 18:46
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:マリコ - この投稿者のレビュー一覧を見る
アガサさんの作品はこれまで見たり、読んだりしてきたけど、最高傑作かもしれない。母方の家庭環境そっくりだったので。
紙の本
邦題が名訳
2021/08/22 09:53
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:H2A - この投稿者のレビュー一覧を見る
確か原題はAbsent in the springだったと思うが、それをこの邦題にしたのは名訳だったと思う。イギリスの上流階級に属する女性が、娘を見舞ってバグダッドを訪れそこから帰国する中で回想する家族との一見平和な確執の日々。最後の一文でそれがひっくり返されるわけだが、勘違い小説とでもいうのか面白く読んだ。ちなみに殺人事件は起こらない。
電子書籍
独善は自分らしさの現れ
2021/04/17 13:48
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:BenchAndBook - この投稿者のレビュー一覧を見る
独善的な人生の変遷。でも独善であることにすら気づいていない。しかし何かのきっかけでそれを思い知らされ、気付く事に遭遇する。強い悔悟の念に囚われる。これからは悔い改めた人生を送ろうと誓う。
しかしその思いに至った環境や意識から解放され日常に戻ると、その反動によって何事もなかった様に気持ちのバランスを取ろうと振る舞う。私にも同様の経験があります。人間ってそういうものかな〜と思う。
自分に関わる他者も又、そうなのでは?
独善はいい変えると、自らの価値観がそうさせるのであって、自分らしさでもあると思います。日常に戻っても、フラッシュバックの様に思い出され、きっとその後の人生にじわっと生かされるのでは。こんな事を感じさせてくれた、読みやすく面白い本でした。
電子書籍
最も見えないもの
2020/11/06 20:27
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:うみしま - この投稿者のレビュー一覧を見る
アガサクリスティーの推理小説は幼い頃から慣れ親しんだものですが、心理サスペンスとも言える本作は初めて読みました。ブックツリーに、大人になったからこそわかるということが書かれていましたが、確かに妙齢の女性ならば痛いほどわかる心理の揺らぎなのではないでしょうか。人は他人のことはよく見えるのに、なぜ自分のことは見えないのでしょうか?誰もがジョーンを責めることができないと思いました。そして、夫であるロドニーのあとがきは、冷えびえと、心に突き刺さるものの、でも、あなたにも責任の一端はあるとも反論したくもなります。そして、あなたもジョーンと同じ感覚を持っていないとはいえないのでは?とも。
紙の本
春にして君を離れ
2019/03/24 14:26
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:アナグマ - この投稿者のレビュー一覧を見る
307ページの最後の一行。
「あー」と声にならない音が口から漏れ出していった。
そうか。
そうなるのかもしれないと薄々思っていつもガツンとくる、決定的な瞬間。