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有栖川有栖読んでいて推理ものが読みたくなって手にとってみた清張。
上下巻なのでボリュームたっぷり。
撲殺された銀行員の妻の弟で若手画家の山辺修二が
兄の死の理由の真実を究明しようと奔走し、
地方銀行や宗教団体などのスキャンダルに迫っていくというもの。
きちんと取材と資料勉強して丁寧に作られているので、
まるで実際に起こっている事件のように現実に迫ってきて面白いし、
最後の着地もしっかりしつつ意外性もばっちりあってさすがの一言。
あとはタイトルセンス。
ずっとタイトルとの関係をいまいち測りかねていたのですが解説を読んで納得。
内容に直接関係ないので抜粋しちゃいますね。
『清張作品においては、組織やシステムは重要な舞台ではあるが、あくまでも人間が主人公である。人間が組織やものの奴隷になることはない。僕や奴隷になりかけても、それに必死で反抗する人間が描かれる。社会の隠花植物として陽の光りを浴びることもなく、平原の片隅に埋もれていく群像。清張自身、隠花植物としての生い立ちが低い視座から上も望むアングルに他の追随を許さぬ人間社会を結像させる。清張自身、隠花平原の中の隠花植物の一茎と悟ったとき、この作品は圧倒的な共感を持って読者の心に迫るであろう。』
この作品に限らず清張の作品には総じてこの解説が当てはまる気がします。
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どんでん返しのような呆気ない結末だった。多数の人間関係の錯綜、憎悪が底流にあり、殺人、自殺に向かわせる。新興宗教の問題もその後の事件の予見として鋭い。13.4.6
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失踪した女性の行方は掴めないまま、新興宗教団体から大作画制作の依頼が本決まりになる。しかし、次々に起こる他殺事件。そして、捜査仲間に加わる新聞社の支局記者。一方、義兄の殺害事件担当の刑事とは接触はあるが、昵懇な間柄にはならない主人公の画家。最後に思わぬ告白=遺書で、事の真相が明らかにされる。
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義兄殺人事件を追う画家の話の後編。ネタバレになるので詳しくは書かないが死人が増加していく為けっこう盛り上がる。画家が凄いのは上巻でも書いたが吉田記者の調査力も侮り難い。
真犯人が唐突かつ意外すぎて初めは理解に苦しんだがミステリーとしては面白い。
注目したいのは終盤のある一節で主人公の何気ない行動が実は殺意を防止していたという告白のくだりで、かなりゾッとした。未読だけど少し読んだ『カラマーゾフの兄弟』のゾジマ長老だかの告白に通じるものを感じた。