アンドロイドは電気羊の夢を見るか? みんなのレビュー
- フィリップ・K・ディック (著), 浅倉久志 (訳)
- 税込価格:990円(9pt)
- 出版社:早川書房
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紙の本
アンドロイドは電気羊の夢を見るか?
2016/11/14 09:44
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投稿者:によ - この投稿者のレビュー一覧を見る
おもしろかったー!
SFという物語の形を使って自分とそのあり方を考えられる、そういうのがとっても好み。
だからこれは好き。
ストーリー自体もおもしろいけど!
でも、ラストが気に食わない。最後の5ページくらいの、ラストだけ気に食わない。
(この手のハッピーエンドは嫌いなのだ。結局は悲しみを癒す手伝いをしてくれる女性がいる男の話なんて!)
でも、とてもおもしろかった。
別のも読んでみよう!
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生命は尊い
2013/08/16 23:20
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:まゆげ - この投稿者のレビュー一覧を見る
言わずと知れた1982年のSF映画「ブレードランナー」の原作。
太陽系からはるかに離れた異星系空間で過酷な労働に従事していたレプリカント(人間より優れた肉体を持つアンドロイド)は、その限られた寿命(4年?)を延ばしたく彼らを製造した地球にやってくる。
違法に地球に戻ったレプリカント達は、人間と全く見分けのつかない姿をしているため地球に来た目的を果たすために社会に潜り込む。
彼らを捕獲又は抹殺するために警察機構が雇ったハンター(賞金稼ぎ デッカードら)は、人間とレプリカントを区別するテスト(フォークト・ガンプフ法)を怪しい人物に行い、レプリカントを探し出し、追い詰めていく。
侵入レプリカントの首領は、厳しいセキュリティを乗り越えて、彼らの創造主(タイレル社の社長)に寿命の延長を依頼するが、遺伝子工学上の問題で願いが叶わないことを知る。
生き延びようとするレプリカントとその抹殺を使命とする闘いは熾烈だがその闘いの姿を見ていると、レプリカントの方が、より人間らしい生きざま・感情(生への欲求、同胞愛、死の苦しみ)を見せる。
人間もレプリカントも同じ生命を与えられた存在であり、生きることは何か・生命とは何かを考えてしまう。
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SFの代名詞
2003/07/29 12:28
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投稿者:すの - この投稿者のレビュー一覧を見る
「○○は××の夢を見るか?」なんて、いろいろな場所でパロディにされている名作といえる。
外国語で書かれた作品は苦手だ。言葉も文化も違うのに、日本語で表現するからどうしても不自然なのである。そういう意味で、日本の作家さんの方が読んでいて楽しいのだが、これはやはり名作。
ストーリーは有名だと思うのでここでは特に紹介しないで、最近この作品で思い出したことを書かせていただこうかと思う。
現在の科学&医学は鬱だとか引きこもるとか性格の延長線を、脳の情報伝達物質が足りないとか多いとかで一生懸命説明するわけで、抗鬱剤なんて薬もある。遺伝子的に、なんて話になったら鬱を治すウィルスなんてのも出てくるかもしれない。
そしてこの小説の最初では、感情をコントロールする情調オルガンという機械がでてくる。そして、主人公の妻は、自ら自虐的抑鬱をセットする。絶望しないことが不自然だからといって彼女はわざわざそのチャンネルを探し当てたのだ。
なんだか、近いうちに似たようなことをしそうだと不安になることがある。
個性と病気の境界線、生命と非生命の境界線、有りとあらゆる境界がどんどん曖昧になって、人は不安になるのかもしれない
そういった要素をすべて含んだ作品である。
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現代の抱える病への先見性が光る
2023/10/11 11:01
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投稿者:ブラウン - この投稿者のレビュー一覧を見る
不朽の名作に名を連ねる一冊は読まねばと思い、思い出したら手に取るようにしている。
正直、終始のシーンがどう繋がっているのかわっかんねえなあ、と思いながら読み終えたが、作中に散りばめられた要素は光るものを感じた。心理状態を調節するマシン、他者との共感性に浸れるマシン、荒廃した地上では動物が激減していて人間性を維持するために動物を飼うのがステータスになっている社会。放射能汚染による後天的な障碍者たち。パッと思いつくだけで、現代の病巣が満載だ。
火星から脱走したアンドロイドたちは、共感性に乏しいとされる。身体構造的にも明確な違いがあるとされるが、それもいずれ克服されると作中で示唆された。そのとき、生命と機械の境界は一体どうなるのだろう。両者の見分けがつかなくなったとき、人は安らげる時代に至れるのだろうか。
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映画とはかなり異なる
2020/06/20 23:11
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投稿者:のび太君 - この投稿者のレビュー一覧を見る
映画とはかなり異なる。私は映画版の方が好きだった。技術がどうなっているかと言うことよりも精神的な方をかなり重要視していると思った。
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何よりタイトルが傑作
2003/10/27 19:03
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投稿者:紅豆 - この投稿者のレビュー一覧を見る
とっても「映画的」な作品です(それもアメリカ映画ね)。
ぱきっとした起承転結とか確立された世界観が、映像化されたら映えるんだろうなあ・と思ってたら既に映画化されていたのね。失礼しました。
機械の心とか命とか、今では映画でも小説や漫画でも珍しくもなんともないテーマですが、この作品はとにかく世界観が秀逸なのです。
冒頭に登場する「感情をコントロールする機械」など、生々しい設定が素敵。
私の頭の中では、竹宮恵子の「地球(テラ)へ」とリンクしました(笑)
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アイデンティティがゆらぐことの「不気味な気持ちよさ」
2007/08/04 20:13
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投稿者:木の葉燃朗 - この投稿者のレビュー一覧を見る
設定と物語の進む過程が面白い。舞台は地球。しかし、多くの人は他の惑星に移住し、残っているのは信念を持って移住を拒否する者か、移住に適さないと判定された者。そして地球には、人間そっくりのアンドロイドが生息し、人間のアイデンティティを守る(アンドロイドと人間を区別する)ためにアンドロイドを狩るバウンティ・ハンターが職業として存在する。
主人公はバウンティ・ハンターのリック・デッカード。彼がアンドロイド狩りをしていく様子を描いた場面は、ハードボイルドのような雰囲気を持っている。一方で、「共感ボックス」という装置を握ることで、同じ行為をしている人、そして教祖のウィルバー・マーサーとの一体感を感じるマーサー教や、マーサー教と対立するテレビ・ショウ、更にはホバー・カーやレーザー銃などの道具立てには、SFらしさを感じさせる。
しかしこの小説が一番面白かったのは、登場人物のアイデンティティがゆらぐ様子だった。デッカードは、アンドロイド狩りの中で、アンドロイドと人間との区別がつかなくなっていく。そのきっかけは、彼が狙ったアンドロイドが人間ではないかという疑いが生じる場面。そして、デッカードはアンドロイドに対しても人間と同じような感情を抱いてしまう。一方、そうした葛藤もなく、冷静にアンドロイドを破壊していくバウンティ・ハンター、フィル・レッシュも現われ、デッカードはますます混乱する。
このあたり、読んでいる方としても、誰が本当に人間で、本当にアンドロイドなのか、疑心暗鬼になってくる。レッシュはアンドロイドかもしれないし、アンドロイドに愛情を感じるデッカードこそアンドロイドかもしれない。また、彼らの狩ったアンドロイドは果たして本当にアンドロイドなのかも分からなくなってくる。この、登場人物のアイデンティティのゆらぎが、「不気味なのだが気持ちいい」という気持ちになる。くらくらするような気持ちよさというか。
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残虐なのは一体だれ?
2007/09/29 22:26
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投稿者:スクラップレビュワー3216 - この投稿者のレビュー一覧を見る
1968年ディックが描いた1992年では、ソ連は未だ崩壊していない様だ。夜空に星はなく、あるのは核の灰が漂うのみ。流れ星の代わりに、ホバーカーが飛んでいる。三次大戦を生き延びた人間たちの最大の贅沢とは?絶滅寸前のペットを飼う事だった。
ガキの頃のプラモデルを思い出した。苦い思い出た。頭の中に理想のイメージがあって、それに近づけようと組み立てていく。しかし、不器用でなかなか思い通りにいかない。最後には癇癪を起こしぶっ壊してゴミ箱に捨ててしまった。
作中アンドロイドが、蜘蛛の脚を残酷に切り裂くシーンがあった。
やはり僕のガキの頃、友人の間では爆竹の実験台にカエルを使うゲームがあった。僕も醜い毛虫がなんか許せなくて、火炙りにした事がある。幼かったな。近所のオッサンが叱ってくれた。ただ違いが良く分からなかった。家に帰ると母親はゴキブリを必死で叩きのめそうとしてた。
どうやら同情する価値のある生き物とそうでない物が、あるらしい。学校に行くと先生は、頭の良し悪しで決まるんだよ。ってコレもよく分からなかった。ある日、給食メニューからクジラがなくなった。…美醜?超音波?曖昧だな。
「切り裂きジャックや殺人者は、人間じゃない」という表現は
論理的ではない。正しくはこう
「彼ら殺人者は、人間で在って欲しく無い」という願望に過ぎない。
残虐・共感という価値観を作ったのは人間だ。そしてロボットを設計するのも、やはり人間。それらが噛み合わないからといって、削除しようとするのも人間か…。本当に残虐なのは一体だれなんだ?歴史をヒモとけば、残虐な人間の例なんて吐いて捨てる程いる。
いや違うな。「残虐」探しはどうでもいい。そんなのは何処にだって在る。昔から残虐も共感も人間の中に同居してる。問題はその矛盾をどう制御するかだ。昔コロッセオを楽しんだローマ市民も。いま日本で格闘技番組が視聴率を伸ばすのも。「動機は全てスポーツだ」なんて言い切るほど、僕はもうウブじゃない。
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三十年前の作品と考えればきわめて先駆的な存在だと思う。
2012/07/08 07:44
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投稿者:たけぞう - この投稿者のレビュー一覧を見る
映画「ブレードランナー」の原作とのうたい文句がなければ手に取らなかったかもしれない。映画は見ていないが、評判ぐらいは知っている。
残念ながらタイトルが分かりにくい。直訳すぎる。この本の唯一の難点と思う。アンドロイドの夢の中に、電気羊がいっぴーき、にひーきとなんで飛んでいるのか意味が分からなかった。
原題は、Do Androids Dream of Electric Sheep? 読後の雰囲気では、素人意見だが「アンドロイドは電気羊を夢に思うか」の方がしっくりくる。
本文は極めて読みやすい。原文がシンプルなのかもしれない。外国小説特有の相手を変に持ち上げたりとか、うわべの友情もどきのしつこい会話とかが少なく、疲れなかった。
少し脱線する。文化的背景の違いから、どうしても翻訳小説の世界に入れずに残念な思いをしたことが多々あるため、私は翻訳後の表現に案外こだわってしまう。インターネットのみんなの相談室なんかで、そんな時は原文を読めばいいなんて回答を見たことがある。その意見には少々疑問がある。英語を読みたい人はそれでいいのかもしれないが、その国の居住経験が長い人は別として、小説として理解するためには英語をすらすら読めればよいのではなく、文化的な違いを踏まえつつ日本人の発想に根ざすような感覚で理解しなければならないと思うのだが。
だから翻訳家の人はすごいなあ、といつも思う。英字新聞で実例を見たことがあるのだが、なぜこの文章がこうなるの、とただの英語屋ではおよびもつかない作業にあふれている。そういった意味では、この本は当たりだ。
第三次世界大戦後、地球が放射能の灰に汚染される。可能な人は火星などに移住し、国連は促進させるためにアンドロイドを一体ずつ移民に無償貸与する。アンドロイドの中に逃亡を図るものがおり、それを逃亡先の地球で、警察の雇われ賞金稼ぎが探し出していく物語だ。アンドロイドとは人造人間のこと。この小説ではメーカーが限りなく人間に近づけた型式を製造したために、探索が困難な状態で賞金稼ぎが苦闘している。アンドロイドがあまりにも精巧すぎるがゆえに、果たして人間なのかアンドロイドなのか、混沌とした意識や感情に飲み込まれる展開をたどる。
テーマは、混沌の中から人間とは何かを浮かび上がらせることのように思う。深くて重い。宗教指導者や、放射線障害者も登場させ、いろんな角度から考えさせられる作品だ。
ラストは、日本人である私にはすぐには理解できなかった。解説の中に外国人の書評が引用されており、ハッピーエンドに泣くとあったが、これぞ文化の壁。何がハッピーなのか、もう一回読んだら分かるのかなあ、と不思議に思った。
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オリジナルの実力
2003/07/29 12:51
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:すまいる - この投稿者のレビュー一覧を見る
有名SF映画『ブレードランナー』の原作小説。ご覧の通りの魅力的なタイトルの作品で、映画版でのタイトル変更は必要なかったのでは? とすら思えてきます。
放射能に蝕まれた第三次世界大戦後の地球では、生の生物(なまのいきもの)がとても貴重で、動物を飼ったりするのはステータスにすらなってます。たとえばアンドロイドハンターの主人公なども、本物の羊を飼うのを夢見つつ、電気じかけの羊で我慢してたりするわけです。まあ、そこいらじゅうアイボだらけの世の中って感じでしょうか(笑)。
主人公は脱走したアンドロイドを捕まえるというか、狩るのを生業にしているのですが、彼は、アンドロイドたち、そして、それをとりまく人間たちと関わっていく過程で苦悩します。例えば「もしかして、おれっちもアンドロイドなのかも?」なんて、思いはじめたりもするわけですね(笑)。
「アンドロイドである」とはどうゆうことなのか? 「人間である」とはどうゆうことなのか? 映画での疾走感とは一味違う、哲学的な思いにふけることが出来る一作です。映画版をすでに観ているかたでも、充分に楽しめる一冊です。
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ブレードランナーの原作
2022/05/30 22:47
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投稿者:2‐3 - この投稿者のレビュー一覧を見る
人間に紛れたアンドロイドを始末するハンターだある主人公を通してディストピアと化した世界を覗いていく。
アンドロイドは共感する能力が無い事が強調されているが、同時にこのせかいの人間も機械を使って同じユメのようなものを体験することで共感を得ていることが示されている。
現代に置きなおすと同じドラマとか映画を見たという事で共感を感じるのを極端にした感じかもしれない。
現実の問題に当てはまる要素もちりばめられており、偶に思い出して読むと自分の受け取り方が変わり何度も楽しめる
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昔の今風SF
2020/12/07 21:36
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投稿者:くみみ - この投稿者のレビュー一覧を見る
精巧なアンドロイドと、それを作る人、それを管理する警察の心の葛藤が興味深い1冊。人を装うアンドロイドを見抜く検査方法などとても興味深かった。昔の作品と思うと尚凄みが増す
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神なき世界の愛
2020/07/12 09:53
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投稿者:Todoslo - この投稿者のレビュー一覧を見る
3度の世界大戦を経て、超高性能アンドロイドが誕生した近未来が舞台です。人間の存在意義が問われる中で、迷いながらもひとつの決断を下すデッカードに心を揺さぶられます。
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一度読むだけでは完全に理解はできないストーリー
2013/02/22 11:10
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投稿者:凡人 - この投稿者のレビュー一覧を見る
某アニメにて登場人物が勧めていたので購入し読んでみた。
ところどころ注釈なしで訳の分からない単語が出てくる(墓穴世界など)ため、その度に手が止まることが多かったが、全体としておもしろい作品であった。
ヒトとアンドロイドの境界がぼやけていく主人公にはある種の共感も覚えた。
ストーリー自体をなぞっていくことはたやすいが、この本での著者の主張を完全に汲み取るためには、二度三度と読み返さなければならないと感じる。
兎にも角にも、一度手を取って読んでもらいたい作品である。
紙の本
人間は他人を傷つける。しかし愛することもできる。
2010/01/07 02:37
34人中、34人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:yjisan - この投稿者のレビュー一覧を見る
第3次世界大戦後、放射能灰に汚染された地球。そこでは生きている動物を所有することが地位の象徴となっていた。人工の羊しか持っていない賞金稼ぎリックは、「本物」の羊を手に入れるため、火星から逃亡してきた<奴隷>アンドロイド6体の首にかけられた莫大な懸賞金を狙って、命がけの狩りを始めた!・・・と、粗筋だけ書くと、何やら安っぽいアクションSFのようになってしまう。それが本作である。
映画『ブレードランナー』の原作として有名な作品。相変わらずディック節が爆発していて、読みにくいことこの上ない(ディック作品の中ではマイルドな部類に属するが)。先行SFで使い古された陳腐な小道具。あまりにも嘘っぽく、作り物めいた作品世界。物語の論理的整合性を無視した、勝手気ままで強引な展開。話をまとめることを拒否するかのような、突き放した結末。だが、ディックにプロットの巧みさを求めるのは間違っている。
ディックの真骨頂はグロテスクな世界が生み出す不気味な迫力と、作品の思索性にあるのだ。「ディックの描く未来世界は我々自身の世界の歪んだ鏡像だ」と言われる所以である。
本作では外面では見分けのつかない人間とアンドロイドとの識別に感情移入度テストが用いられている。アンドロイドは他者の喜びや痛みに共感することできず、それゆえに残虐であり、自分の生存のためには仲間も平気で裏切る、と言われてきた。しかし感情移入度テストでは判別できないアンドロイドも出てきてしまう。
人間だと思ったらアンドロイドで、アンドロイドだと思ったら人間。そんな経験を続けるうちに、「人類社会の敵」として何の躊躇いもなく逃亡アンドロイドを殺戮してきた主人公リックは、次第に標的アンドロイドに同情し始め、重大な疑問に直面する。自分たち人間と彼らアンドロイドはどこが違うのか?
人間よりも人間らしいアンドロイドがいる。一方でアンドロイドのように無慈悲な人間もいる。アンドロイドであるというだけで、「社会への脅威」として虐殺することは果たして正しいことなのか? 自分の仕事は、この社会は何か間違っていないか? リックはアンドロイド狩りに疑念を持ち始め、あまつさえ自分に協力するアンドロイドを愛してしまうのだ。そんな葛藤の中、リックは……
ここに至っては、神の創造物として自然に生まれてきたか、人工物として造られたかは、本質的な問題ではなくなる。感情移入できれば人間、できなければアンドロイド。逆に言えば、人間して生まれてきたとしても、感情移入能力がない者は真の意味で「人間」とは言えないということである。真の対立軸は人間/アンドロイドではなく、人間性(親切=善)/アンドロイド性(冷酷=悪)なのだ。
ハインラインやアシモフの作品のような、「よくできたお話」が好きな人には向かないことは確かである。しかし、ぜひ避けずに読んでほしいと思う。それだけの価値がある本であることは間違いない。現実の不条理性と怪物性を縦糸に、人間性を横糸にして織りなす、思索の世界が待っている。