紙の本
お札になる顔とは
2019/05/08 16:49
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:夏の雨 - この投稿者のレビュー一覧を見る
経済小説というジャンルのパイオニアである城山三郎が1971年(昭和46年)に一年間に渡って毎日新聞に連載した新聞小説がこの作品の初出である。
主人公は「わが国屈指の実業家渋沢栄一」で、連載時は「寒灯」と題されていた。
連載の翌年には早くも単行本として刊行されるが、その際にこの「雄気堂々」という題名に改題されている。
新聞連載前に城山は「渋沢栄一という人間の内側にはいいて、実人生をつぶさに学んでいく小説」を目指したと書いている。
渋沢栄一は1840年に埼玉県深谷市血洗島に生まれ、1931年11月に91歳で亡くなっている。
城山のこの作品は伝記文学でもあるが、最初の妻である千代が亡くなる1882年までの人生を描いたものである。
渋沢は城山がいうように「わが国屈指の実業家」であったが、生涯「武州血洗島の一農夫」を貫いたといわれる。
今や渋沢は新しい一万円札の肖像画にも採用されるほど有名になったが、そんな渋沢のことをこの上巻の中で城山はこう描いている。
「まる顔に太い鼻っ柱。下り目の眉。柔和な目は、右がやや小さい。そして右の口もとに、ガンを手術したくぼみがある」。
そんな渋沢がどんな時代を生きた人であるかは生まれた年をみればいい。
1840年は天保11年にあたる。つまり、時代はまさに激動の幕末から維新に移る頃である。
この上巻では攘夷派の志士を目指すも運命の糸に操られるように幕臣の一人となり、徳川慶喜の弟の随員としてパリに留学、帰国後新政府の役人に迎えられるまでの半生を描いている。
「一農夫」がいくら才覚があったとしても新政府の役人までにもなるのであるから、明治維新というのはそれだけでも面白い時代といえる。
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滝田さんが主役の渋沢栄一役で出演したTVドラマの原作本です。渋沢本人とはずいぶんイメージが違いましたが、骨太の良いドラマでした。
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明治財界の巨人渋沢栄一の伝記小説。過激攘夷派から一橋家臣、大蔵官僚、そして財界のリーダーへ。渋沢自身を追いかける物語もテンポよく、非常に面白く読ませるが、渋沢が関わっていくリーダーたち、慶喜、西郷、大久保、大隈・・・の個性がくっきりと描かれていて、それも楽しかった。
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お勧め。若い人にこそ勧めたい。
江戸末期と、維新、明治がつながります。
加えて、竜馬や西郷さん、他の維新の志士たちに
関する書籍も読みたくなること必須。
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生涯に設立に関わった事業の数は約500、キリンビール、みずほ銀行・・・日本が誇る実業家である渋沢栄一の生涯をつづった本。晩年は慈善事業など、公益のためにつくした。その功績が認められ、百姓出身にもかかわらず子爵を与えられている。著者は、経済小説の第一人者である城山三郎。
(小谷)
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城山三郎による渋沢栄一伝。淡々と事実が書かれているのかなと思ったら良い意味で裏切られた☆非常に面白い。渋沢栄一以外の人物も上手く書かれていました。15代将軍とか。下巻も楽しみです。
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"設立し関係した企業五百,同じく関係した公共・社会事業六百"といわれる日本最強の建白鬼,渋沢栄一の伝記.
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幕末がメイン、主人公の若き日を知る事が出来る。
ただ、一般的な幕末の話とは違い、幕末モノとしてはイマイチ。
後半から徐々に明治に大活躍した主人公の話になり下巻に期待。
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渋沢栄一は江戸時代末期の武州血洗島(現在の埼玉県深谷市)に農夫の息子として誕生。倒幕攘夷の気風に右往左往しながらも一命をとりとめ、試行錯誤の中で自身の生きる能力を培い欧州視察の機会を得ます。フランス滞在中に大政奉還が行なわれ、帰国後は自身の経歴と人の縁から活躍の舞台を勝ち取っていく姿が...
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岩田(@ganchanxxx)のおすすめ。
三井・岩崎(三菱)・住友・古川・大倉などの大財閥の一族に伍す大財界人、渋沢栄一の伝記。
百姓から志を抱いて立身出世していく渋沢の現実主義ぶりに惹かれます。
-my bookdarts-
貴賤貧富の別なく、人間には物事のけじめが肝要だ。最初のところをおろそかにすると、万事に気がゆるむことになる。ずるずると、奢侈の気持ちがひろがって行く。こういうのを、奢侈の漸というのじゃ。
妙なこだわりをいつまでも持ち続けない。理想は抱きながらも、その段階段階に応じて、最高の生き方を選んで行く。その意味で、栄一はあくまで現実主義者であった。
「人間、どうせ一度死ねば、二度とは死なんからな」
「精神だけではあきたりぬ。実が伴わねばうそだ」というのが、その後、栄一の一生を貫く態度になった。栄一は、いつも、方法を、効果を、問題にした。
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渋沢栄一の生涯を追った小説。日本経済のまさに礎を築いた人の志・思考が知りたくて読了。興味深かったのは信じる理想に対して徹底的に結果を求める”老練”さ。時代や環境のせいにせず、自分の求める結果を得るために状況を変えていく、そういう仕事に仕方を徹底した人なんだと強く感じた
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日本経済の礎を築いた渋沢栄一を、経済小説の分野を確立した城山三郎が描いた作品。
農夫から攘夷の志士となり、幕臣、新政府の官僚を経て日銀の総裁となる。日本の資本主義の父とも言える人。
一筋縄ではいかない時代をその才覚で生き抜き、自身の富を築くよりも国の繁栄を願うその姿は奇跡のように思える。
今の時代にこんな才覚を持った人がいるのだろうか?
なにかしらの仕事に携わる社会人、男性女性問わず読んで欲しい。
読み終えたとき、視野がひらけたような感覚を感じると思う。
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渋沢栄一の青年期から、慶喜に仕えた時代。
過激な攘夷派がなんやかんやと機会をそがれ、ついに幕臣になり倒幕後に政府に出仕するまで。
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近代日本最大の経済人渋沢栄一の一生を鮮やかに描いた伝記文学の上巻。上巻は出生から新政府に「租税正」として出仕するまで。常に自ら仕事を創り出す姿勢から周囲からは「建白魔」と呼ばれる。その姿勢は平岡円四郎、一橋慶喜、大隈重信といった要人に認められ、様々な組織で改革をなしていく。情熱だけでは世は動かせず、効果性を重要視する信条を筆者は「老練」と評し、これが栄一の強みであることが随所に描かれている。
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城山三郎の著書リストを見てて、ずっと探してた。
なかなか無かったけど、浜松のイトーヨーカドーで発見。
筋。
渋沢栄一の伝記小説。
あんな英傑が出たのは、時代のせいだけじゃないよね、という話。
もともと農民なんだけど、あの時代の農民はあまり貧しくないのね。
一人息子の長男で、おっとり育って。時代に奮起して、焼き討ちを企てるくらい尊皇攘夷に燃えて。でも、頭で理解できたら、筋を通すよりも正しいことをする。すごく冷静。人への判断も確か。明治維新の綱渡りさがよくわかるし、その中で実業家としてできることをやり抜いたのが本当にすごい。物語の底を淡々と流れる、千代の生き方もすごい。あー、すごい。