紙の本
新田次郎の直木賞受賞作品
2008/09/15 18:45
4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:MtVictory - この投稿者のレビュー一覧を見る
直木賞受賞(昭和30年)の処女作「強力伝」を含む、作者初期の6つの短編集。舞台こそ違うが、いずれも極限の状況に置かれた人間が懸命に何かをやり遂げよう、または生きようとする姿が迫力をもって描かれている。
ここでは「強力伝」を取り上げる。強力(ごうりき)とは文字通り重い荷物を背負って高い山の上に物資を運ぶ人のこと。主人公の強力・小宮は富士山の優れた強力として活躍した人物(実在のモデルがいる)。その怪力ぶりから白馬岳山頂に風景指示盤用の重さ50貫(約187Kg)もある石を運ぶ依頼が彼にきた。人間の力だけでその石を2個も山頂に運び上げたこと自体が信じられないが、それをやり遂げるプロ根性は自らの命を縮めることにもなったようだ。相手は巨石だけではなく、白馬岳の険しい山道と雪渓が、その仕事を更に過酷なものにした。死と向き合いながらの石との、そして山との格闘の描写が痛々しいほどに鋭い。
1999年の秋、私も強力の小宮も通った滑りやすい雪渓を恐る恐る渡り、白馬岳の山頂を踏んだ。確かに山頂にはそこから展望できる四方の山々を描いた円形の風景指示盤があった気がする。が、それが彼が運んだものであるかどうか、なんてことなど気にも掛けようがなかった(この本で初めて知ったことだから)。まさか人間の力で運んだなんて想像もできない。平地を運ぶのとは訳が違う。こんなことを成し遂げた豪傑がこの日本にいたことを誇りに思える。
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有名な山の山頂で何気なく見かける方位盤、白馬岳の頂上で見た方位盤の土台の石を麓から担ぎ上げた強力という仕事に生きた男の物語
等、短編集
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「強力さん」の話。
高いプライド、苦しい苦しい話で、自分も一緒になって大岩を持ち上げてる気分におちいってしまった・・・
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「孤島」暗い、暗い、暗い。
気象観測で無人島の事務所にいるのだけど、あまりに何もない島で娯楽のなく淡々と職務をこなし、あとは暇つぶしを考える人々たち。
1965年。今だったら、ネットもあるし、きっとゲームしたりネットサーフしたり、天国だろうなぁ。と反感を持ちながら読んだ。
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強力伝を読む.白馬岳に180キロの風景指示版を担ぎ上げる話.明日から白馬を眺めにいくので(残念ながら登山はなし)思いついて読んだ.
重いものを運び上げる時の筋肉,心臓の描写が迫真.すごい.もちろん,私は180キロを持ち上げたことはないが,肉体の軋みが伝わってくる.
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第34回の直木賞を受賞した「強力伝」を含む短編集である。昭和30年代に書かれた古さは感ずることなく、冬山の怖さが伝わってくる。
「強力伝」の他に、「八甲田山」、「凍傷」、「おとし穴」、「山犬物語」、「狐島」があり、「おとし穴」については、人が危機を脱して安心した時ほど危険である事、’’勝って兜の緒を締めよ’’とは良く言ったものだと思った。
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2014年7月27日に行われた、第17回ビブリオバトルin生駒で発表された本です。テーマは「海・山」。 チャンプ本です!!
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引き締り緊張感のある文体。まるで目の前で事が展開されているような緊迫感。
まさしくこれはよく出来た短編ハードボイルド小説集。
直木賞を取った「強力伝」も良いが、思わぬ事で落とし穴に落ち、狼と相対する事になった男を描いた「おとし穴」が秀逸。二進も三進も行かない状況でも、お金の事を考える人間の性と狼との対決の緊迫感はただものではない。また、そのラストにも衝撃を受ける。
今まで新田次郎の長編作品は何作か読んできたが、短編集は初めて。もしかしたら氏の本分は短編にあるかもしれないと感じさせる作品集であった。氏の気象官としての経験も存分に発揮されている。
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自然の中でひたむきに生きる人々を描いた短編集。読み進めて見えてくるのは、山、自然の厳しさにどう立ち向かうかというよりは、自分自身としてどう在りたいのか問い続ける人々の姿だ。
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時代設定がさすがに古いが面白い。
ただ、専門的すぎるのか描写から情景がイメージしづらく、なかなか入り込めなかったのが残念。
小手先の工夫ではない表現は好感。
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強力伝を読みたくて、借りて、読んでみたが、思ったよりも期待はずれ、普通の逸話のような感じだった。でも、山犬物語は、江戸時代の村の様子が書かれていて、面白かった。また、孤島は、青い空と青い海とすがすがしいものを期待していたが、面倒な人間関係が主で思ったよりも面白かった。
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「剱岳・点の記」「孤高の人」以来の新田次郎作品。今回はデビュー作を含む短編集。一番古い作品はなんと昭和26年!最早国語の授業で使われてもエエ的な時代格差である(笑
山好きなんで「強力伝」「八甲田山」「凍傷」が気になって借りてみたんだけど、特に「強力伝」は良かった。
巨匠新田次郎とはいえ、これはデビュー作。稚拙な書き込みすぎる部分が随所に垣間見れるけど、その磨かれていない粗っぽくガツンガツンとした手ごたえの文章が、強力のすさまじさに良く似合っている。
でも、この本の中で一番良かったのは「おとし穴」。舞台が現代じゃないんだけど、短編小説ならではのスリリングさが素晴らしい。古き良き欧州テレビ映画とか手塚治虫の短編とか怪奇大作戦の1話の原作として、視覚で楽しんでみたいなぁと思わせる秀作である
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実話ベースの短編。短編なのでいろいろ端折ってるんだろうけど、取り上げられてる内容が面白く、もっと知りたい、その山を登ってみたいと思わせてくる。白馬岳登りたい。芙蓉の人を読みたい。八甲田山の映画は観た。
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知られざる男達の戦いに絶句。今の時代があるのも使命に燃える先人達の命がけの事業があっての事なのだと深く畏怖を覚えた。オススメ。
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八甲田山を読んだついでに…というと語弊があるが、その昔マンガ化されたものを読んだことのある「強力伝」を読んでみたくなり、購入。
マンガはとにかく非常に力強く、そして何ともやりきれないような結末だった、ような記憶があった。そういう思い出的な記憶は、読み返してみると「な~んだこんなもんだったか」と思ってしまうことも多いのだが、この本に関しては、迫力ある筆致に印象を新たにした。50貫(約187kg)を背負って白馬岳に登る…だなんてなぁ。これも怖い怖い小説である(とは言え実在のモデルがいる)。
ちなみに、今調べてみたらマンガは池上遼一の手になるものだったようだ。懐かしいな。