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新装版 虚無への供物(下) みんなのレビュー

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一般書

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みんなのレビュー105件

みんなの評価3.8

評価内訳

105 件中 1 件~ 15 件を表示

紙の本

架空の“光る薔薇”の、おそらくは決して咲くことがない花の姿を思い浮かべるように、ふっと遠い眼づかい(本文389Pより)——それは、おそらく中井英夫のまなざし

2004/07/06 17:23

4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:中村びわ - この投稿者のレビュー一覧を見る

 中井英夫という作家が小説につけるタイトルは、『人外境通信』『悪夢の骨牌』『真珠母の匣』『名なしの森』という具合に、どれもその幻想世界を彷彿させる誘惑に満ちた妖しげな光を放っている。なかでも『虚無への供物』は、また何とスタイリッシュな題名ではないか。
 かれこれ20年の昔から「かっこいい」と思いつづけているが、この言葉はポール・ヴァレリーの詩篇「『虚無』へ捧ぐる供物にと 美酒すこし 海に流しぬ いとすこしを」からきており、中扉のタイトル下に添えられている。1950年代は欧州を虚無が覆い、実存主義の虚無との闘いが展開されている。フランス文学に親しんだ作家には当然その辺も射程に入っており、50年代の日本の閉塞感が重ねられていたことだろう。
 しかし、この題は決して社会的な音としては響かない。ただひたすらに、哀感に満ちたものに対峙する孤独な人間の営みの残響だけが伝わってくる。
 中扉をめくると献辞もある——「その人々に」と。洞爺丸転覆事故のような人為的災害の犠牲者たちに捧げられたのか。虚無の時代をともに生きた人びとに捧げられたのか。あるいは、孤独な人間の営みの残響を感じ取れる人へ向けられた言葉なのかもしれないとも思う。

 部屋の住人の名前に合わせてインテリアの色がコーディネートされている。部屋から部屋、色の符丁を伴いながら殺人事件が起きていくのだが、そこには目黒や目白といった五色不動、薔薇の花などの色彩がにじまされる。色に集中して読み進めると不思議な位相が浮かび上がってくるかもしれない。
 色のほかにも探偵小説やらシャンソン、東京の地誌に植物の系統分類、呪術に力学の平衡式などの多彩な要素が、どこかお茶目な登場人物たちの、都会的なポンポンポンとした調子の会話を滑らかに進めていく。

 色の符丁ということにも少し絡むが、今回再読してみて私が気に留めたのは、探偵気取りでザ・ヒヌマ・マーダーに首を突っ込んでいる奈々村久生というチャーミングな女性の造型である。それを性格や仕草、行動で描いていくに当たり、まず着ている物から彼女のあでやかさ、存在感を演出してしまうのが素敵だ。
 男性読者の多くはヒロインを前にして「どんな体をしてるんだ?」と考えるであろうから、たぶんこのような読みは女性読者の楽しみだろうと思うのだが、性的な場面なくしてそういうところでの描写で読ませてしまうのは、やはり作家の性的興味の問題であったのだろうか。
「ざっくりした黒白の七分コートに、緑の革手袋を脱いだところで、白い手と、化粧のない顔とが薄明りに浮いている(上巻13P)」「きょうは、正月以来、久しぶりの和服で、光琳風の飛び模様を染めつけた上代に、違い菱を織り出した銹朱に金の糸錦の帯、綸子の長襦袢が袖口からほどよくこぼれようというあしらいなので、せいぜいつつましい顔で控えていたが、(下巻253-254P)」「ダーク・ローズのお召に、金と黒のフランスレースを思わせるような豪奢な縫取りを見せた訪問着の久生も、優しい微笑を忘れず、(下巻324P)」——外衣から、場面ごとに応じて変わる彼女の内面の状況をさらりうかがわせることに成功している。

 読み終えた読者にまたの再読を誘惑するこの小説の魅力は、司法では裁き切れない犯罪の実相とともに、論評では語り尽くせない幻惑性をふんだんに盛り込んだことなのだろう。

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紙の本

「殺人淫楽」という言葉が出てきますが、それがなかなかふさわしい怪異な物語です

2005/11/21 22:44

4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:yukkiebeer - この投稿者のレビュー一覧を見る

1954年、洞爺丸沈没事故で両親を失った蒼司・紅司とその従弟の藍司。悲しみにくれる間もなく、さらに紅司が入浴中に死体となって発見される。浴室は完全な密室で誰かが侵入した形跡はないが、果たして彼の死は本当に自然死なのか。蒼司の友人である俊夫、その許婚の久生、そして友人亜利夫ら素人探偵は、この密室事件を殺人と断定して真相を推理していく。しかし真相にたどり着く前に第二、第三の事件が発生していく…。

 上下巻で800頁超もある大作ですが、文章は平易でぐいぐいと引っ張られるように読んでしまいました。1964年に書かれたこの作品は、最近の社会派推理小説のような骨太な正統派ミステリーというよりも、一時代前の乱歩や正史といった作家が築きあげた妖美な怪異譚という趣の物語です。下巻399頁にヘッセの「デーミアン」の名が引かれていますが、まさにあの小説のように、「あやかし」と形容するが相応しいほど浮世離れした淫靡な美しさを見ます。

 私はさほどミステリーには詳しくありませんが、こうした懐かしき時代に属する探偵推理物語は必ずしも多くの読者を現代に獲得することができないのではないでしょうか。熱烈なるファンを得たカルト的要素を含む小説であると同時に、最近のミステリーファンを寄せつけないところが多分にあります。

 ですから「推理小説史上の大傑作」という謳い文句は誤解を与えると思います。むしろ怪奇趣味に溢れた、奇妙な浮遊感をずっと味わいながら読む作品といったほうがふさわしいのではないでしょうか。

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紙の本

奇書ではない

2024/02/21 16:22

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:栄本勇人 - この投稿者のレビュー一覧を見る

(ややネタバレ)犯人がいることが分かってしまうが、特殊な動機は納得のいくものであった。読み終わると全体の筋の美しさに関心するが、やや冗長に感じる。簡潔にしてしまうとこの作品である必要はなくなってしまうのだろうが…。

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2004/09/28 23:07

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2006/02/20 19:54

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2006/08/08 03:27

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2006/08/07 00:51

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2007/06/11 22:56

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2007/06/24 16:33

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2007/10/03 15:11

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2008/01/13 22:29

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2008/06/05 23:26

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2008/07/28 10:42

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2008/09/11 13:03

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2008/12/31 21:13

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