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紙の本
「私人」としての医者の姿が見える。
2008/11/17 16:39
5人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:銀の皿 - この投稿者のレビュー一覧を見る
「人々は精神科の領域を世界地図のようなものだと思っていられるかもしれない」。開いてみた最初の話「虹の色と精神疾患分類の事」の出だしがこんな文章だったので、精神の病気と認識論?と思って読んでみた。著者は精神科の医師である。
認識論的な話はこの章だけで、他は医師の「一寸専門外の」体験談、といったところであろうか。(調べてみたら、著者のエッセーはみすず書房から幾つか出ているらしい。)
「院内感染に対する患者自衛策試案」「昏睡からのサルヴェージ作業の試み」「ガンを持つ友人知人への私的序言」「SSM,通称丸山ワクチンについての私見」「軽症ウイルス性脳炎について」と、それぞれの章の間には特に関連はない。しかし、「そういうみかたをするお医者さんもあるのか」「お医者さんでもそういうみかたをするのか」と興味深い話がそれぞれにあった。「一般にはそう扱われているが、自分の場合は」というような、医師の知識・経験をもった私人、の姿が正直に描かれている。
たとえば「丸山ワクチン」についての話。実際に丸山博士に会った人も少なくなってきた、ということで書かれた御自分の体験談であるが、具体的な入手方法、手続きなど、参考になる方もあるかもしれない。公的には「ガン治療薬」ではない丸山ワクチンを「教授がガンになると助教授が日本医大付属病院ワクチン療法研究施設に走ってワクチンをもらいうけてくることを知ったからで、これではダブル・スタンダードではないか、と思ったp95」という話などは、著者のとても率直な感想であろう。(発想の方向は違うが、なんとなく「自分の家で食べる作物は農薬を減らして別に栽培している」農家のような印象をうける。)
病名や処置法などに少し専門的な語彙が入るので、全くの知識なしでは少し読みづらいかもしれない。しかし近く(自分自身も含めて)に関係のある人がいたりすればかなり身につまされる内容も多い。
これらの具体的な病気の話とは毛色が異なるが、個人的には「認識論的な」最初の話もやはり面白かった。「病気はいろいろに分類されるが、地図のように境界がはっきりしているものではない」ということで、「虹は七色といわれるが実際には不連続な七色ではない」、と表題につながるのである。
精神科領域の分類だけでなく、言葉で認識しているものは実際はそんなに境界が明確ではないものがほとんどだろう。著者は、「ヒトは量を「質」に換えることによって、連続体を何個かに分類してしまうようになっているのだ。これは養老孟司氏の言葉を借りれば「脳の都合」があってのことではないか。p18」と書いているが、確かにその通りなのだと思う。人間の脳は、多分、言葉で定義して、切り取って取り込まなければ、それを捕まえ、理解し、先へ進むことはできないようになっているということではないだろうか。認識論の具体例、を示されたような話であった。
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