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新規購入ではなく、積読状態のもの。
2008/8/9~8/10
久しぶりに読んだ志水作品である。昔のハードボイルド路線も良いが、最近のなんというか、人生の重みのようなものを感じさせる作品も、なかなか他の作家にはない良い味をもっている。今回は、さまざまな「別れ」がテーマになっている10作の短編集。家族、友人、恋人、近所の人などそれぞれの付き合いの中で、言えること、言えないこと、後になって気づいたこと。読後感が本当に素晴らしい。私も最近男の子の親になったが、「男親」という作品などを読むと、女の子の親というものに憧れてしまうし、また自分には勤まらないだろうなぁ、とも思う。
柴田錬三郎賞受賞作品。
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少年期から壮年期までを10のアングルから描き分けた短編集。
旅立ち
短夜(みじかよ)
イーッ!
家族
かげろう
息子
高い高い
夜汽車
男親
里の秋
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短編集
『旅立ち』
『短夜』
『イーッ!』
『家族』
『かげろう』
『息子』
『高い高い』
『夜汽車』
『男親』
『里の秋』
「家族は重かった。でも支えだった」
心に沁みる作品集だった。
「行きずりの街」とずいぶん内容が違いますね
ただところどころ
少し消化不良的な文章もあったけど・・・
わたしだけかな?
まあ、
人はその人数分だけかけがえのない人生を生きてるんだね。
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しばらく積読状態だったけど、読んでよかった。壮年男性に読んで欲しいと作家はあとがきに書いておられたけど、アラフォー女子の私でも切なくてじーんとしました。
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『行きずりの街』で有名な志水辰夫の短編集です。
ハードボイルドとはかなり趣の違った、郷愁溢れる作品集です。
作者は壮年の男性に読んでほしいとあとがきで書いてありました。
多分私っくらいの年齢から読んで欲しいということだとは思いますが、
それでもまだ早いかな?です。
でも、同時にもう十年早くこの作品を描いてみたかったとも書いてあった
ので、少し早いくらいに読んでよかったのかもしれません。
なんか心が騒ぐような、それでいてしっとりと落ち着くような感覚の、
読後感の良い作品でした。
みんなそれぞれ非常にいい作品でした。
なんか最初の作品は、ルフィーたちがそれぞれ旅立っていくようなかんじがしてしまった、というのはダメでしょうか??
通勤時間に読んでいたのですが、もう少し落ち着いて読みたい作品でした。
今度海外に行くときにはもって行こうかな??
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「行きずりの街」に続き読むのは2作目。ハードボイルドの作者のイメージが一掃された。重松清のようだ。結末が快い短編集。13.2.12
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最近では私のイメージする「文学」にもっとも近いものを読んだような気がする。
読みながらぼろぼろと涙がこぼれるような「感激」は、時として薄っぺらい。この本にそんなカタルシスはない。収められているのはどれもみな、作者がこれまで生きてきた道程とその魂に触れた感動が、読み終えた後じわじわと心に深く染みいっていくような、そんな作品ばかりである。
作者は「あとがき」でこう述べている。「自分の歩いてきた道をさまざまな主人公に仮託し、市井の人間の戦後史を書いてみよう、と」
時代だとかしがらみだとか自分自身だとかいろんなものにどうしようもなく翻弄されながら、それでも人は生きていく。その歩みを見つめる眼差しの優しさが、私は好きだ。
“見上げた空は果てしなく高かった。都会での華やかな暮らし、想い続けている人の横顔が、ふわり浮かんだ。だが、この地にしがみつき、一日一日をひたすらに積み重ねなければ、生きてゆけなかった。わたしの帰りを家族が待っていた。親やきょうだいは、ときには疎ましくときには重く、ただ間違いなく、私をささえていた。”
ところで、この本には「薄幸の美少女」がたくさん出てくる。
『短夜』で、想う人がありながら他家へ嫁いでいく智美。『イーッ!』の加奈子。『里の秋』の暁子。少女ではないが、芙美子という女性が登場する『かげろう』も哀しい物語だ。
なぜかいつも不幸になる方の道を選んでしまう、そんな女たち。主人公は、彼女らを幸福にしてやれない自分の力なさを責める。そして最後には女たちのしたたかさに打ちのめされるのだ。
どの作品も、物語には直接関係のない時代背景や、脇役として出てくる登場人物の生い立ちまで丁寧に描かれている。そのぶん情景描写は簡潔だ。そういう作風が小説に深みを与えている。
ストーリーの進行上必要な事柄だけをプロットし読者をある方向へ導こうとする作品から受ける印象を「明るい晴天」と例えるなら、志水辰夫の文章は「暗い曇天」である。
それは、意図的な作為を排除し、なるべく魂から出てきたものだけで勝負しようとする姿勢の表れだと思う。そういう意味で「文学的」だと、私は直感したのかも知れない。
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昭和11年生まれの著者【志水辰夫】が、自らの人生の断片をしみじみ語り紡いだ10編の短編小説です。著者が物心ついた頃に〝鬼畜米英〟から〝民主主義〟へと、天と地ほども価値観の違う世界がたった一日で入れ替わってしまいました。戦前、戦中、戦後の混沌とした時代を生きた家族との絆、日々の暮らしの中で巡り合った人々との触れあった記憶が、哀愁ただよう物語として語られていきます。著者が職業作家としての総決算の思いで綴ったというだけあって、しんみり心に染みて濃厚な味わいを醸し出す作品集でした。
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今回手に取った一冊「きのうの空」は、10篇の短編が綴られ、読む者を優しい世界へ誘ってくれる。
何となくこれまでの人生に身近に感じられる社会背景が功を奏し、読む者に懐かしい世界を思い浮かばせてくれるのだ。
特におすすめは、現代を舞台背景にした「父親」と題された一作。
娘さんをお持ちのお父さんは、このストーリーにきっと大きく頷かれるだろう。